第2話 今の毎日2
よし昼休みだ。
いつもならすぐ円と拓実と三人でお昼を食べ始めるけど、今日は帰りにお茶に行くから、帰りも一緒にいてくれる大樹に一言謝りに行かないといけない。
「私ちょっと大樹のところに行ってくるね」
「はーい」
「いってらー」
*
大樹は…いた、フーバーと三人でお弁当広げてる。
あ、誠一君と目が合った。
坂竹誠一君。高校に入ってから出来た大樹とフーバーの友達で、眉目秀麗って感じだけど爽やかな好青年だ。
私とはお互い『君』や『さん』づけで呼び合う仲だけど、もしたくさん話すようになったらいい友達になれると思うし、多分向こうも同じように思ってくれてる。大樹とフーバーの友達だしね。
私に笑顔でアイコンタクトして、大樹に私が来たことを知らせてくれてる。
大樹は『あいつはたまに意地が悪くなる』って言ってたけど、私はそれを見たことがない。
『たまに、な』って言ってたから、本当にたまになのかな?
「フーバー、お菓子ありがとう。おいしくいただいたよ」
「楽しんでもらえて何よりだよ」
そんなやり取りをしながら大樹たちのところに近づく。
「こさよ、蜂を逃がしたらしいな」
大樹も知ってるんだ。
「え、うん」
「心配したんだぞ」
「ごめん…」
大樹が怒ってるわけじゃないことも、私を気にかけてくれてることもわかってるんだけど、心配させたと思うとしゅんとしてうつむいてしまう。
「大樹は本当に心配していたよ。第一声は『こさよは無事だったんだよな?』だったくらいだしね」
「思うことは俺たちも同じだったけどな」
「ハハハまあね」
フーバーも誠一君も、私を気遣って明るく言ってくれたんだろうな。
「そう、なんだ」
でも大樹は真剣なまま私を見てる。
「こさよも安全な場所にいてくれた方が俺はうれしいってことだけは、覚えておいてくれよ?」
大樹の気持ちを、しっかり受け止めなきゃ。
「わかった。心配かけてごめん…」
「それで、どうしたんだ?」
「えっとね、今日は円と拓実とお茶に行きたいの。せっかく大樹が」
「わかった」
大樹が笑顔で返してくれた。
そうしてくれるって思ってたけど、実際にしてもらえるとやっぱり安心するし、うれしい。
「わがまま言ってごめん」
「そんなことないさ。楽しんできな」
「うん、ありがとう」
話を聞いていた誠一君もほほえみながら頷いてくれた。『円と拓実と』っていうことの意味がわかってるみたい。
その笑顔は誠一君の本心に見える。誠一君も人を思いやれる人なんだろうな。
気がかりなことが終わったら、他のことにも目が行くようになった。
のり弁…
静さんが作るのり弁は白いご飯が入っているように見えるけど、実はご飯の中にのりが敷かれている。
大樹のお弁当はいつもこののり弁で、私も中学の時に食べてから好きな味だ。
「一口いるか?」
「うん…!」
「口開けな」
大樹が食べさせてくれるの…!? みんなの前だからちょっと恥ずかしいけど、うれしい。
あーん…
ご飯に挟まれてしっとりしたのりと、だしの風味…
「おいしい」
「ハハハ仲いいね」
フーバーに笑われちゃった。
「は~、俺まだ食べ始めてもないんだけどな」
誠一君、急にどうしたの?
大樹も嫌そうにしてる。
「なんだよ」
「ごちそうさまって言ったんだよ」
「そんなことわかってるよ」
「だったら聞くなよ」
「わざわざ言わなくていいって言ってんだよ」
「わざわざ言われるようなことするからだろ」
うぅ、顔を伏せて、手で髪を梳かしてごまかすしかできないよ。
誠一君が『意地悪になる』ってこういうことだったんだ。
フーバーに大笑いされてる。
その時、クラスの女子が大樹に話しかけた。
「宮守くんモテるのになー」
「おー光栄だ」
あの子大樹をずっと見てたけどなに?
「なのに阿羽さんとばっっっかりいるから、悲しんでる子がいるんだよー?」
「そりゃ悪いことしてるな」
私とばっかりなのはちょっとうれしい。
「好きな人もいないの?」
「今は誰かと付き合いたいとは思ってないなあ」
そうなんだ…
「へーえ?」
誠一君?
「今度はなんだよ」
「お前の正直なところ、俺は好きだよ?」
嘘ってこと?
「なになにぃ? 坂竹くん何か知ってるの?」
「俺は何も聞いたことないな」
どういうこと…
「……」
大樹?
「ってか宮守くんフリーなんだ。教えてあげよ」
「誰にだよ」
「気になるぅ?」
気になる!
「いやいい」
気になる…
「そぉ?」
「こさよ、早く戻らないと昼休みがなくなるぞ」
「あ、うん。誠一君さっきはありがとう」
「なんのこと?」
「大樹を呼んでくれて」
「ああ、それより最後に話す相手は俺でいいのかい?」
うぅ、私にも意地悪だ。共犯だからだよね。
フーバーも笑いすぎだよう。
「引っかかる物言いだな」
「言葉どおりの意味だよ」
言葉どおりだけど言葉どおりじゃないよね。
フーバーもそんなに笑わないでよお…
「こさよ、こいつは無視していいから早く戻れ」
「う、うん、またね」
『今は誰かと付き合いたいとは思ってないなあ』
『お前の正直なところ、俺は好きだよ?』
大樹は好きな人がいるのか、わからないや。
私じゃ釣り合わないのはわかってるけど、やっぱり私は女に見えないのかな。
窓ガラスに映る私はやっぱり大樹の好みじゃない。
ライバルは多いし、いつか大樹に好きな人ができたら、その人と付き合っちゃうのかな…




