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「愛や多様性の犠牲者が誰になるか分かってんのか!」悪役顔の公爵令嬢イザベル、綺麗事で国を壊すバカどもを現実でボコす内政改革  作者: 猫目こね
アステリア王立貴族学院編(イザベル十二歳。初等部一年生)

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ノアと国王直属部隊の対面 2



ノアは『籠絡』という言葉で、思い当たる人物がいた。

最近、自分の(あるじ)も関わっていたあの女…。



「…もしかして、リュシアン殿下の家庭教師の、アニエスという女のことですか?

………というか、放置しているなら私をスカウトする意味なんてないのでは…?」




「おやご存知で?さすがですなぁ〜。

彼女が王宮に来たのは、もう十年ほど前になりましょうか…。

最初はエルフの国との異種族交換留学の一環で、国賓扱いで王宮にいらしたのですよ。

お互いの文化を知るために、と。

ですが、彼女は留学期間を過ぎても尚、この国に留まった…。」



先ほどノアが投げかけた「放置しているならスカウトする意味がないのでは?」という至極真っ当な指摘を、ジィヤは「フォッフォ」とはぐらかし、そのままスルーした。



(優秀な人材を他に取られて敵に回るくらいなら、仕事はさせずとも手元に囲っておいた方が得策だ、とでも思っているのだろうか…。)



と、ノアは推察をしたが、ジィヤは構わず自身の回想を続ける。




「やはり、容姿が美しいですからなぁ。

国王も宰相も男の子ゆえ、興味津々で…。

ですが、私たち国王直属部隊ができる限りアニエスと会わないように調整していたので、三年間くらいは国王もまだまともな思考回路をしていたのですよ。

ですが…。」




ジィヤは遠い目をして、忌々しげに言葉を継ぐ。




「彼女が王宮の奥深くに潜り込んでから、徐々に力をつけてきたのです。

どうやってかは知りませんが、国王様も宰相様も、他の権力者たちも次々に籠絡されていきました。

それから国王を筆頭に『革新派』という派閥が広がり、虹の広場の計画や異種族を受け入れていくといった流れを、この数年をかけて徐々に、確実に広げていった。

…この国はもうダメだ、と思いました。」




老いた隊長の瞳に、うっすらと涙が浮かぶ。

その感傷を、ノアは冷ややかな視線で切り捨てた。



「…で。もうダメだと思ったから、王宮は放置しているってわけですか?」



「肯定したくはないのですがね…。

正直なところ、国王直属部隊はほぼ機能しておりません。

国王が私を、私たちを…お呼びにならないのです。

私も現状を伝え、進言はいたしましたとも。

ですが国王は『気にすることではない』と…。」



「フッ…、国王に命令されなきゃ動けないんですか?」



鼻で笑うノアの態度は、不敬を通り越して哀れみすら含んでいた。



「我々は独立した組織ではないのです。

規律を重視し、国王の命令で動く。

それが、国王と…この国のための部隊なのです。」



「『この国のための部隊』でもあるなら、なぜ、この国のために働かない?

国王が気にするなと言ったら、『はいそうですか』と受け入れることが、この国のためになると本気で思っているんですか?」



ノアの静かな声が、部屋に冷たく響く。



「王宮内がこんな惨状なら、外はどうなっているか…知っていますか?

私の妹は……、虹の広場で生きながら地獄を体験させられたんですよ。」



ノアは、妹がどのような目に遭ったか、その凄惨な事実を淡々と、しかし容赦なくジィヤに突きつけた。



「あなたが、あなたたちがどれほど本気で言っているか知りませんが…。

冗談ではなく本当に、このまま何もしなければこの国は気付いたら消えているでしょうね。

国を、民を、思うなら…今からでも遅くはない。

主君の顔色を伺うのをやめて、自分の頭で考えて動くことですね。

…私は、そうすることだってありますよ。」



「もう、この歳だからか、諦めていた。

どうせ自分は先が短い身。

あとのことは若い者がどうにかして、なるようになるだろう、と…。」



「そうやって自分だけ逃げ切るつもりなら、勝手にすればいい。

まぁ、あなたが生きている間に国が終わる可能性だってありますからね。

先が短いからって、自分は逃げられると思わない方が良いですよ。

それを踏まえて…。

あなたにはまだこの部隊の隊長という権限がある。

私を一瞬で仕留めるほどの力もある。

死ぬ前に一花咲かせて、主君の目を覚まさせてやるのも、部下の仕事ではないんですか?」




その言葉は、老兵の胸の深くにまで突き刺さったようだった。



「…。」




ジィヤはしばらく沈黙していたが、やがて「フォッフォッフォ」と、今度は力強い笑い声を上げた。




「そうかもしれんなぁ。

私も、もう少し頑張ってみるとするか。

まずは部隊の再編と、このゴミ溜めのような王宮の掃除から…。

なぁ、若い兄さん。手伝ってくれるかい?」



「いえ、私はは忙しいので…」



即答するノアの言葉を、ジィヤは強引に遮った。



「もし協力してくれるなら、王宮への出入りを公認しようじゃないか。

正式な身分も用意しよう。

そうだな…新しい憲兵か、王妃様の護衛兵にでも紛れ込めるように。

もちろん、その身分は好きに使って構わない。

ただし、手伝ってもらう時はしっかり働いてもらおうじゃないか。」




―――王妃の護衛兵。




それは、合法的にイザベルの側に控えることができる、ノアにとってこれ以上ない条件だった。



「…ジィヤさん、交渉上手ですね。いいでしょう、()()()()協力しましょう。」



こうしてノアと、再起した老齢・ジィヤとの間に、奇妙な協力関係が結ばれたのであった。



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