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祝1万PVエピソード リルの日常〜重い愛の話〜

百合…百合なのか…?

一応、女性同士の恋愛的要素が苦手な方は飛ばして頂けると幸いです。



ベルドレッド公爵領内にある、ごく普通の一般的な学校。



そこでの私、リル・プランタンは、自分でも呆れるほど「理想的な生徒」を演じていた。



ーーー成績優秀、品行方正。



周囲からは「公爵領に現れた天使」とか「女神の使い」とか「学園初の聖女」などと持て囃されていたが、私にとってはイザベル様にお仕えするのに支障が出ないように振る舞っているだけだった。



だが最近、私の不愉快な噂が流れ始めた。




ヒソヒソ…


「ねぇ…あの子がそうでしょ?」

「えぇ、あんな清楚な見た目して、裏では男性に媚を売っているそうよ。」

「聖女なんて言われてるけど、どちらかといえば魔女ね。」

クスクス…




また一方では…


「ほら、あの子がリル・プランタンよ。

品行方正で誰にでも優しいフリして、男女構わずに体を使って関係を迫ってくるって噂よ。」

「えぇぇ…私あの子と話したことあるんだけど…。そんな子だったの?怖ぁ〜。」




そのまた一方では…


「おい、あいつがそうだぜ。頼んだらタダでヤらせてくれるやつ。」

「お前試しに言ってみろよ。」

「やだよ。だって曲がりなりにも公爵家に仕えている人だろ?公爵家に目を付けられるのは勘弁…。」

「それもそうだな。」





『男に媚びている』『友人の恋人を寝取った』『淫乱売女』。

あまりに下俗で独創性に欠ける噂。


私個人はどうでもいいが、ベルドレッド公爵家の名に泥を塗る行為は看過できない。




私個人で調査した結果、犯人は私を疎む女生徒だった。

捉えて理由を吐かせてみたが、「私の彼があなたのことを美しいって言うから!」と、心底どうでもいい嫉妬。



(本当にくだらない。あなたの彼氏なんて、どこの誰だか知らないのに。)



だが、情報の拡散速度が異常だ。


ノアに頼み、彼の部下たちに女性との背後関係を洗ってもらったところ、彼女が最近、街の占い師に心酔していたことが分かった。

さらに占い師の裏を、徹底的に調べさせたところ…ようやく犯人(元凶)が見つかった。



「……私に一目惚れしたから、私を貶めて、弱ったところを自分が助けてあげる算段だった、ですって?」



黒幕は、とあるドワーフ族の男だった。名をストッカーといった。

ノアの部下たちと共に追い詰めたそいつは、拘束されてなお、脂ぎった顔に歪な笑みを浮かべて言い放った。




「ぼくはリルたん一筋なのに…! リルたんは、ぼくのことを何とも思ってない!

だからぼくは考えたんだ。

どうすればリルたんが、ぼく無しでは生きられなくなるか!」



男は自慢げに、その「計画」の全貌を語り始めた。

孤立させるために操りやすそうな女生徒を選んだこと。

占い師を買収したこと。

その占い師に「リルを貶める噂」を占いのお告げだと言いくるめて、女生徒に流させたこと。



「ちょっと大変だったけど、リルたんのためにぼく頑張ったんだよ! リルたん!」



ーーー心底、吐き気がした。



「…そんな下らないことで私の時間を奪わないで。煩わせてくんな。

社会のゴミが。」



私の氷点下の声にも、ストッカーは怯えるどころか、悦に浸ったように肩を揺らして笑った。



「ふふふ。恥ずかしがらなくていいんだよリルたん。

それにぼくは何をしても、この国では捕まらない。

有名なんだよ?

