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「愛や多様性の犠牲者が誰になるか分かってんのか!」悪役顔の公爵令嬢イザベル、綺麗事で国を壊すバカどもを現実でボコす内政改革  作者: 猫目こね
イザベル十三歳。初等部二年生/イザベル十五歳。中等部二年生〜

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77話 全力で進める!!

遅くなり申し訳ありません。

今日は長くなりました。




ティアへの陰湿な嫌がらせの件は、色々と思うところはあるが、一旦メリッサに任せることにした。




私は、自分の出来ることを、自分が自由に動けるうちに…。

全力で進めることにシフトしたのだ。



(クレスが学院の生徒をあれだけ集められたのも、学生の身分でさえ『これは変だ』と肌で感じるほど、国が混乱してきている証拠。

だってそれまで、学生が政治について考えることすら皆無な、お花畑な学院生徒たちだったんだよ?

それに…、明日にでも国が崩壊するかもしれない。

はたまた数年、数十年先のことなのかもしれない。

けれど、今は確実に崩壊に向かって進んでいるのは間違いないんだよね。)




のんびり構えている余裕なんて、もうどこにもない。




(この混乱に乗じて、ベルドレッド公爵家を含めた旧体制派だって、革新派である国王にいつどんな理由で潰されるか分からないし…!)




盤上を動かすなら、今この時しかないと踏んだのだ。




(いつの間にか…私ももう十三歳かぁー…。

私自身の時間は、寿命的にはまだまだあるけれど、国の寿命は…全然長くなさそう。

本当はもっと大人になってから、もっともっと地盤を固めた状態で動き出したかったのにぃぃい!

おのれ革新派どもぉぉぉお!!)




これ以上この国を悪化させてしまえば、仮に国が存続したとしても元通りの暮らしはできない。

治安が悪いままの国になってしまう可能性がある。

そんなの、私の今後のスローライフが根本から崩壊してしまう。




(今考えると、学院生活や王妃教育を優先して貴重な一年間を過ごしてしまったのは、なかなかの痛手だったかもしれない…。

そう考えると、こうなることを狙っていたかどうかは知らないけれど、リュシアン殿下は私の最大の邪魔をしてくれたってわけか…!)



あのバカ王子の顔を思い出して、ふつふつと怒りが湧いてくる。

私の安泰を脅かす国。

そして、私の時間を奪った婚約者。




(…まぁいいわ。

あいつらにこれ以上、私の人生を潰させない。

もう、後手に回るのは終わりよ。)



先日、アンリとマユには「公爵令嬢の我が儘レベルの権力しかない」なんて言ったけれど…よくよく考えれば、私には別の手段が豊富にあるのだ。



アンリとマユによる『社会的制裁』。

ノアたち暗殺部隊による『物理的制裁』。

そしてリル経由(ジンバイ(人身売買)行き)による『人間として終了する制裁』。




国家権力には敵わないかもしれないが、それでも中々素晴らしいカードが揃っているのだ。

私は早速リル、ノア、アンリ、マユの四人を公爵邸の自室に呼び出した。




「急に集まってもらって悪いわね。

先日アンリとマユと話して…私も、そろそろ本気で動かなきゃって思ったの。」



私の言葉に、マユが不思議そうに首を傾げた。



「ですが、イザベル様は、ご自身の権力を表立って振るわれるつもりはない、と…。」



「ええ、言ったわ。

だからこそ、あなたたちの力を貸してほしいのよ。

私個人の権力なんかより、あなたたちが持つ力の方が、私よりも遥かに強力なんだもの。」




四人は一瞬驚いたように顔を見合わせ、

―――そして、ふっと不敵な笑みを浮かべた。




「「「「もちろんです、イザベル様!!」」」」




「ふふ、ありがとう。

それでは、早速仕上げていきましょう。」



そう言って微笑んだ私の顔は、前世の漫画で読んだ悪役令嬢なら確実に『悪役令嬢のド悪辣な笑顔』と形容されるような、顔だったに違いない。




こうして、私の『隠居のための国家安泰プロジェクト』は、一気に加速することとなった。




狙うは、異種族の受け入れでガタガタになっている『革新派の領地』。

幸いなことに、我がベルドレッド公爵家が属する旧体制派の領地は、すでに優秀な人材が育ちきっていた。



これはノア、アンリ、マユの功績だ。

彼らは私が指示する前に、人材育成に励んでいたのだ。



(有能過ぎだよね本当に(まじで)。)



