79話 領地格差〜革新派領地の悲劇〜
祝!3万PV!いつもご愛読してくださる皆様に感謝です!
ありがとうございます!
お祝いエピソードを軽く書きたいと思ってます!
今回は長いです。
キルという、度を越した戦力に驚くあまり、すっかり忘れてしまっていたが…。
変わったことはまだまだある!
私たちが仕掛けた様々な行動や、その結果は前述した通りだ。
だが、私たちが動いたことで「旧体制派や革新派に、どのような変化をもたらすことができたか?」にも触れておこう。
(ふっふっふ…。結論をものすごーく簡単に言ってしまおう。
ズバリ…!
旧体制派の「お財布ホクホク好景気」と、革新派の「お先真っ暗ガタガタ衰退」となったのだー!!)
この二年の間に、この二つの対立する派閥の格差は面白いほどに広がっていった。
まず、我がベルドレッド公爵家を含む旧体制派はどうなったかというと。
私たちは異種族を差別こそしないが、「徹底的に管理」することにした。
異種族との交易は必ず『虹の広場』の中でのみ許可し、それ以外の場所への立ち入りは法律で厳しく制限した。
「はい次の方ー、持ち物検査しますよー。」
「そこに住所と名前を書いてくださーい。
嘘書いたら一発でバレる魔道具使ってますからねー。」
このように、広場に入るだけでも異種族は徹底的なお荷物チェックをされ、身元の記載を必須にした。
さらに、万が一問題を起こした異種族がいた場合、その者の情報は旧体制派の全領地間で共有。
二度と旧体制派の虹の広場には立ち入れなくなるという、『出禁』を徹底した。
こうしたリスク管理のおかげで、旧体制派の治安はかなり良好に保たれている。
最初は文句を言っていた異種族側も…
「ルールさえ守れば、人間の街で安全に商売ができるんだから安いもんだよ。」
「治安が悪い虹の広場は、検査みたいな手間はないけれど、あっちに行くよりもこっちの方が皆心に余裕を持っているから優しくて、全然比べものにならないくらい居心地が良いんだよね。」
「持ち物検査をして住所を書くだけで、綺麗な広場を利用できて、しかもこちらの種族に合わせた食材まで用意してくれているんだ。
快適だよ!」
そう、『旧体制派の虹の広場』に来るのは、相手を尊重できるだけの知性を持つ者か、事前の検査を受け入れられるくらいには心と金銭に余裕を持った、質の高い異種族だけに限られたのだ。
―――すると、彼らの間でも面白い現象が起き始めた。
「あっちの管理がヌルい虹の広場にしか行けない奴はステータスが低い。
こちらの厳格な広場に通える俺たちはステータスが高い!」
と、プライドの高い富裕層や位の高い異種族たちが、こぞって旧体制派を贔屓し、歓迎の意を表明し始めたのだ。
こうなってしまっては、国王も含めた革新派の貴族たちであっても、こちら側の管理方法に容易く文句を言えない。
(これぞ『ブランド化戦略』!!)
逆に、革新派領地はというと…地獄絵図と化していた。
彼らが推し進める「異種族との共生」は、ほぼ無条件に等しく、かつ数に制限を持たせないザル仕様の受け入れとなってしまっていたからだ。
まず、治安や居心地の悪くなった人間の領民たちが、この二年をかけて不自然に思われない程度に、少しずつ旧体制派の領地へと移住していった。
移住人数を調整したのは、アンリとマユの商会とノアの部下たちの指示によって難なく行われた。
少しずつ移動した甲斐あって、革新派の貴族は自分の領民が減少していることに気づくのが遅れた。
「ん?最近なんか街が静かだな?ん〜気のせいかっ!」
なんて言っている間に、今まさにこの時もまだ減少は止まっていない。
そして、そのスカスカになった領地に、出禁を喰らったような『粗暴な異種族』たちが大量に流入している。
たまに、「国内からの移動なら、旧体制派の領地にも潜り込めるだろ!」と踏んで、革新派領地経由でこっちに入ってこようとする不届き者もいるのだが、領内に入る境界線には『護身術教室』も体験したことでゴリマッチョ化した旧体制派の警備隊がガッチガチの検問所を敷いている。
「はい、そこのお兄さんストーップ。
うーん。
ちょっとこっちに来てくれるかな?」
という感じで、発見し確保することが可能なのだ。
こうした者に対しては警告を出し、引き返すように伝えて帰ってもらうようにしている。
(まっ、表立ってそんなことをしたら、革新派の貴族から「差別だー!」ってヒステリックに叩かれるのがオチ。
こういう事実をもみ消すのも面倒なので…、実際は旧体制派に無理やり侵入しようとした瞬間、ノア配下の暗殺部隊が拉致して、そのままジンバイへ売り飛ばしてしまうんだけど。)
そもそも、そんな粗暴な連中が国内で闊歩できているのは、管理不足である革新派領地の『虹の広場』から、ガバガバな管理で入国してくるからだ。
管理不足というレベルではない。
革新派の連中は、そもそも粗暴な異種族がこの国に入国してきているのかどうかの記録すら、まともに取れていたりいなかったりという有り様なのだ。
しかも、彼らが革新派領地の広場から出て行った後の足取りなんて、誰も全く追うことができない。
(だからこそ、旧体制派の境界線で彼らが「失踪」したとしても、そもそもこの国に入った公的な記録自体がないのだから、どこでどう消えたのかなんて誰にも分かりっこないんだよね。)
万が一、異種族の故郷側から「我が同胞がそちらの国で行方不明になった!」と訴えられたとしても、それを証明する証拠はどこにもない。
(いやぁ、これぞ他でもない、「異種族との共生」だの「多様性の尊重」だのと綺麗事を並べ立てて歓迎した、革新派貴族たちの領地が招いた悲劇と言っても過言ではない。
ウププププ〜。)
だって、私たちは『虹の広場』に入る時点で厳しく制限しているのだから。
不審者を国内に入れちゃった奴が悪いのである。
私たちは断じて悪くない。
(というかむしろ、こっちは不審者を処分する手間がかかってるんだからね!?