この国は異種族に『配慮』しすぎて、何をしても無罪になる安全な国だって。

ぼくは君を拉致しなかっただけ、これでも優しい方なんだよ?」



特権に胡坐をかいた、卑怯な確信犯。

ーーー法が、国が、そいつを裁かないというのなら…。



「あぁ、そうね。この国は異種族のストーカーにすら優しい。

嫌になるわ。

…だからこそ、そんな腐った国ごと書き換えるお方に、私は人生を賭して仕えているのよ。」



私はストッカーの言葉を遮るように、渾身の力を込めて足を振り抜いた。

狙いは、その醜悪な笑みを浮かべる顔面一点。




「――消えろ。」




ドゴォッ! という、肉が潰れる鈍い音が響く。


日々の鍛錬で磨き上げたリルの回し蹴りは、防御を固めていないドワーフの巨体を軽々と吹き飛ばし、壁へと叩きつけた。



ストッカーは即死こそしなかったが、顎は砕け、もはや言葉を発することもできないだろう。

だが、肉体的な苦痛など、これから彼を待ち受ける地獄の入り口に過ぎない。



私は冷めた瞳で、転がる肉塊を見下ろしながら、あらかじめ呼んでおいたジンバイを呼び寄せた。



「…この男に誘拐されそうになりましたの。」



先ほどの冷めた瞳と打って変わって、私は目に涙(目薬使用済み)を溜め、潤んだ瞳でジンバイに伝えた。




「な…なんという不届き者ですぞ!!

聖女様に手を出すとは、万っっっ死に値する!!!」




激昂したジンバイは、連れてきていた傭兵に指示し、専用の馬車にストッカーを積み込んだ。

きっと、この男は二度と日光を拝むことはないし、私の生きる世界に現れることはないだろう。




 ◆




「はぁ……。気持ち悪い目に遭ったわ…。」



公爵家にあるメイド部屋の自室。

鏡に映る自分を見る。

この容姿も、才能も、すべてはイザベル様のためにある。



「私には、あの方(イザベル様)以外いらないのよ。

男によって運命を左右されるのは、もう父親だけで懲り懲り。

男なんて、手玉に取って動かしてこそ利用価値があるのよ。」



だから今の彼女(リル)に、女生徒の乙女心は全く理解できなかった。




むしろ私の脳内には今、イザベル様の周囲に蠢く「不要な男たち」のリストが展開されている。



「まずはノア……絶対ダメ。

イザベル様に距離が近すぎるのよ。

有能なのは認めるけれど、側近の座をこれ以上侵食させるわけにはいかないわ。」



私は脳内の名簿に、容赦なくバツ印の線を引いた。



「ハム侯爵家のエドモン……あいつもダメ。

最近何やらイザベル様の婚約者の座を奪おうとルーラと画策しているのは知っているのよ…。

そんなことさせてたまるか!」



エドモンの文字も、怒りを込めて塗りつぶす。



「そしてクレス。あいつは論外ね。

婚約解消したくせに、毎月懲りずに手紙を寄こすなんて。

言葉の端々から漏れ出る不快な『淡い恋心』…反吐が出るわ。地獄に堕ちろ。」



クレスの文字を跡形もなく消し去った。



一人ずつ、脳内の私によって再起不能にされていく想像をする。

思わず、ふふ、と笑みが漏れた。



イザベル様は、私をただのメイドか何かだと思っているのでしょうけれど…。

残念ながら、私の愛はそんなに綺麗なものではないのですよ。



「イザベル様に見合う男性なんて、きっと一生現れない。……いえ、現れさせない。」



誰にも、あの方の隣は譲らない。

あの方が望むなら、私は人々に崇められる聖女にでも、あるいは世界を焼き尽くす魔女にでもなってみせましょう。


「一生、お側でお仕えします。――愛していますわ、イザベル様。」



イザベルが思っている以上に、リルの愛は深く、重く、そして狂気すら孕んだ純潔さに満ちていた。





ノア・エドモン・クレス…そしてイザベル。

それぞれの場所にて同時に


「「「「 さ…寒気が…!! 」」」」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リルの気持ちが届いたのかもしれません。



特別編?リルの日常でした。


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