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「愛や多様性の犠牲者が誰になるか分かってんのか!」悪役顔の公爵令嬢イザベル、綺麗事で国を壊すバカどもを現実でボコす内政改革  作者: 猫目こね
イザベル十三歳。初等部二年生/イザベル十五歳。中等部二年生〜

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80話 エドモンとルーラと再会




第二王子のことは、多少は気になる。

というわけで、私は早速ノアに彼の調査をお願いしておいた。



(本当に病弱なだけなら、薬や良い医者をこちらが裏ルートから手配することで、何か改善できるかもしれない。

もし彼がリュシアン殿下の対抗馬になれる器なのであれば、ぜひ………、是非っとも表舞台に立って競り合ってほしい!

だって私、王妃になりたくないんだもん!

リュシアンが失脚してくれれば、私のお役目も御免になるっしょ!)



そんな下心を胸に秘めながら、私は学院の廊下をメリッサと共に歩いていた。



実は最近、そんな学院の内部でも、ちょっとした変化が起きているらしい。




「あっ、そういえば、クレス様が作った集会も変わったんですよねー。」




その変化とやらを、メリッサが歩きながら教えてくれた。




かつて、クレスが作った旧体制派の学院生徒たちの集会。

これが、どうやらクレスが学院を卒業する間際に、その集会の正式名称をノリノリで決めていったようだ。




その名も、

―――『新しい箱舟レケンス・アーク』。



代表だったクレスが卒業したことで、もしかしたらそのまま自然消滅するかと思いきや、驚いたことに旧体制派の生徒を中心に存続していたのだ。



「イザベル様は知らないかもですけど、結構頑張ってたみたいですよ。

今は大体100人くらいですかね?

ちなみに私も入ってるんですよ〜。

変な方向に激化しちゃわないよーに監視しろってノア様が言うからー。」




(ちょーーーっと待って。

私が最初で最後の集会に参加した時には、確か50人くらいしかいなかったと思うんだけど?

倍になってんじゃん?!)




しかも、今年入ってきたばかりの新入生の中に、やたらと強いリーダーシップを発揮している少年がいるらしい。




彼の名は、ルクス。




金髪緑眼の、まさに物語に出てくる王子様をそのまま形にしたような外見で、すでに女子生徒たちから大人気の初等部一年の少年とのことだ。

そんなルクス君は、集会でこんな大演説をぶち上げているらしい。




「ただ声をあげるだけではダメだ!

もっと一人一人が、今まで使ってこなかった脳みそをフル回転させて

『どうしたら自分はこの国で生き残れるのか』

『どうすれば自分の子孫が幸せに過ごせる国を作れるのか』

を個々で考えて行動していかなければならない!

明日は我が身だぞ!!」




などと、結構強気な発言をしていて、ちょっと内向的な先輩たちを差し置いて、実質的にその『新しい箱舟レケンス・アーク』を掌握し始めているらしいのだ。



メリッサからその話を聞かされて、私は「ふむぅ…」と思案する。



(へーぇ。

金髪緑眼の王子様が、『今まで使ってこなかった脳みそ』とか言うんだ。

…えっ、まさか暗に仲間ディスってる?

いや決起を促してんだよねきっと、ね。

まっ、過激派になって変な方向に行かなければいいよ。

メリッサが監視してるなら、大丈夫だよね。)



と、この時の私はまだ、このルクスという少年のあまりにも出来すぎたバックボーンを深く考えておらず、完全に他人事でスルーしていたのだった。




それよりも!

今の私にとって、そしてこれからの国の行末にとって重要なのは、こちらの案件だ。




私は別に、メリッサと学院内の廊下をただ仲良くお散歩していたわけではない。

もちろん重大な用事があって、目的地まで歩いていたのだ。




向かっているのは、生徒たちが事前予約をすれば自由に使用できる個室。




「あ、ここですよイザベル様。」


「ありがとう、メリッサ。」




そう言ってメリッサが案内してくれた部屋のドアに、私はそっと手をかけた。




ガチャッ……。




ドアを開けたその先にいたのは、何年かぶりに顔を合わせる、ハム侯爵家の双子。



―――エドモンとルーラだった。




「お久しぶりです、イザベル様!

