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第5話 ペンネイト家

説明回です。ほとんどが説明に費やされているはずです。

前世では世界最強の暗殺者とまで言われたトオル=グリーパーが転生してから約半月の時が過ぎた。

彼に自我が芽生え、記憶を取り戻したのは大体生後二ヶ月の時。それから約四ヶ月経った。

彼はこの4か月の間、暗殺者として今まで培ってきた言語解析技術と言語習得技術をめいいっぱい駆使してこの新しい世界の言語を覚えていった。

結果、彼はこの世界で使われるいくつあるか分からないうちの一つの言語を完全に習得した。

今では、大人と同等に言語を理解することができている。


更に、まだ発音は練習中だが、すらすらとまではいかないまでもほとんどつっかえることのなく話せるようにはなっていた。

だが、彼は決して人前では話そうとはしなかった。

例えば、生まれてから半年程度の赤子がぺらぺらと確かな理解をもって自分たちの話す言語で話していたとしたら、

ある人は、「この子は天才だ!」と褒めたたえてくれるかもしれない。

だが、また別のある人は「たかが、生まれてから半年の赤子がぺらぺらとしゃべっているなんて不気味だ。何かに憑かれているんじゃないか?」と気味が悪いと考えるかもしれない。

そして、大部分の人が後者に当てはまるのは当然のことだろう。


人は自身の知らない未知のものに恐怖を覚える。自分たちとは違う異質なものを排除しようとする。

それは人が備えた自身を守るための利己的な防衛本能なのかもしれない。だが、彼としてはそんな理由で消されるのは御免だった。

彼は四ヶ月の間で言語を覚えるだけではなく、自分の新しい家族のことをこっそりと観察していた。

家族構成はどうなっているのか。生活習慣は?交友関係は?性格は考え方はどうなのか?など様々なことについて調べていた。


そして、自分の家族は彼が仮にぺらぺらとしゃべっていたとしても問題ないだろうと思わせてくれるほど良いものだった。

実際彼もびっくりしていた。

密偵や裏切り、復讐など負の要素が絶えない裏の世界で生きていた彼は人間の裏側にある暗い感情をいやというほど知っていた。

一皮捲れば裏側には様々な負の感情が潜んでいた。

憤怒、悲哀、嘲笑、嫉妬、憐れみ、拒絶、憎悪など一人であったとしても複数の感情が絡み合い渦巻いている。

そのどれもが、心の底からそう思っているのだと感じられて胸糞悪いものであった。

それでも中には幾分かましな者もいた。


けれど、人間ではただ一人を除いて彼は信用することはできなかった。

人は誰であろうとも心の中に闇を抱え込んでいる。そして、中にはその深淵に呑み込まれて闇に身を犯す思考的に危険なやつもいる。

一度焼き付いた記憶は彼を中々逃すことはしなかった。

それは自分も同じで他人もそうなのだろうと半ば決めつけていた。

だからかあ、他人との会話は実利をおもに置いた事務的で機械的なものになっていた。


だからか、両親のそれを知ったとき愕然とした。

彼らにはあまり負の感情というものが感じられなかった。感じられる負の感情も、貴族が抱え込んでいるような吐き気をもたらすようなものではなく、なんというか冗談が混じっているかのように柔らかかった。心の底からそう思っていないことがありありとわかってしまった。

故に信用できる。彼はわれながらちょろいかなとも思うが、自分の観察が正しいということを彼は疑うことができなかった。

そのため、新しい家族ということもあるが、彼は両親を信用しようと思ったのだった。


俺の家族は、俺と両親の3人だけだった。普通は祖父祖母と一緒に暮らして、生まれた赤ん坊の面倒はその祖父祖母が面倒を見るそうなのだが、俺の家は事情があって一緒に暮らせないため母さんが俺の面倒を見てくれる。

母さんの名前はミント=ペンネイト最初に俺のことを抱えたあの黒髪赤目の美女である。

母さんはすぐにでも折れてしまいそうな細いどこぞの貴族や皇族の娘のような見た目とは裏腹に意外に根気がある。俺の面倒を見ながらも家の家事全般、管理をすべて自分一人で行っているのだ。当然ながら来る日も来る日も毎日である。

