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「愛や多様性の犠牲者が誰になるか分かってんのか!」悪役顔の公爵令嬢イザベル、綺麗事で国を壊すバカどもを現実でボコす内政改革  作者: 猫目こね
アステリア王立貴族学院編(イザベル十二歳。初等部一年生)

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64話 【断罪】自分たちさえ良ければ良い、と振る舞った者達の末路 1

祝2万PV!日々読んでくださる皆様、ありがとうございます!

そしてブックマークしてくださった方、評価してくださった方、誠にありがとうございます!!


今回はジュディアが怖いので、苦手な方は飛ばしてください。



茫然自失のジュディアを置いて、私とリルは一足先に帰路につくことにした。


公爵邸の自室に戻り、ようやく重いドレスから解放されて一息つくと、リルが淹れたての茶を差し出しながら問いかけてきた。



「あんなに情報を曝け出してしまって、良かったのでしょうか?」



「ええ、問題ないわ。

あれほどの情報を聞いてしまったら、彼女と後妻たちがこの先も操り人形でいるなんて、彼女たちのプライドが許さないでしょう。

そうなれば、私が何か手を下す必要なんてなくなるのよ。

ふふっ、言ったでしょう?

彼女のせいで、彼女も彼女の周りも大変な目に遭う…って。」



「彼女が何か仕出かすのを、分かっていらっしゃるのですか?」



「まぁ…ね。

経験上、ああいうプライドだけがとても高い人って、裏切られた時に激情型の暴走を見せるのよ。」



「イザベル様。経験上…………とは…?」



「あっ、えっと!経験したわけじゃなくて、本よ! 本!

最近、学院の図書室でそういう心理学の本を読んでて…っ!」



(やばいやばい。前世での知識です、なんて口が裂けても言えないもんね…!)



「まあ、ジュディアの動きはノアが監視してくれているのでしょう?

きっと彼女は他の後妻たちを煽って、何か派手なことをしてくれるわ。

私たちは、その報告をまったり待っていればいいのよ。」



(うんうん。

裏切られた女たちが結束して、クズ夫に証拠を突きつけて、自立の道を歩み始める…!

そんなスカッとするハッピーエンドを、私は一応期待してるんだからね?)



…しかし。



この時の私のヌルい予想は、大きく外れることになる。




 ◆




ラルーハ侯爵邸。



イザベルのメイドからは「他の後妻たちと相談するように」と促された。

だが、ジュディアの歪んだ自尊心がそれを拒絶した。




(どうして私があんな女たちに、この貴重な情報を渡さなきゃいけないのよ!

あいつら(後妻たち)と一緒に夫を糾弾するですって?

ふふっ、笑わせないで。

私だけは、あんな使い捨ての女たちとは違う。

私はちゃんと証拠を提示して、あの男(ラルーハ侯爵)よりも優位に立つのよ!)



絶望の底に突き落とされてなお、彼女は自分だけは特別であることに執着した。

リルが教えてくれた『堕胎薬』の証拠。



それが書斎にあるのなら、それを独占して夫と交渉すれば、自分だけは有利な条件を引き出せるはずだ。

そう思ったのだ。

そう思ってしまったのだ。



(そうよ、あの方だって立場が悪くなるのは嫌なはず。

証拠を盾に、今までのことを謝罪させて…。

有利な条件でやり直せばいい。

そうすれば、私はまだ「侯爵夫人」として輝けるわ!)



冷静に、ラルーハ侯爵との対話でどうにかなる。




―――この時の彼女は、本気でそう信じ込んでいた。





 ◆




深夜、静まり返った廊下をジュディアは一人、這うようにして書斎へ向かった。



暗闇の中、震える手で机の引き出しを探り、鍵のかかった一つを見つける。

ジュディアはあらかじめ庭の小屋から持ち出していた小ぶりのバールを、その隙間にねじ込んだ。




ガリッ




嫌な金属音が響き、金具が弾け飛ぶ。

そこには、メイドが言った通り見慣れない小瓶がいくつも並んでいた。



「…っ!見つけた!

この証拠さえあれば、あの男と対等に交渉できる…!」



勝利を確信し、小瓶を掴んだその時だった。



「こんな時間に、私の部屋で何をしているんだい?」



背後からかけられた、あまりに穏やかな声。

そこには、ロウソクの火を揺らしながら、暗がりに佇むラルーハ侯爵の姿があった。



「君がこんな盗人のような真似をするとは…。

一体どうしたんだい?」



「ふんっ…。

普段、私に注意を払っている様子なんて微塵もなかったのに。

あなたこそ、どうして今日は私を構ってくれるのかしら?」



「王宮から帰宅して以来、君の様子がおかしいと使用人から報告を受けてね。

妻を気遣うのは夫の務めだろう?」




どうやら庭の小屋からバールを持ち出すところを、使用人の誰かに見られていたようだ。




「はは…ははは…あははははは……!!

何を今さら!?気にかけているですって!?

なら、これは何よ!?

私たちが妊娠しないように、あなたが飲ませ続けていた『堕胎薬』でしょう!?

私たちのことを、一体何だと思っているの!?」



ラルーハ侯爵の目が一瞬、鋭く細められた。

だが、彼はあくまで余裕を崩さず、なだめるような笑みを浮かべる。



「…まずは落ち着きなさい。

その薬は私自身の常備薬だよ。

堕胎薬だなんて、誰に吹き込まれたんだい?

その薬は私の大切なものなんだ。こちらに渡しなさい。

君は疲れすぎている、今日はもう休むんだ。

続きは明日、ゆっくり話そうじゃないか。」




「そうやっていつも、あなたは私を煙に巻いてきたわね!

子供の話をする時もそう!

はぐらかして、壁を作って、私が踏み込もうとすれば他の(後妻)の元へ逃げて…!

今話さなければ、どうせ明日にはまた私を遠ざける。

この薬を取り上げて、証拠を隠滅するのでしょう!?」



必死の形相で叫ぶジュディアに、ついに侯爵は仮面を脱ぎ捨てた。



「…チッ。面倒な。どこで嗅ぎ付けた!あの愛人の男か!?

今まで通り、何も知らぬまま踊っていれば可愛げもあったものを…。」



吐き捨てられた言葉。

それこそが、彼女が長年尽くしてきた男の本性だった。



「いいか。その愛人は即座に消してやる。

そしてお前は、不貞の罪を着せて修道院送りだ。

世間に公表してやれば、他の妻たちへの良い見せしめになるだろう。

私に逆らえばどうなるか、というな!!」




侯爵は、ジュディアの顔を見ていなかった。

いや、見る価値もない「捨てたも同然の人形」だと思っていたのかもしれない。




―――パリン…と、彼女の中で、最後の糸が切れた。




王妃からの信頼はなく、家族仲も悪く、友人もおらず、教え子(イザベル)には土下座させられ…。

唯一の「帰る場所」だったこの家も、夫も、愛も、子供を授かるという夢も、全てが作られた地獄だった。



今の彼女には、守るべきプライドも、失うべき未来も、何一つ残されていない。

彼女は、所謂、()()()()へと変貌を遂げた。



手に握りしめた、冷たい鉄の感触。

鍵をこじ開けるためのバールに、尋常ならざる力がこもる。



「…ああ……そう………そうなのね…………。」



ジュディアは、虚ろな瞳でラルーハ侯爵を見つめた。







次の瞬間。






ジュディアは、ラルーハ侯爵めがけてバールを振り上げていた。



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