18.特殊個体の出現
「昨日は休んだから、いっぱい頑張れたね」
森から町へと帰ってきた私たち。昨日はしっかりと楽しんだお陰で、今日はやる気十分だった。素材採取も魔物討伐もいつも以上に成果が出ていた。
「ほら! わらわの言った通りじゃろう! やっぱり、休んで正解だったのじゃ」
「そんなこと言ってなかったじゃないですか。この結果はたまたまですよ」
「そ、そんなことないわ! ちゃんと、このことまで考えていたのじゃ!」
「……本当かなぁ」
疑わしいサリサを私たちはジト目で見つめる。すると、サリサは視線を逸らして逃げた。この様子だと、何も考えていなかったようだ。
「でも、これで昨日休んだ分は取り返せましたね」
「そうだねぇ。休むのはいいけど、収入がなくなるのが痛いね」
「大丈夫じゃ! 困った時はメルのネットショッピングの商品を売ればいいのじゃろう?」
「その手があるけどね。でも、騒ぎになるから頻繁には売れないのがね……」
「貴重品を持っているって気づかれると、また狙われる可能性がありますものね」
本当ならたくさん売ってお金儲けがしたいのだが、そのせいで狙われるのはごめんだ。だから、それらを売るのは町を離れる時って決めてある。
「日常に困らない程度にはお金を稼がなきゃね。もっと、欲しいものもあるし」
「ネットショッピングでは、見たことのないようなものがたくさんありました。色々な物が欲しくなっちゃいますね」
「なんでも欲しいのじゃ! 金をもっと稼がねば!」
何でも手に入るスキルがあるんだから、生活が豊かになるように利用しなくちゃ損だ。その為にも、お金を貯める必要がある。
そんなことを話している間に、冒険者ギルドへとたどり着いた。カウンターに行き、お姉さんと向かい合う。
「おかえりなさい。無事に帰ってきてくれて嬉しいです。今日はどうでしたか?」
「今日はバッチリだったよ!」
「これを見るのじゃ!」
そう言って、サリサはアイテムボックスから薬草を取り出した。カウンターの上に山のような薬草が積まれた。
「凄いですね。過去一じゃないですか」
「はい、頑張りましたから」
「じゃあ、今から数えるわね」
そう言って、お姉さんは薬草を数え始めた。全ての薬草を数え終えると、お姉さんはニッコリと笑う。
「全部で102あったから、合計で10200コルトです。薬草だけで一万コルトを超えるなんて凄いですね」
「ふっふっふっ。薬草採取にはだいぶ慣れてきたからのう!」
「それに、私たちにはメルがいますから」
「頼もしい仲間がいてくれて良かったですね。あっ、それと今回で冒険者のランクが上がりましたよEランクですね」
「わっ、本当!? やったぁ、とうとうランクが上がった!」
冒険者証を貰うと、ランクがEに変わっていた。
「最初は上がるのは早いけれど、上がるごとに時間がかかりますからね」
「そうなんだね。じゃあ、この先は上がりにくくなるのかぁ……」
「大丈夫じゃ! その頃にはわらわたちも強くなっているから、ばんばん活躍するのじゃ!」
「つ、強い魔物と戦うって事ですか? ……ちょっと怖いです」
張り切るサリサに怖がるティナ。反応は様々だ。まぁ、上がるのに悪いことはないと思うから大丈夫だけど……。だよね?
「三人の活躍を期待していますよ。だけど、無理は――」
バァンッ!
そう言いかけた時、出入口の扉が乱暴に開いた。
「緊急事態だ!」
その声に驚いて振り向くと、傷だらけの冒険者たちがいた。その冒険者たちは私の隣のカウンターに駆けこんだ。
「森でニギルベアーの特殊個体と遭遇した!」
「えっ、そうなんですか!?」
「背丈は三メートルで狂暴さが増している。スキルも魔法も使う、とんでもない奴だった!」
その冒険者たちの声に冒険者ギルド内は騒然となった。だけど、私たちは良く分からなかった。
「お姉さん、ニギルベアーってどんな魔物なの?」
「背丈は二メートルに届かない熊の魔物よ。強靭な爪と牙を持っていて、中ランク程度の魔物なの。本来なら、スキルも魔法も使えないはずなんだけど……どうやら現れた個体は特殊みたい」
「ほう、そんな個体が現れるのか。面白いのう」
「面白がっている場合じゃありませんよ。そんな強い魔物が現れたら、森で活動出来なくなるんですよ」
ティナのいう通りだ。そんな、強そうな魔物が現れたら、私たちの活動にも制限がかかる。そうなると、お金が稼げなくなってしまう。
「お姉さん。これからどうなるの?」
「そうですねぇ……。特殊個体が討伐されるまで、しばらくは規制されると思います。この町に高ランクの冒険者がいないから、他の町から呼び寄せてっていう形になると思います」
「そ、それじゃと、金が稼げなくなるぞ!」
「……辛抱していただくしか」
「困る、困るのじゃ! 金がないと、メルの美味しい料理が食べられなくなる! そんなのは、いやじゃーっ!」
サリサが頭を抱えて絶叫した。確かに、規制されて活動出来なくなると、生活が厳しくなる。やはり、ここはネットショッピングで買った物を売るしかないか? でも、そうしたら注目が集まって、この町にはもう居られない。
「どうしましょう……。町を出ますか?」
「それしかないかなぁ……」
それが一番いい方法だ。別に私たちは一つの町に留まるような生活スタイルじゃない。ここは危険を避けて、活動出来る町に移動するしかない。
「ねぇ、サリサはどう思う?」
「……いや、わらわにもっと良い案がある」
「どんな案ですか?」
「特殊個体はスキルも魔法も使えると言っておったじゃろう? もし、その個体を食べると、わらわたちはさらなる能力が授かれるんじゃないか?」
「まぁ、そうだと思うけれど……」
サリサはどうしたんだろう? 急に食べようと言い出して。もしかして、お腹減った?
「ここは、わらわたちのスキルアップを目指すのもいいんじゃないか?」
「えっ……じゃあ、倒されるのを待つ、ということでしょうか?」
「いいや。わらわが倒してくる!」
えっ!? サリサが特殊個体を倒してくるって!?
「そうしたら、みんなで食べて強くなる! うん! とてもいい案じゃ!」
そう言って、サリサは自信満々に胸を張った。




