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「愛や多様性の犠牲者が誰になるか分かってんのか!」悪役顔の公爵令嬢イザベル、綺麗事で国を壊すバカどもを現実でボコす内政改革  作者: 猫目こね
アステリア王立貴族学院編(イザベル十二歳。初等部一年生)

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68話 家庭教師、決定!



青ざめているルダリオ。

そんな彼の「救世主」として現れたのは、これまた最悪のタイミングで現れたリュシアン殿下だった。



「…何事だ、この騒ぎは。」



殿下の顔色は、お世辞にも良いとは言えなかった。

目の下には深いクマが刻まれている。



一昨日からの惨劇の隠蔽工作や、宰相との事後処理、あるいはアニエスに振り回されて、まともに寝ていないのだろう。



きっと、側近であるルダリオにだけは状況を共有していたのだろう。

けれど、まさかこの「ルダリオ・ヴァカダリー」が、学院の入り口でそれを大声で叫ぶなどとは夢にも思っていなかったに違いない。




「で、殿下! 違うのです、これはイザベルが…!」


「黙れルダリオ。」




リュシアン殿下は彼を鋭く一喝すると、周囲の生徒たちを威圧するように見回した。



「今聞いた話は全て忘れろ!

尚、この件を口外することを一切禁ずる。…良いな!?」



殿下の必死な宣言。

だが、人の口に戸は立てられないものだ。


特に「隠せ」と言われれば言われるほど、噂は蜜の味を帯びて広まっていく。

生徒たちの目はすでに「やっぱり本当なんだ」「隠そうとしてる」という確信に満ちていた。




その後、ルダリオは殿下の側近という地位こそ守ったものの、学院内で二人が共にいる姿を目にすることは目に見えて減っていった。

ルダリオによる私への「反抗」は、今回も鮮やかな自爆、もとい失敗に終わったわけだ。




(自業自得だけどね。

せいぜい、殿下のクマを増やす原因になったことを反省するんだな。)



私は合流したメリッサやティアと平和な放課後を過ごし、気持ちを切り替えて王宮へと向かった。







放課後。



リルが学院に迎えに来て、王宮に向かう。

王宮に到着し、王妃教育が行われる部屋の前に立つ。



正直、後任が誰になったのかは非常に気になるところだ。

リルに見守られながら、私は少しの緊張と共にドアを開けた。




「……?」



そこに立っていたのは、ふわふわとした焦茶色の髪に眼鏡をかけた、エルザ姉様と同い年くらいの女性だった。

下がり眉で、どこか小動物のように気弱そうな印象を受ける。



(い…犬!犬みたいなふわふわ毛並み!!)



王妃教育を担う者は、王妃様のような誰にも屈しない凛とした強さが必要だと思っていた私は、一瞬拍子抜けしてしまった。



「ごっ、ごきげんよう!イザベル・ベルドレッド様!

私、クロエ・スペンサーと申しますっ!」



(おぉ……この人に決まったのね。)





クロエ・スペンサー。


彼女は、当初の五人の候補者の中でも最も地味で、リュシアン殿下からも王妃様からも推薦されていなかったはずだ。

スペンサー伯爵家の次女。

その特徴は、頭脳明晰を超えた「暗記超人」。

あらゆる分野の本を丸ごと記憶しているという。



だが、その見た目通りのお人好しさが災いし、教育者としては「優しすぎる」と評価されていたはずなのだが…。




「初めまして、スペンサー先生とお呼びしてもよろしいでしょうか?」



「はっ、はい!あっ…、さすがイザベル様ですね。

私のこと知っていてくださったなんて光栄です!」



「ふふ。先生の暗記能力は有名ですもの。

…ところで先生。

差し支えなければ、なぜ貴女が私の家庭教師に決まったのか伺ってもよろしいですか?」




私の問いに、クロエ先生は困ったように眉をさらに下げて打ち明けてくれた。




「はっ、はい…。

実は、宰相閣下が推薦されたラルーハ元侯爵夫人が…その、あんな凄惨なことになってしまわれたでしょう?

ですから、次は王妃様の推薦人の番だったのですけれど…その方が、辞退されてしまったそうで…。」



「辞退?」



「はい…。

どうやら今回の件で『殺人鬼を推薦するような王家には不信感しかない』と仰って、推薦を蹴る正当な理由にするために、他国へ留学、という名の逃亡をしてしまわれたとか。

それで、中立派でどこにも角が立たない私に、『お前でいいよ』という感じで白羽の矢が立ったみたいです。

父曰く、ですが。」




(なるほどね。

プライドの高い令嬢なら、殺人鬼の後任なんて絶対に嫌よね。

些細なことでも『二代続けて不吉!』とか言われかねないし。)




王妃様の推薦を蹴ってまで逃げ出すとは。


私の「怖くて眠れない」というアピールは処世術の嘘だったが、普通の感性を持つ令嬢からしてみれば「その通り!」と共感せずにはいられない深刻な事態だった、ということか。




「教えてくださりありがとうございます。

私、スペンサー先生のような方で嬉しいですわ。

ぜひ、よろしくお願いいたします。」



「はっ!はい!こちらこそ、精一杯務めさせていただきます!」



こうして、前任者の血生臭い影を払拭するように、どこか頼りなくも誠実なクロエ先生による王妃教育が幕を開けた。




〜〜家庭教師が誰になるか分かる前のイザベルとノアの会話〜〜


「ねぇノア、事前に誰が家庭教師になるか分からない?」


「残念ですが…、無理ですね。

候補者なら事前にある程度調べられるのですが、決定したら王妃教育が始まるまで伏せられてしまうようです。

王宮に忍び込んで探りたいところなのですが、王宮って広いですし…まだ把握できてません。

一番場所が分かりやすくて、脇が甘そうなリュシアン殿下の側には、あのアニエスがいるので近付けない、いや、近付きたくないですし。」


「そうよねぇ…、あー…分からないって緊張するわね。

胃薬欲しい…。」


ノアはこの会話の後、急いで王宮を探索することに決めたので、とても忙しくなるのであった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


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