65話 【断罪】自分たちさえ良ければ良い、と振る舞った者達の末路 2
前回の続きです。短いです。
ゴッ!
鈍い音が、静寂に包まれた書斎に響いた。
「っ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ーー!!」
ラルーハ侯爵が痛みで悶え苦しんでいる。
だが、その苦悶の声すらもはや耳障りだった。
早く消えてほしくて、ジュディアは夢中でバールを振り下ろした。
一発、二発、三発…。
もう何回叩きつけたのか、自分でも分からない。
かつて、この家に嫁いだ時に輝いて見えた夫の端正な顔が、鉄の感触とともに無残に形を変えていく。
侯爵は、最初の数発こそ悲鳴を上げたが、やがて言葉を発することのない肉塊へと成り果てた。
「あはっ…、あはははははははは……!」
返り血を浴びたジュディアは、月明かりの中で狂ったように笑い声を上げた。
ドレスはどす黒く汚れ、頬には夫だったものの破片がこびりついている。
自分が信じてきた愛も、プライドも、教育者としての誇りも、すべてはこの男が楽しむための「おままごと」だった。
その事実にケリをつけた瞬間、殴り終えた彼女の頭は、皮肉なほど冷静に澄み渡っていた。
(壊してやった…!
私が完全に壊される前に…私が、全部…壊してやったわ!)
彼女はそのまま、血濡れたバールを握りしめ、ふらふらと廊下へ出た。
もう、後戻りはできない。
道が閉ざされたのなら、自分にとって害となる存在をすべて、この手で消し去ってしまおう。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
騒ぎを聞きつけて集まってきたメイドが、書斎から現れた凄惨な姿に悲鳴を上げた。
だが、ジュディアは容赦しなかった。
ゴッ!
自分を監視していたかもしれない、自分を陰で笑っていたかもしれない。
―――そんな疑念だけで、何の罪もないはずのメイドさえ手にかけた。
真夜中の屋敷、衛兵は外にしか待機しておらず、異変には気づかない。
執事ともすれ違うことなく、ジュディアの足は迷いなく、侯爵の子供たちと後妻たちの眠る部屋へと向かった。
「ふふ…。侯爵、あなたは自分さえ良ければいいと思っていたのでしょう?
私のことなんて、ずっと蔑ろにして…。」
独り言を呟きながら、ジュディアの足は止まらない。
その顔に浮かんでいるのは、破壊者の悦悦とした表情だった。
「次は、あなたたちの番よ…。
私と一緒に、地獄へ行きましょう……。」
血を滴らせるバールを引きずりながら、彼女は一番近い部屋の扉に、その手をかけた。
独り言を呟きながらジュディアの足は止まらない。
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