表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/61

36話 ケントール子爵、困惑



私がカバンから契約書を取り出した。その瞬間(とき)



「早くそれを寄越してちょうだい!」



ミリィは焦燥に駆られたのか、私の手から引ったくるように書類をぶん取った。

その拍子に、私の手首に嵌めていた腕輪が彼女の服の袖に引っかかり…。


あら、不思議。

いとも簡単に弾け飛んで、床へ転がった。。



「あ……っ!」



驚愕に目を見開くミリィとクレス。

そう、この腕輪は、彼女に壊させるためにわざと留め具を緩めて仕込んでおいた「撒き餌」。



「あぁ…!お母様からいただいた大切な腕輪が!

肌身離さず付けていた、世界に一つしかない宝物でしたのに…!」



私がわざとらしく、今にも泣き出しそうな声で呟くと、ミリィは顔を真っ赤にして叫ぶ。



「な、なによ!

そんな安っぽい金細工、お父様に言えばすぐに弁償してもらえますのよ!

文句を言わないでくださる!?」



(おい、悲劇のヒロイン設定どこいった?

まるで小物の成金令嬢のようね。

まぁいいわ。

安っぽいですって…? ふふ、よく言ってくれたわ、ミリィ。

あなた、今、自分で自分の首を絞めたのよ?)



私はハンカチで目元を拭うフリをしながら、カバンからもう一通の「鑑定書」を取り出しました。



「弁償…。ええ、そうしていただけると助かります。

ちなみにこちら、王宮お抱えの鑑定士による証明書です。

特殊な魔石と、公爵家お抱えの職人による一点物の加工。

母がくれたものを「安っぽい」と貶された精神的苦痛による慰謝料を含めた賠償額は、奇しくも、ケントール子爵がアルケイデス伯爵に貸し付けている債権と『同等額』になりますの。」



「えっ……? な、何言ってるの…?債権…?」



ミリィが呆然と立ち尽くす横で、私は段取りよくペンを差し出した。



「親が肩代わりできないのであれば、ミリィ様。

あなた自身に公爵家へ奉公に来ていただきます。

一生、働いて返していただくわ。

さぁ、契約書(これ)を。

人身売買の件を他言無用にするためにも、サインをいただけますかしら?」



ミリィは、父が自分を助けてくれると信じて疑っていない。

そもそも、彼女は自分の家が伯爵家にどういう仕打ちを行なっているのか、この惨状を見てもまだ理解できていないだろう。


自分の犯した罪の重さも、壊した物の「本当の価値」も知らぬまま、彼女はただ自分の名誉を守るために署名した。



「ありがとうございます。ミリィ様。

さぁ、場所を移しましょうか。」



私たちはある場所へと向かった。





翌日。


「これはどういうことだ!!」


私とクレス、そしてアルケイデス伯爵が歓談している中、ケントール子爵が伯爵邸に来た。


「どう…とは…?いきなり来て何だね…?」



「この請求書…!この額…!おかしいではないか!イザベル・ベルドレッド!」



矛先はどうやら私らしい。


「あら?文字がお読みになれないのでしょうか?ケントール子爵。

記載してある通りですわ。」



私の言葉にさらに激昂する子爵。



「だから、なぜこんな膨大な金額を、私がお前のような小娘に払わねばならないのか、と聞いているのだ!」



「なぜって…。ミリィ様が私の大事な大事な腕輪を壊したからですが?

鑑定書から高価な物であることは証明済みですし、賠償および精神的苦痛に関する支払命令は、()()()()()()()()()で認められましたが?」



そう、私たちは伯爵領の虹の広場を後にして、その足ですぐにハム侯爵領へ向かった。

侯爵領にいるエドモンとルーラには、事前に根回しをしていたので、迅速に裁判が執り行われた。



(少ししか経ってないけど、二人ともとても優秀なのよね〜。)



なぜハム侯爵領か?

それは、旧体制派でも革新派でもない「中立派」の領地だからこそ、公平な判決であると世間に知らしめるためだ。


公爵領で裁判を行えば「裁判官を買収したのか?」「公爵家の職権乱用だ!」と有りもしない難癖をつけられる可能性があった。

その隙を一切排除した。



(まぁ、子爵が手を回す暇を与えず、公爵家の威光をチラつかせて裁判官に即断させたのは、私の裁量なんだけどね。

裁判官を買収されなければ、子爵家ごときが公爵家に負けることなんてないのよ!

というか、裁判の内容自体、こちらは不正なんてしてないのだから当たり前の結果よ。)



「で、何か請求書に問題点でもありましたか?」



「この額はおかしいだろうと言っているんだ!

そもそも、裁判までの期間が短すぎる!即日などと…あり得ない!

もう一度やり直すべきだ!」



「はぁ…。別にやり直しても構いませんが。

ミリィ様は困るのではないかしら?」



私が指をパチンと鳴らすと、ノアがミリィを連れて部屋に入ってきた。



「なぜお前がここに…!」



「お父様…!早くお金を払ってくださいませ!

お父様、いつも仰っていたではありませんか!

『うちには腐るほど金があって困った困った』って!

早く、三日以内に支払いをしなければ…私の人生は終わってしまうわ…!

うわぁぁぁぁぁぁん!!」



「どっ、どういうことだ?!」



娘のなりふり構わぬ泣き言に、子爵は絶句した。

自分が娘に吹き込んできた「金持ち自慢」が、まさか自分を絞め殺す縄になるとは思ってもみなかっただろう。



おかげさまで、最初の星とブクマをいただけました!!

めちゃくちゃ嬉しいです( ; ; )!

押して下さった方々、誠に…誠にありがとうございます!

引き続き連載頑張ります!


まだブックマーク、お気に入りの、評価を押していらっしゃらない方

押してくださると嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