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異世界人生譚〜二度目の人生、今度はちゃんと生きてみる〜  作者: 田中黒曜石
第一章 魔法習得編

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第一話 転生、そして

 暗い。

 何も、見えない。

 ここは……どこだ?

 俺は……あぁそうだ、死んだんだったな。

 とすると、ここは天国か地獄か?

 まあどっちにも行けると思わないけどな、俺は。

 にしてもまさか死んじゃうとはな。

 まあ道路であんなボーッと星眺めてたらそりゃ危ないか。


 死んだってことは生まれ変われるのかな。

 生まれ変わったとしたら、今度こそちゃんと生きたいなぁ……


「──、──」

 

 え、なに?なんだって?

 なんか会話が聞こえる。

 え、待ってじゃあここどこ?


「──」


 目の前に光が現れた。

 急に現れたってわけじゃない。

 徐々に、その光は明るくなっていったのだ。

 すると、その光に吸い込まれるように俺は体が勝手に動いた。

 えなに?!なんなの?!

 うわあああああああ!!

 

 そうして、俺は……生まれた。




「──、──!」

「──、──……」


 なんだよ……うるさいな。

 俺は、どうなった?

 視界が明るすぎてよく見えない。

 声を出そうとしても、思うように出ない。


 あーだこーだ考えていると、体が宙に浮く感覚がした。

 飛んだのかと思ったが、違った。

 誰かに抱きかかえられたのだ。

 身体を動かそうとしたが、思い通りに動かない。

 え、なにほんとになに?

 お、なんかちょっとだけ見えるようになった……まだぼやけるけど。

 とりあえず輪郭はなんとか……ん?

 誰、この女の人?

 

 「────」


 知らない女性が多分俺に向けて何か言っている。

 でも何を言っているのかさっぱりわからない。

 日本語じゃないのだ。

 それに加えて俺は声を出せないのだからどうしようもない。

 ようやく鮮明に見えるようになった目で周りを見渡してみると、全く知らない風景が広がっていた。

 そして……俺の手足は、あまりにも小さかった。


 どうやら俺は、赤ん坊になっていた。


 ──つまるところ、俺は転生したらしい。





 あれから一ヶ月くらいたっただろうか。

 だんだんと状況が掴めてきた。

 まず、俺は赤ん坊に転生した。

 前世ではアラフォーのおっさんが、0歳の赤ちゃんになっているのだ。

 意味がわからないだろう。

 俺もわからない。

 生まれた直後は声も思うように出せなかったが、いまでは「あー、うー」などクーイングができるようになった。

 喜ばしいことだ。

 などと、子供が生まれたパパみたいな感想を言っている場合ではない。

 

 今世の俺の父親は、光沢のある綺麗な銅色の髪、獅子を彷彿とさせる金色の瞳をした明るい人だ。

 そして母親は、夜空のような艶のある紺色の髪、静かでキリッとしている銀青色の瞳をした、穏やかで優しい人。

 

 二人は太陽と月、とまではいかないけど対照的なタイプの二人だから最初は心配してたんだ。

 前世では性格の不一致が原因で離婚したなんて話も珍しくなかったからね。

 でも二人はよく俺に話しかけては二人で顔を見合わせて笑っていたり、相性が良く、とてもいい夫婦だと思う。

 二人が何言ってるか聞き取れないからちょっとよくわからないけど。


 とにかく、転生してすぐ死ぬ、なんてことはなさそうなので一安心だな。


 でも……、赤ん坊の身体っていうのは、思っていたよりもずっと不便だ。

 思っていることをしたくても体はついてこないし、すぐ眠くなるし。

 極め付けは親にものすごい可愛がられる。

 中身はアラフォーだってのに、あんなことやこんなことされたら恥ずかしくてしょうがないだろ!

 





「アルド、誕生日おめでとう!」

「おめでとう!」

「あーうー」


 生まれ変わってから一年を迎えた。

 この一年、両親の話を聞き続けてきたおかげか少しずつ言葉が分かるようになってきた。

 

 今日は俺の一歳の誕生日だ。

 テーブルには普段とは違う、豪華な食事が並べられている。まあ全部離乳食なんだけどね。

 

「もう一年にもなるのね……」 

「早いものだな、時間の流れも成長も」

「アルド、一歳の感想はどうだ?」


 いや、こっちに話振ってきてもまだ喋れねえよ!


