6話 事の顛末
トバクたちが連行された後、広場には静寂が訪れた。
(これでタダ酒目的の集団は減るはず。
酒がなくなってもここへ来てくれるドワーフなら、真面目な商談を目的として来るはず。)
無作為に人を入れてしまった結果、管理能力を超えた流入がルールを壊す。
それは前世で嫌というほど見てきた光景だ。
後日、ヴィンセント兄様から「イザベルも気になってただろうから。」と、事の顛末を教えてくれた。
そこで判明したトバクの実態は、想像以上に醜悪なものだった。
一つ、酩酊したドワーフから技術を盗もうとしていたこと。
二つ、実は安酒で済ませて差額を浮かせていたこと。
三つ、その浮いた金でギャンブルと女に貢いでいたこと。
(本当に、救いようのないクズだったわけね。)
私は呆れてため息をついた。
一方、ドワーフのバクチは外交上の事情もあり、尋問できぬまま放免となったとのことだ。
だが、彼が「ここはタダで飲めるぞ」と触れ回ったせいで、質の悪い連中が集まっていたこと。
そして、そこでは最低な『娯楽』が行われていたことも判明した。
「彼らは最初、人間に酒を飲ませて情報を引き出すつもりだったようだ。
だが、実際には情報が出る前に人間が酔い潰れてしまう。
すると彼らは……吐瀉物にまみれ、泡を吹いて苦しむ人間を眺めることを、『見世物』として楽しむようになったらしい。」
話してくれるヴィンセント兄様の声にも熱が入り、憤りを感じさせた。
(情報収集が、いつの間にか人間を見下して笑う『拷問じみた娯楽』に変わっていたなんて。
トバクはそれを知りながら、自分の遊び金と保身のために、同胞である商人たちを差し出していたわけね。)
怒りと同時に、寒気がした。
人を見下して笑う奴は、どこにでもいる。
でも、それを『友好』という綺麗な言葉で包み隠し、見ないふりをして放置しているこの国王や貴族は、もっとタチが悪い。
(前世でもそうだった。
理想論を盾にして現場の悲鳴を黙殺する奴らが、一番残酷なのよ。)
バクチはこの領地の虹の広場への出入りを禁じられたが、あくまで「この領地」だけ。
彼はまた別の広場で、同じように人間を酔い潰して笑うのだろう。