家事を行っているときに魔力を漂わせているのを感じ取れるから、持久力や筋力などの身体能力を向上させる魔法を併用しているのは確定だろう。それを踏まえて考えると中々に根性があると言わざるを得ない。

それは自身の行う大量の家事の効率を上げるためかもしれない。


しかし母さんはわざわざ、家事をするためだけに魔法を使っているのだ。この世界ではどうなのかは知らないが、確かに魔法は日常生活にも便利な道具として利用される。だが、基本は戦闘用に調整されているもんがほとんどで、日常生活に使用するとなるとかなり熟練した腕が必要になるのだ。そして、それ程に魔法に熟達している詠唱者だったら普通はいいところに雇われる。それこそ熟練の詠唱者なら雑兵を何千と相手しても生還するのだ。自分の派閥に取り組みたくもなるだろう。それ故に詠唱者の地位は自然高くなっていく。

だから、その時点で最初の考えは絶対に違う。

そして、俺は知っている。時々家事が終わると息を切らして、ぜぃぜぃと喘いでいるいる母さんの姿を。


自身のふがいない姿を息子に見せないようにするためか、俺の前では何ともないようにしているが、俺にはちょっとした行動の端々でそれを認識することができた。

そう、母さんは魔法を自身にかけなければ家事も碌にできないぐらいに体力がないのだ。

それを毎日続けているのにどうして根性がないといえるだろうか。

決して魔力切れではない。どうやら母さんは魔力をかなりの量持っているらしい。それは、自身に『強化系統』の魔法を半日以上かけ続けていても魔力切れを起こしていないことからよくわかる。

普通のの詠唱者だったらまず2時間持てばいいほうだ。

つまり簡単に言えば、一般詠唱者の三倍以上の魔力を母さんは使用できるということだ。

まあ、それだけで母さんがすごいということが分かっただろう。


父さんはディル=ペンネイトと言って、あのときに扉の近くで俺と母さんを愛おしい目で見てた銀髪碧眼のイケメンだ。

父さんはこのペンネイト家のまさに大黒柱である。はっきり言って、体力のない母さんにも、赤ん坊でしかない俺にも生活するために必要な物資を手に入れる方法はほとんどないに等しい。

父さんは十分たちが生活するうえで必要な物資を手に入れるためだけのお金を稼ぐか、自分たちで食べるか、物々交換をするための獲物をとってくることを毎日しているのだ。

父さんの仕事は多岐にわたる。ある日は木を伐採し、またある日は近くの森林で獲物を捕らえる。はたまた、ある日は遠目の場所に流れている小川で魚を釣ってきたりする。時には他の人とも協力して魔物を駆除する事もあるそうだ。

魔物を駆除するのはかなり骨がいるみたいなのだがかなり実入りが良いそうだ。

俺としては前世でも物はさして強かったイメージはないのだが、この世界では魔物は強いのだろうか。


確かに魔物は一般人とは比べ物にならない程に強い。だが、父さんからも魔力を感じたのだが、父さんは魔法を使っていないのだろうか。

魔法を使えば割と簡単に魔物を狩ることができるはずなのだが。一体どういうことなのだろう?魔法が無駄に危機づらい魔物でもいたのだろうか。これは大きくなったら検証する必要がありそうだ。


さて、そんな父さんは割と朝早くに出かける。そして夕方には帰ってくる。そして、母さんと一緒にある程度言葉を教えてくれる。

例えば、「これがごはんですよー」とか、「これはくさっていうんだよー」など俺が言葉を覚えやすかった要因の一つでもある。まあ、これはうれしい誤算であった。


そして、俺はナツト=ペンネイトという名前らしい。何でも、俺が夏の夜に生まれたからだという。さらに言うならば、俺の髪が母親譲りの夜空のような漆黒であったことも関係している。

ここまでのことで、俺の名前には『夜』が関係していることがよく分かっただろう。なぜナツトで夜なのかというと、なんでも俺の現在住んでいる国を作った人物の一人の故郷の言葉で、『夜』のことをナット(natt)というらしく、それと『夏』を合わせたからなのだそうだ。

さて、自分の名前もわかったことだし次は何をしようか。

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