「うあー!あーあー!」

「ハッハッハ!そうか、うれしいか!」

「うー……」 

 

 くそ、喋れないのが本当にイライラする。

 頭では分かってるのに言えないのがこんなにむしゃくしゃするとは……。


「ほら、早く食べましょう!」

「そうだな、はいアルド、あーん」

「うぐー」

 

 されるがままに、離乳食を食わされる。

 まだ食べられるものが限られているらしいが、口に運ばれた離乳食は思いの外悪くなかった。

 むしろ美味い。落ち着く味だ。

 

 前世では両親が忙しく、家族の時間というものもあまり取れていなかったが、そういえばこういう感覚だったな。

 独り立ちしてからだいぶ経ってたからか、忘れていたよ。


 なんか……いいな。

 家族って。





 五年の月日が流れた。

 俺は六歳になり、ここでの暮らしにもすっかり慣れた。

 自由に動き回ることもできるようになったし、両親との会話なんておちゃのこさいさいさ。

 そしてこの五年で新たにわかったことがたくさんある。

 ここは地球じゃない。

 家の中の様子や知らない言語から、最初はどこか海外の、知らない地域かなんかだと思っていた。

 ただ、四歳くらいのときに夜空を眺めて違和感を持った。

 星空がなんか違ったんだ。

 いや、他国だからそりゃそうだろうって感じなんだけど……なんか、とにかく何か違和感を持ったんだ、俺は。

 そのあと、俺は見てしまったのだ。

 父親がなんてことない顔で、手から火を出したのを!!

 地球の人間じゃあり得ない。

 そして気づいてしまったんだ。


 俺は異世界に転生したんだ。

 剣と魔法のファンタジー世界に。


 もちろん、そういうお話が好きじゃないわけではない。

 前世でも学生の頃、ドラ◯エとかモ◯ハンとかやってたしね。

 でも、自分がその世界に入るのは話が違うじゃないか!!

 魔物やら何やら危険なものだっていっぱいあるだろう。

 そしたら、死ぬ可能性だって上がるはずだ。

 せっかくの第二の人生、全力で生きると死ぬ時に決めていたのに、すぐ死ぬ、なんてたまったもんじゃないよ。


 ──でも、気のせいだろうか。

 無性にワクワクしている、自分がいる。

 

 やってやろうじゃねえか、異世界人生。上等だよ。


「アルド、何してるの。早くいらっしゃい」

「あ、はーい!」


 さて。

 紹介が遅れたな。

 俺のこっちでの本名は、アルディオス=エストリア。家族からはアルド、と呼ばれている。

 いい響きだろう。俺も気に入っている。

 一見すると茶色だが、よくみると少し赤みがかっている栗色の髪に、母親譲りの銀青色の瞳が特徴な、前世に比べたらだいぶイケメンボーイだ。

 そして父親の名前がカイル=エストリア、母親の名前がセレーネ=エストリアだ。

 住んでいる場所はオスティン村という場所で、近くの大きめの街からは馬車で丸一日ほどかかる距離に位置している、まあ言ってしまえば田舎だ。

 家と家の感覚は畑を挟んでいるためだいぶ遠い。

 

 この世界での食事はだいぶ質素だ。

 もう慣れたもんではあるが、塩で味付けしただけの肉とパサパサのパンだけは流石にどうかと思う。

 食に厳しい元日本人からすると、やはり不満は溜まるばかりだ。

 

「アルド、どうしたの?変な顔して。ご飯、美味しくなかった?」

「い、いえ、とっても美味しいよ、母さん!」

「そう?ならいいけど……」


 まあ、味はともかく、家族で食事をする時間は悪くない。

 両親の会話から新しい情報を知ることができるし、俺ももう喋ることができるから質問することもできる。

 そして何より、居心地が良い。


 父さん──カイル=エストリアは、よく喋る人だ。

 食事中も、よく俺や母さんに向けて常に何かを話しかけている。

 俺たちはそんな父さんに笑って相槌を打ったり、話を広げたり。

 エストリア家は、今日も平和で仲睦まじい。

 

 そんな穏やかな食事の時間にも、俺はずっと気になってたことがあった。

 四歳の時に目撃した、父さんが手から火を出したことだ。

 魔法だろうか。魔法だろうな。

 初めて見た時は本当にびっくりした。

 手から火を出すなんて、想像や妄想でしかあり得なかったことだ。

 いつ聞こうか迷っていたが、言語もある程度理解できたし、二年経った今なら聞いてもいいかもしれない。


「ねえ、父さん」

「ん?なんだ、アルド」

「父さんが使ってた魔法って、俺にも使えるの?」

「え?ああ、魔法か!もちろんだぞ〜、使いたいのか?」

「うん!とても」

「あらあらアルドったら、そんなに目を輝かせちゃって….…今度、魔法を教える先生でもつけてあげましょうか?」

「まだ早いと思うが……いいじゃないか、それなら俺の知り合いから探そうか?」


 なんか話がすっごい発展してってる。

 まあ、とにかく俺に魔法の先生をつけてもらえるそうだ、やったね。

 そう思ったらなんだか楽しみになってきた。

 先生が来るのはいつだろう。

 そんなことを考えるだけで、自然と頬が緩んでしまう。

 

 ようやく、俺の第二の人生が動き始める感じがした。


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