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「愛や多様性の犠牲者が誰になるか分かってんのか!」悪役顔の公爵令嬢イザベル、綺麗事で国を壊すバカどもを現実でボコす内政改革  作者: 猫目こね
アステリア王立貴族学院編(イザベル十二歳。初等部一年生)

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76話 新学期と忍び寄る不穏な影

短めです。




休みが明け、私は『初等部二年生』へと進級した。



新しい年度を迎えるにあたり、いくつかの変化があった。

まず、私の理解者であり、いつも優しく手を差し伸べてくれていたエルザ姉様が、学院を辞めた。



どうやらめでたく子を授かったらしい。

頼れる姉がいなくなってしまった寂しさはもちろんある。


けれどそれ以上に、今は何よりもエルザ姉様の体とお腹の赤ちゃんのことを一番に考えて、ゆっくり休んでほしい!という祝福の気持ちでいっぱいだった。

異種族の騒乱で不穏な空気が漂う今だからこそ、領地で穏やかに幸せな時間を過ごしてほしいと心から願っている。




寂しい別れの一方で、嬉しい変化もあった。

年度が変わるごとに多少のクラス替えがあるのだが、なんとティア・ミストレイが、私やメリッサと同じクラスになったのだ。

気の合う友人が近くにいるというのは、それなりに嬉しい。




そしてもう一つ。

あの、殺伐とした空気のまま終わったリュシアン殿下との茶会以来、王妃教育の場でも、この学院の敷地内でも、殿下とはめっきり顔を合わせなくなっていた。




その一件については、新学期早々に開いた女子会で、メリッサとティアにも少しだけ話している。



「…と、いうわけなのよ。楽しいお茶会…ってわけではなかったわ。」



「えぇ…。殿下って癇癪持ち…?」



メリッサが心底呆れたような顔をした。

一方で、ティアは少し違う視点からクスリと笑った。



「殿下に意見したり、説教したりするような方なんて、これまで周りにいなかったですから。

…いえ、いましたが…すぐに左遷されるか、消されていましたから。

ですがイザベル様は、一応殿下が『自分で望んで選んだ婚約者』です。

いくら腹が立っても、なかなか消すに消せない状況を自ら生み出してしまわれたのでしょうね。

ふふっ。」




「なるほど、自業自得ってわけね。

ただ、少し気になるのは、殿下が『私には私の考えがある』的なことを匂わせていたのよね。

結局『お前なんかには教えてやらない』って態度を取られたから、詳細は分からないのだけれど。」



私が首を傾げると、メリッサがフンと鼻を鳴らした。



「そんなの、自分の無策を隠すためのハッタリに決まっていますよー。」



「そうですよ。深く考えるだけ時間の無駄です。」



「うーん、そうよね。 忘れることにするわ。」



そんな会話で、その場は笑い話として終わった。




―――しかし、そんな一見平和そうに見える学院生活の中で、確実に『異変』は起き始めていた。




その異変の矛先が向いたのは、他でもない、ティア・ミストレイだった。




「あれ…?」


「どうしたの、ティア?」


「その…私がいつも使っているペンが、なくなってしまって…。」



最初は、その程度の小さな紛失だと思っていた。

だが、それはすぐに度重なるようになる。


またある時は。



「また、ない…。」


「今度は何がなくなったの?」


「今日の授業で使うはずの教材が、どうしても見つからなくて…。」




しばらく経っても、週一、二回の嫌がらせが定期的に続く。




「……っ。」


「ティア?顔色が悪いわよ?また何かがなくなってしまったの?」


「…はい。お気に入りだった髪留めを、確かに鞄に入れていたはずなのですが…。

いくら探しても、なくて…。」



「ティア、いつか見つかるわよ。」


「そうだよ、大丈夫だよ〜。」



メリッサと私は、憔悴していくティアの肩を抱くようにして励ました。



「はい…。ありがとうございます、お二人とも…。」




弱々しく微笑むティア。

だが、その小さな肩は微かに震えていたのだった。





いつも読んでくださり、ありがとうございます。

最近は急用や休養で更新できない日があり、申し訳ありません。

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