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43話 クレスとミリィに再会



休み時間。



「メリッサ…。

なんだか私、授業をちゃんと受けるのがアホらしいわ。」



「ははは、同感だよ〜。

まぁ、平民の学校はここまで酷くないはずだよ。

ここは明らかに異質だね。」



隣の席のメリッサが、周囲には決して悟らせない絶妙な音量で答える。



「やっぱりそうよね?

さっきの歴史の授業、異種族の卓越した技術や倫理観の凄さばかりを強調していたわ。

おまけに『過去の戦争は人間が始めたこと。私たちは異種族に償い続けなければならない』ですって…?」



私はこめかみを押さえた。



「私が公爵家の書庫で見た資料には、あの紛争の火種はエルフと獣人の領地争いだったはずよ。

どさくさに紛れてエルフが領土拡大に走ったからこそ、周辺諸国にまで戦火が波及した…。

それが、いつの間にか『人間の罪』に書き換えられているなんて…。」



(そういえば、ハム侯爵領の『虹の広場』にあった学校も、似たような空気を纏っていたわね…。

っていうか、歴史の改ざんが平然と行われているのヤバくない????)



私は溜息を隠さなかった。

教育という名の偏った思想を植え付ける場所。


そんなものを見せられて、真面目にノートを取るほど私はお人好しではない。


そこへ、廊下側から一際大きな喧騒が近づいてきた。




「――イザベル様!

こちらにいらっしゃいましたか!」



現れたのは、見違えるほど凛々しくなったクレス・アルケイデスだった。


二年前の頼りなさは消え、今や高等部でも指折りの実力者として女子生徒たちの視線を釘付けにしている。


その後ろからは、知的な美しさを湛えたミリィ・ケントールが続いていた。



「あら、クレス様、ミリィ様。ごきげんよう。」



「ごきげんよう、イザベル様。

入学早々、とんでもないクラスに入れられたと聞いて、心配しておりましたの。」



ミリィが私の手を取り、温かく微笑む。


彼女はこの二年間、私の言葉を胸に必死に勉強し、今では高等部でもトップクラスの成績を収めている。


その努力の跡は、彼女の自信に満ちた佇まいから一目で分かった。



「…ミリィ、もういいだろう?

イッ、イザベル様…。

もしよろしければ、放課後にお茶でもいかがですか?

積もる話もありますし。」

 


クレスが少し顔を赤くして誘ってきた。


かつての婚約者候補として、彼なりに勇気を出したのだろう。



「ええ、構いませんわ。

メリッサさんも含めて、四人でお茶しましょう。」



私が即答すると、クレスの表情が目に見えてがっかりと落ち込んだ。



(了承したのに落ち込んでる…?何で?)



後ろでミリィが「ぷっ」と吹き出し、笑いを堪えている。



「…ええ、もちろん。四人で、行きましょう。」



 ◆



放課後。


学院近くの落ち着いたカフェで、私たちはテーブルを囲んでいた。


一口紅茶を飲んだミリィが、表情を曇らせて本題を切り出す。



「イザベル様。

お伝えしたいことがありますの。

ケントール子爵領は今、中立派として立ち直ろうとしています。

父、イワン・ケントールが使い物にならなくなった途端、革新派はあっさりと父を切り捨てました。

その代わり私にすり寄って来て…。

でも、私はイザベル様とあの日、現実を見て、孤児たちの姿を見て、真実を知ることが出来ました!

今は、『私は領地の立て直しに邁進しているので』と言って、革新派からは距離を置いてます。

イザベル様。

私、最初の頃は恋に盲目で、酷い態度を取ってしまって、申し訳ございませんでした。

そして、私に真実を教えてくれて、ありがとうございました!」




「ミリィ様…。

恋に盲目な時期は誰にでもあると思うのです。

なので私は、全く気にしてませんわ。

むしろ、今ミリィ様が子爵領の立て直しに奮闘されてるのを知れて、尊敬いたします。

ミリィ様、頑張りましたわね。

今後、何かありましたら、私が出来る範囲のことで手助けいたしますわ。」



私の言葉に、ミリィは深く頷いた。


続いてクレスが、今の学院の深刻な現状を口にする。



「イザベル様。

エルザ様が卒業されてから、学院は変わってしまいました。

生徒会、教師、そして学院長までもが革新派の手に落ちています。

旧体制派というだけで、理不尽な嫌がらせや、成績の不当な操作すら行われているのが現状です…。」



「なるほど。

在学中に旧体制派の子供を徹底的に叩き潰して、革新派に従順な操り人形に作り替える。

そうすれば親が死んで代替わりした瞬間、その領地は自動的に革新派の息がかかったものになる。

はぁ…ここは教育の場ではなく、次世代の領主たちを根こそぎ喰らうための生け簀(いけす)であり、革新派の駒を育てる苗床というわけですか…。」



私の言葉に、クレスが苦々しく頷いた。



「ええ。

卒業する頃には、皆、革新派でなければ生き残れないと刷り込まれてしまうんです。

それが嫌で中退すれば、今度は問題児として社交界から干される。

逃げ場がないんです。」



「反吐が出るほど効率的なシステムですこと。

多様性という綺麗な包装紙で包んで、中身はただの思想の強制…ですわね…。」



私は冷めた紅茶を見つめた。


多様性という耳当たりの良い言葉を隠れ蓑にして、異論を唱える者を組織的に排除し、若者の将来を人質に取る。



(ただただ、ムカつく。

生徒間の分断を煽ってるのがムカつく。

思想誘導してんのもムカつく。

学院長、先生、革新派の息がかかった奴も…全員まとめてムカつく!)



「…ふふ。

ミリィ様、クレス様。私、決めました。」



私は静かにティーカップを置き、最高に優雅で、それでいて底冷えするような、()()()()()()()のような顔つきで笑みを浮かべた。



「この学院を、まともな学院に作り変えてみせます!(――物理的にね!)」



「「えっ!?」」



クレスとミリィの声が重なった。



その頃、メリッサはというと…。


美味しそうにケーキを頬張っていた。



アステリア王立貴族学院は、初等部・中等部・高等部があり、それぞれ2年ずつになります。


なんか顔のリアクション機能もあるんですね?!

押してくださった方がいて気付きました!!

押してくださり、誠に…誠にありがとうございます!!


引き続き、よろしくお願いします。

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