その余った人的リソースを、すべて革新派領地へと投入するのだ。





「アンリ、マユ。

あなたたちが作った商会(ペーパーカンパニー)なんだけれど。

あの商会をフル活用しましょう。

革新派領地にある潰れかけの弱小商会を、片っ端から買収してちょうだい。」




「なるほど、隠れみの(カムフラージュ)、ですね。」



アンリがニヤリと不敵に笑う。



「ふふっ。察しが良くて助かるわ。

金回りさえ良ければ、隣国で作られた商会だろうが、革新派の貴族(金の亡者)どもは一切気にとめないわ。

税さえちゃんと納めれば文句は言われないもの。

そして、買収した弱小商会の奥部屋で『禁書の裏取引』を行わせるの。

革新派領地では報じられていないけど、旧体制派領地では報じられている、検閲なしの『国の正しい現状』が書かれた新聞を領民に読ませるのよ。」




「それは妙案ですが、もしスパイが紛れ込んだら一発で密告されますよ?」




マユの懸念に、私は答える。




「そうね。だから『三段階の適性審査』を敷いたら良いかなって。

まず信頼できそうな人物をこちらから見定めて、最初はあえて『偽の情報』を書いた新聞を見せる。

それを他人に口外しないか数日間観察して、口の堅さを確かめてから、やっと本物を見せるの。

もちろん、閲覧中はこちら側の人間が必ず立ち会うこと。

これで『誰が信頼できて、誰が裏切るか』の選別が行えるわ。」




「なるほど。

それなら革新派の足元でありながら、確実に情報を伝えられますね。」




「この件はあなたたち二人に一任するわ。

だから、二人のやりやすいようにやってもらって構わないわ。

今のは一例よ。」




だが、これらすべての動きを、革新派に絶対に知られてはいけないという最大のミッションがある。

すると、今まで黙っていたノアが静かに挙手した。



「イザベル様。

それでしたら、革新派の目を欺く情報操作は私にお任せください。

実は…、国王直属部隊との連携が取れてるので。」




「…ん?なんだって??……えっ!いつの間に!?」



思わず素で叫んでしまった。



(いつの間にそんな大物そうな団体様とツテを作ってるんだい君は!)



「彼らも現国王の愚策には強い疑問を感じていたようでして。

国と国民を守るため、自らの意思で私たちと手を組むことになりました。

私たちと彼らが連携すれば、大抵の情報操作は可能となります。」




(ノア、恐ろしい子…!でも有能すぎて助かる!)




「よし、そこらへんのことはノアに任せる!

次は食料自給率のアップと戦力増強よ!」




私は一気にまくしたてた。




「自分たちの領地(テリトリー)を守るため、旧体制派領地での食料確保を徹底するわ。

農民たちへ『これからは自分で育てられる作物は自分で育てて備えよ』という意識を、噂ベースでそれとなく植え付けることから始めるわ。

リル、できる?」



「はい、お任せくださいイザベル様。

まずは主婦層に、『この野菜は初心者でも育てやすくて美味しい』『自分で作った方が安い』『自分で育てた野菜は特別に美味しく感じる』などという話を広めます。

すると、家庭内で妻が夫や子供へ話すことで、彼らが別の家庭へ伝えていくでしょう。

最終的には『自分も庭で何かやってみようかな』と巻き込まれていくはずです。

宣伝は私や、旧体制派内において見目麗しい者から発信していけばより広まりやすくなるかと。」




「いいわね!主婦のネットワークを侮ってはいけないものね。

アンリとマユも宣伝の強力、お願いね。」




アンリとマユが頷いた。




「それと、旧体制派の領地にある炭鉱や鉄鋼などの『鉱業の防衛・保護』も強化しておきたいわね。

もしも、この先…万が一にでも争いが起きてしまった時。

武器の材料になる鉄や、魔導具の燃料になる鉱物が真っ先に敵に押さえられたり、供給を止められたりしたら、戦う前にこちらの命綱が切れてしまうもの。」



「かしこまりました。

武具の鍛造や戦時流通の要となる鉱山は、まさに旧体制派の血脈。

すでに主要な炭鉱や鉄鋼山には、それとなく警備の増強と、名目の立たない『余剰備蓄』を急がせております。

敵に鉱脈を渡さぬよう、防衛線の引き直しも完了しておりますのでご安心ください。」




「えっ。あ、ありがとうリル。」



(ノアだけじゃなくてリルも有能過ぎてヤヴァイ。

私の語彙力が失われるほど有能だぁ。わぁ…ぁ……。)




「ほっ、本当に頼りになるわ!

あとやることは…、ヴィンセント兄様に私から『旧体制派の結束をさらに強固なものにしたいのです』って、いい感じに丸投げして貴族たちを団結してもらうわね。」



最後に私はリルとノアを交互に見た。

何か言い残したことはないか、と。



「あ、戦力増強も必須ね。

人材育成してきたとはいえ、もっと必要になる時がくるかもしれない。

だから、適当な理由をつけてでも、有事の際に動けるように領民たちを少しずつ、ノアの部下たちによる秘密裏の戦闘稽古に加えましょう。

リルはジンバイに頼んで、裏ルートから戦力増強に使えそうなアイテムや武具を誰にもバレないように買い揃えてもらえる?」




「では、護身術教室でも開いてみましょう。

無料で開けば集まる者も多いでしょうし。」




ノアが早速、良い案を出してくれた。

リルも続く。



「かしこまりました。

ジンバイも、イザベル様のためなら喜んで最高級の物資を揃えるでしょう。」



(はっはっはー!

旧体制派の地盤はこれである程度は守られそうだ〜!

中立派には手が回ればやるって感じでいいや。

まずは私の平穏な隠居生活を脅かすリスクを、徹底的に潰す!)



フンス、と鼻息を荒くする私を見て、リルやノア、アンリとマユは「なんと気高き覚悟……国を救うため、これほどの策略を瞬時に張り巡らせるとは」と、畏怖の念を抱いて深く頭を下げていた。



私はこうして、旧体制派の地盤固めに早急に取り掛かると共に、革新派の足元を確実に蝕む活動を開始したのだった。




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(投稿後、「戦力増強」辺りを手直ししました。)

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