ずっと…ずっとお会いしたかったです!」



「こらエドモン!はしたないですわ!

…イザベル様、本当にお会いしたかったです。

さぁ、まずはこちらにお座りください。」



「ありがとう、ルーラ様。」



「ルーラ様だなんて、そんな!!

呼び捨てにしてください、ぜひ!お願いします!」



「わ!私も!エドモンと呼び捨てでお願いします!!」



「え…、えぇ。分かったわ。ルーラ、エドモン。

久しぶりに会えて嬉しいわ。

二人とも見違えるように逞しく……その、とても逞しくなられたのね…。」




エドモンとルーラ。

以前会った時は、弱々しくて、当時の私よりもか細い印象の双子だったはずなのだが…。




どうしたことだろう。



今、目の前にいるエドモンはなんだかちょっとマッチョ。

ルーラにいたっては、なんか…その……背後に…スタンドでもいそうな……、ものすごく鋭く強者な顔つきをしていらっしゃる。




二人とも、一体どんな修行を積んできたの。




「ふふっ、私たち、これでもだいぶ鍛えてきましたから…!」



「そ、そう。

それはきっと、血の滲むような大変な努力だったんでしょうね。

今度ゆっくり聞かせてちょうだい。」



「はい!ぜひ!

あっ、それでですね。

今日イザベル様をお呼び立てしたのは、どうしても対面でお話ししたいことがあるからなんです。」



「まずは、私たちの方からお呼び立てするような無礼をしてしまい、申し訳ありません。」



ルーラが話を本題に移し、エドモンが無礼を詫びた。




「構いません。気にしていないもの。

それで……話したいこと、というのは?」




一転して真剣な表情になった二人からもたらされた話。

それは、私がこれまで喉から手が出るほど欲しいと切望していた…。




―――『国外のリアルな情報』だった。




この二年間と言わず、私は十五歳になる今日まで、国外の正確な情報をあまり手にできていなかったのだ。


なぜか?

理由は非常にシンプルで、この世界の異種族の性質に問題があったからだ。




まず『ドワーフ』は、そもそも口が堅いので自国の話を滅多にしたがらない。

職人気質がゆえに、政治のことよりも技術や商売の話にしかあまり興味がないのだ。




次に『獣人』の多くは、お世辞にも賢いとは言えない。

自国が今どのような状況下にあるのか本人すら分かっていない。


だから一般の獣人に聞くだけ時間の無駄なのだ。

稀にいる聡明な獣人は、基本国外に出てこずに国内の内政を担当しており、国家レベルのちゃんとした外交の場にしか現れないという。




そして『エルフ』は、自分たち以外のすべての人種を「下等生物」だと一括りに見下しているので、まともに話すらしてくれない。




最後の『魔族』にいたっては、そもそも人間の国から行くには距離が遠く、滅多に見かけることすらない。

皮肉なことに、魔族が一番話をして理解し合える知性を持っているのだが、如何せん数が少なすぎるのだ。




尚、我がベルドレッド公爵家で、ノアに捕獲されて拷…尋問された異種族に関してだが…。

大抵、大した情報を持っていなかった。

なんとなーくでしか自国のことを把握していないのは、人間も異種族も大差ないのかもしれない。



本当に自国の情勢を理解しているような層は、尋問を受けるリスクを考えるため、そう簡単に国外へ出たりしないのだ。



そんな絶望的な情報格差がある中で、どうやらこの二年の間、エドモンとルーラの二人は各地の学校へ実際に留学し、自分の足で世界を見て回ってきたそうなのだ。



今回は、その命がけで手に入れた留学の成果を私に共有してくれるという。



(私がずっと求めていた、国外のリアルな情報…。

ついにキターーーーー!!

けれど…、これが吉と出るか、それとも凶と出るか…。

あぁ、不安しかない。)



静まり返った個室の中で、ルーラがそっと、引き締まった口元を開いた。




「イザベル様……。」




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