81.フロストドラゴンの能力
「まずはティナから見てみて」
「はい」
ティナは緊張しながらステータス画面を開く。きっと、氷魔法が表示されているはずだ。
そう思って待っていると、ティナが目を見開く。
「えっと……極氷魔法っていうのが表示されてます」
「氷魔法じゃないぞ?」
「氷魔法に極が付いている?」
てっきり、氷魔法を授かっていると思ったら、違う名称の魔法になっていた。
「極ってついているから、もしかして……普通の氷魔法よりも強いんじゃない?」
「……あっ! 説明を読んだら、通常の氷魔法よりも強力な力があるって書いてます!」
「ほほう! 通常の氷魔法よりも強いものか! それは良かったのじゃ!」
私たちはてっきり、通常の氷魔法を授かると思っていた。だから、これはいい結果だ。
「通常よりも強い氷魔法……。一体、どんなことが出来るんでしょう」
「きっと、想像よりも強い魔法が使えるんだよ。ドラゴンが使う魔法なんだから、それくらい強いのかもね」
「ドラゴンは本当に強い種族だから、期待は出来るのじゃ!」
ティナの能力は期待出来そうだ。もしかしたら、ドラゴンをも倒せるんじゃないだろうか?
「次はわらわじゃな! わらわは……竜闘気じゃ!」
「強そうなスキルですね! どんなことが出来るんですか?」
「これはスキルをまとえば竜の力が発揮出来るものじゃな」
「えっ? それじゃあ、サリサは竜と同等の力を持つことになるってこと?」
「そういうことじゃ! この力があればドラゴンを倒して、さらに強くなることも可能じゃ!」
竜の力、一体どれだけ強いものなんだろう。サリサが今まで以上に強くなると、本当に心強くなる。
「それで、メルはどんな能力を手に入れたんじゃ?」
「私は……竜域感知?」
「それってどんな能力ですか?」
その説明を見ると、二人に伝える。
「広範囲の状況を完璧に把握する能力らしいよ」
「私の探知魔法みたいなものですか?」
「なんじゃか、しょっぱいスキルじゃのう。一回、使ってみたらどうじゃ?」
探知魔法の強化版だろうか? どれだけ有能かは、確かに使ってみないと分からない。
私は意識を集中して、スキルを発動させた。すると、自分の意識が一瞬で広がった。その範囲は何十キロ、いやもしかしたら何百キロにも及ぶ。
まるで、世界が自分の一部になったかのようだ。だけど、それだけじゃない。その範囲に収まっている物の全てが頭の中に入ってくる。
頭の中へ流れ込んできた情報量に、思わず息を呑む。
「な、なにこれ……」
見えているわけじゃない。それなのに、周囲の世界が手に取るように分かる。
山や森、川、街道の位置はもちろん、高低差や崖の場所まで立体的に把握できる。さらに、それだけでは終わらなかった。
気温、湿度、風向き、雲の流れ、天候の変化。森に生えている植物の種類や鉱石が眠る場所。魔物や動物、人がどこにいて、どちらへ向かっているのか。
果ては、水場の位置や危険地帯まで、一瞬で頭の中へ流れ込んでくる。しかも、それぞれの情報が混ざり合うことはない。
知りたいものへ意識を向ければ、その情報だけが自然と整理されて浮かび上がってくる。まるで、この世界そのものが巨大な地図になり、必要な情報をいつでも取り出せるようになったみたいだった。
「……すごい」
思わず声が漏れる。
「どうしたんじゃ?」
「何が見えたんですか?」
二人が心配そうに私を見る。私は興奮を抑えながら、今感じたことを説明した。
「この能力、ただ周囲を探知するだけじゃないよ。地形や川、森だけじゃなくて、気温や天気、風向きまで全部分かるの」
「天気までですか?」
ティナが驚いたように目を丸くする。
「うん。それだけじゃない。魔物や人の居場所、鉱石や薬草がある場所まで分かる。しかも、その情報が全部正確なの」
「ほう……」
「必要な情報だけを選んで見られるから、頭が混乱することもないよ。本当に世界中の情報を自由に調べられるみたい」
「な、なんじゃその能力は!?」
サリサが勢いよく立ち上がる。
「とんでもない能力ではないか!」
「私の探知魔法とは比べ物になりません……」
ティナも感心したように何度も頷く。
「これがドラゴンの能力なんですね……」
「うん。これは予想以上だよ」
ここまで話して、私はあることに気付いた。
「あっ!」
「どうしたのじゃ?」
「この能力があれば、旅がすごく安全になるよ!」
「安全?」
「危険な魔物がいる場所を避けられるし、崖崩れや通れない道も事前に分かる。天気も分かるから、大雨になる前に町へ避難することも出来る」
「「ああっ!」」
二人も同時に気付いたようだ。
「つまり、常に一番安全で、一番早い道を選べるってことじゃな!」
「そう! それに目的地まで迷わず進めるから、遠回りもしなくて済むよ」
私の頭の中には、目的地まで伸びる道筋が自然と浮かび上がっていた。
どの道を進めば最短なのか。どこで休憩すればいいのか。危険を避けるならどのルートが最適なのか。そのすべてが、一目で分かる。
「なんだか……カーナビみたい」
「かーなび?」
「前にいた世界の道案内をしてくれる便利な道具だよ」
「なるほどのう!」
サリサが大きく頷く。
「なら、この能力はその何倍も便利じゃな!」
「そうですね。これなら迷子になることもありませんし、危険な場所へ近付くこともありません」
「うん。それに、私たちのキャンピングカーとも相性抜群だよ」
キャンピングカーで旅をする私たちにとって、一番重要なのは安全で効率良く目的地へ辿り着くこと。竜域感知は、その両方を最高水準で実現してくれる能力だった。
この力があれば、これからの旅は今まで以上に快適で、安全なものになる。フロストドラゴンから授かった能力は、想像していた以上に私たちの冒険を支えてくれる力だった。