国からゴミの処分費用を貰いたいくらいだ。
あ、でも、捕まえた者たちをジンバイに売ったお金で、裏の帳簿は一応ホクホク潤ってるから、まぁお互い様ってことでいいっちゃいいんだけど。)
そんなわけで、全然精査していない杜撰な管理体制のままの革新派領地では犯罪トラブルが多発。
これを受けて革新派貴族たちは今までそうしてきたように、領地から溢れそうになった異種族を中立派の領地へ押し付けようとした。
だが、中立派の貴族たちからも、
「我が領は『中立』だ。
否定はしないが肯定しているわけでもない!
そんな段階で、お前たちの尻拭いを受け入れるわけにいかない。
自分たちでどうにかしろ!」
と、突っ返されたのだ。
もしここで革新派が無理に圧力をかければ、結束力を強めた旧体制派に中立派が丸ごと寝返ってしまうため、革新派は完全に手詰まりとなった。
さらに、革新派貴族たちに降りかかる不幸はまだあった。
異種族たちには、「他国に対して税を納める」という概念がほぼないのだ。
「ハ?なんでこの国に、俺たちが金を払わなきゃいけないんダ?」
「人間の国なんだから人間が払えよ。」
「こっちは『是非来てください』って呼ばれたから来てやってるんだ。
ありがたく思え。むしろ私たちを手厚く保護しろ!」
「おい、衣食住の配給が足りてないぞ!早く揃えろ!」
と、税を踏み倒すどころか義務も果たさず、権利と要求ばかりを大声で主張する輩がゴロゴロ溢れかえる始末。
結果として、革新派領地は税収が激減しただけでなく、もはや完全な赤字へと転落していった。
追い打ちをかけるように、異種族の中で最も流入が多い「獣人」たちの、人間とは全然違う『公衆衛生』の概念がトドメを刺した。
彼らにはゴミをゴミ箱に捨てるという知識はあっても、それを実行できるほどの脳みそはないようだ。
排泄でさえ、そこら辺の道端でする者がいるというのは信じられない…。
こうなってしまうと、革新派領地は清掃が全く追いつかず、彼らの住居の周りはゴミだらけ。
「おい、そこでするなと言っているだろう!」
「あ?うるせえな人間が!ウ◯コをするのは自然の摂理だろ!」
人間の役人たちが片付けるスピードを遥かに超えて汚されていき、今や領地全体のあちこちに巨大なゴミ溜めが出現する事態になっていた。
治安が悪化すれば、当然街も汚くなる。
いや、街が汚くなるから、治安が悪化するのか?
どちらにせよ、負のスパイラルである。
このように、どこを比較しても旧体制派領地の方が圧倒的に居心地が良いため、一般の領民たちが夜逃げのように旧体制派の領地へと移住してくる事態に発展したのだった。
いつの間にか富も生産性も激減した革新派の貴族たち。
だが、欲だけは一丁前に残っている彼らは、自分たちの失策を認めるどころか、代わりに信じられない行動に出た。
「旧体制派ばかりが富を独占するのは不公平だ!」
「自分たちにもその富を分配すべきである!」
「あちらの税収が上がったのなら、上がった分だけ国に多く税を納めるべきであり、それを税収の低い我々の領地へ再分配すべきだ!」
「そもそも多様性をもっと尊重し、異種族との共生を…!!」
という、「お前の富は俺の富、俺の失敗は全体の責任」とでも言っているような主張をし始めたのだ。
自分たちが無闇やたらに異種族を入れ、自領の民を蔑ろにした因果応報であるというのに…。
怒りたいのは領民のはずなのに、完全に逆ギレである。
加えて、旧体制派の筆頭であり、現在大繁盛している我がベルドレッド公爵家に、異常なまでのドス黒い嫉妬の目を向け始めていた。
ここまで革新派貴族たちが大騒ぎしているものだから、国王が私たちを潰しにかかる法案でも出してくると思ったのだが、国王からは今の所何も言われていない。
旧体制派の虹の広場が、異種族のお偉いさんには盛況であることも関係しているのかもしれない。
だが、如何せん不気味だ。
動けない理由でもあるのだろうか。
そんな政治の表舞台はともかくとして。
この状況に、裏で一番イラついているのは、革新派が神輿として持ち上げているリュシアン殿下…の、家庭教師であるエルフのアニエスだろう。
最近、王宮の廊下ですれ違う度にこちらを見て微笑みかけてくるのだが、目が全く笑っていないのだ。
彼女の裏の思惑なんて、いち学生である私には知る由もないが、きっと余裕がなくなってきているのだろう。
(うわぁ……アニエス、口角は上がってんのに目が完全に死んでる。
絶世の美女が…死んだ魚の目してる。
ま、あれだけリュシアン殿下推しの革新派領地が世紀末状態になってたら、殿下の権力地盤も揺らいでしまうもんね。
でも、第二王子の…ノクス殿下だっけ?
第二王子は病弱って有名だから、リュシアン殿下の対抗馬にはならないと思うけど。)
そう、問題はここ。
リュシアン殿下しか、国王候補がいないのだ。
(国王に隠し子がいないか調査するとして…。
第二王子…、ノクス殿下…か…。)
イザベルは前世、ダンガン◯ンパのモノクマが好きだった。
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