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イザベルの婚約に対する、それぞれの気持ち…。2




学院ではイザベルとまだ再開できていない二人も、婚約の報せを聞いて大きな衝撃を受けていた。




「えっ!? ちょっとエドモン!イザベル様が婚約されたって!」



「えっ!?誰と!?」



声を上げたのは、ハム侯爵家の一件で長男ハレムが廃嫡されたことにより、正当な後継者となったエドモンと、その双子のルーラだ。



「リュシアン殿下よ…。」



「うぇっ…本気か?…本当なら悪夢だ!あり得ない!」



二人は現在、学院の中等部に在籍していることもあり、殿下の噂や人柄については嫌というほど知っていた。


殿下の性格は、控えめに言っても最悪だ。

取り巻きも数人の側近以外は使い捨て。


さらに、王宮にいる家庭教師にゾッコンだという噂も、中等部の間では最早、公然の秘密だった。

殿下の側近たちが「殿下がいかに彼女の美しさを自慢し、心酔しているか」を漏らしているのだから、信憑性は疑いようもない。


他に心に決めた相手がいるというのに、よりによってイザベルと婚約するなど、到底信じたくない話だった。



「そうよね…そうよね…。

あり得ないって思うわよね。でも、本当のことなの。

ああ、学年トップの成績を修めた暁には、胸を張ってイザベル様の教室へ伺おうと思っていたのに…。」


「僕たちが悠長に構えすぎたのかもしれない。

いや、待てよ。

リュシアン殿下は学院で、イザベル様をいじめていたはずだよな?」



殿下がイザベルに嫌がらせを仕掛け、ことごとく返り討ちにあって失敗しているという噂は、二人の耳にも届いていた。

それはよくある『好きな子ほどいじめたい』といった可愛いものではなく、明確に『嫌いな相手を貶めようとする執拗な攻撃』だと判断できる内容だった。



「そうね、その話は有名だわ。

でもどうして、嫌いな相手を婚約者に……?」



エドモンは苦い表情で沈黙した。

だが、すぐにその瞳に暗い色が宿る。



「…………僕らなら、分かるよな。

嫌いだからこそ、手元に置いて虐げたいんだ。」



「あぁ、そういえば、その通りね。

…………イザベル様の身が危ないわ。」



「イザベル様の名声を貶めて、身も心もズタボロにする気なんだよ。

…………かつての、僕たちの親と同じようにね。」




家族から虐げられてきたエドモンとルーラは、身をもって知っていた。



ーーーなぜ両親や兄が、自分たちを家に残し続けていたのか?



それは世間体や、長男の予備(スペア)としての利用価値、あるいは政略結婚の道具にするためだけではない。

自分たちのことが大嫌いだからこそ、手元に置いておいてストレスを発散の道具にしていたのだ。

『何をしてもいい、なぜなら嫌いな奴だから』という、歪んだ支配欲。



だからこそ、二人はリュシアン殿下がイザベルを指名した真意に辿り着いた。

その推測は、悲しいかな、概ね正解だった。



「今度は、僕たちがイザベル様をお守りする番だ。」



「ええ。でも、今の私たちにはまだ何もかもが足りないわ。」



「ルーラ、やろうと思っていた計画を前倒しにしよう。

イザベル様に何が起きても大丈夫なように、僕らができる限りの準備をしておくんだ。」



「ええ、そうね! 婚約破棄にでもなれば一番いいのだけれど…。」



「そうなったら、迷わず僕が新しい婚約者に立候補するよ。」



「当たり前よ!もともとそのために私たちは頑張っているのだから!!」




そう決意を固めるエドモンとルーラの瞳には、もはやイザベルに救われた時の幼さはなかった。


それは、大切な人を守り抜きたいという情熱と、自らの足で運命を切り拓こうとする意志が宿る、力強く熱い眼差しであった。




 ◆



「ねぇアンリ。イザベル様が第一王子と婚約されたわね。」



「あぁ、そうみたいだね。マユ。」



公爵邸の裏方で、二人は至って冷静に言葉を交わしていた。

この二人は、確信しているのだ。



あのイザベルが、何の考えもなしにあのクソ王子との婚約を受け入れるはずがない、と。

そこには必ず明確な理由があり、冷徹な戦略があるはずなのだ。




「イザベル様。次は一体、何を仕掛けるつもりなのかな?」



「さあ? イザベル様は時として破天荒な手を打たれるからね。

僕たちのような凡庸な頭で考えるだけ無駄だよ。

ただ、僕たちがしっかりとサポートしなきゃいけないことだけは確かだ。」



「そうね…。

リルさんとノアさんだけでは…あの方たちは『脳筋』だから心配よね。」



残念ながら、二人はイザベルを過大評価しすぎている。

彼女にそこまで深い策などない。


ただ流れに身を任せ、半ば自暴自棄になりながら「ピンチはチャンス!」と自分に言い聞かせているだけなのだ。

それが「ポジティブシンキング」という名の一時的な現実逃避に過ぎないという事実に、彼らはまだ気づいていない。



だが、そんな勘違いを抱えつつも、彼らが公爵邸の中で最も客観的に状況を判断できている二人であることは、紛れもない事実であった。




 ◆




「あーーーー、やっぱ婚約やだなぁ。面倒だなぁ…………。」




一方その頃、当のイザベルはベッドに突っ伏して、深い溜息を吐き出していた。



(王宮なんて、足を踏み入れるのもやだなぁ。

どうやって潰せばいいんだろ。

相手が大きすぎて、さすがに良い方法が思いつかないやぁ。

うーーーーん…。)



ぐるぐると答えの出ない思考を巡らせること、数分。



「……一旦、寝よ。」





〜〜アンリとマユと、イザベルの小話〜〜


「ねぇ、二人はもうここ(公爵家)で働かなくても暮らしていけるほど稼いでるでしょ?

何でまだいるの?」


「イザベル様の話し相手として、ここにいさせてもらってますから。」


「仕事あるでしょ?

私も学院へ通い始めたし、話し相手になるためだけに公爵家にいるのは大変じゃない?」


「イザベル様が学院へ行かれている間に仕事はすべて済ませていますし、契約内容も『イザベル様が帰宅した際の話し相手』として公爵様に書き換えてもらいました。

ですから、お嬢様とお話しする以外、ここでの仕事はほとんどないんですよ。」


「へぇー……。でも、そのためにわざわざ公爵邸まで来てもらうのは申し訳ないわ。自分たちの好きな場所で、好きなことをしていいのよ?

私、束縛はしないタイプだし。」


「イザベル様の近くにいるのが、一番『最新の情報』が得られますから。」


「それに、僕たちはここの居心地が結構気に入っているんです。」


「私たちはもう、好きな時に好きな場所で、好きなことをしていますよ。

今、こうしてイザベル様のお側にいることも含めて、です。」


「そう…。ならいいんだけど。」


アンリとマユは、公爵家という場所も、そして何よりイザベルのことが、結構、いや、かなり好きなのだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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