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34話 どーちーらーにーしーよーうーかーなー

今日はさっき書き終えたばかりなので、更新時間が遅くなりました…。

更新されてると思って見にきて下さった方がいたら、大変申し訳ありませんでした。



アルケイデス伯爵領の掃除を決心した私は、帰宅後すぐに今日の報告をしに父様の元を訪ねていた。

ちょうどそこには、憔悴しきった様子のアルケイデス伯爵も同席していた。

三人で少しの歓談を挟んだ後、私は本題を切り出した。


「…というわけで、クレス様とは『三ヶ月のお試し婚約』という形をとらせていただきました。」



私の報告に、伯爵は救われたような、それでいて申し訳なさそうな顔で深く頭を下げた。


「公爵令嬢にこのような妥協をさせてしまい、心苦しい…。申し訳ない。」



「いいえ。

それより、アルケイデス伯爵。単刀直入に伺います。

今困っていることを、具体的に教えていただけますか?」



伯爵は言いにくそうに口を開いた。



「目下の悩みは、虹の広場から溢れた異種族による治安悪化です。

隣領のケントール子爵から押し付けられた彼らの管理ができず、領民との衝突が絶えない状況でして…。」



「それだけではないはずですわ。リル、ノアからの調査報告を。」



スッと差し出された書類に目を通し、私は伯爵へ視線を戻した。



「ミリィ様が頻繁に出入りするのを拒めない理由…。

推察はしていましたが、やはり『負債』でしたか。

先代伯爵が、当時のケントール子爵から多額の借入をしていますわね。

今の代になってから暴利を課され、元金が減るどころか膨れ上がっている…と。」



「そこまでお調べになっておられるとは…!

その通りです。

先代同士は爵位を超えた友情で結ばれていましたが、現子爵のイワン・ケントール、奴は違う。

奴は金の亡者なのです。

借金は鉱山開発の失敗によるものですが、今やそれが弱みとなり、私は奴の言いなりになるしかない。

逆らえば爵位と領地を返上させられ、元プランタン男爵と同じ末路を辿ることになるでしょう。」



「ミリィ様とクレス様が結婚なされば、借金は相殺されないのですか?」



「ケントール子爵はそんな甘い考えは持っていません。

むしろ、『大事な娘をやるのだから結納金を寄越せ』と言ってくるでしょう。

私は奴の性格を学生時代に見抜けなかった…。

この状況を作ってしまった自分に対し、情けなくて腹が立って仕方がないのです…。」



「心中お察しいたしますわ。

…ところで、その利子の件、司法(裁判所)には相談されたのでしょうか?」



「はい…。

裁判は爵位が上で原告である私が住まうこの伯爵領で行われました。

暴利の証拠である当時の契約書も揃っていた。

……にもかかわらず、裁判官は私の敗訴を言い渡したのです。」




(やっぱり買収済みか〜。)

「おかしいですわね。」



私が短く返すと、伯爵は力なく首を振った。



「そうです。

ですが、もはや抗う術もなく、返済を待ってもらう代わりに子爵の不当な要求を飲むしかありません。

さもなければ、爵位と領地の返上は待ったなしです。

行先は、元プランタン男爵と同じになります。」



元男爵領という言葉が出た瞬間、後ろに控えていたリルの肩がピクッと動いた。



「とりあえず、私とクレス様の婚約が『期間限定』であることは、当事者以外には伏せておきましょう。

子爵とミリィ様がどう出るか、まずは静観します。

公爵家が後ろ盾になった以上、これからは子爵も迂闊な手出しはできなくなるはずですわ。

今いる異種族をすぐに排除するのは難しくとも、これから流入してくる人数は確実に減らせます。」



伯爵は、まるで救世主にでも会ったかのような表情で震えていた。


その会話を父様は黙って聞いていたが、私が部屋を辞そうとした時、背後でボソッと、地を這うような低い声が聞こえた。



「……小僧(クレス)め。私の娘と婚約しておきながら、別の女(ミリィ)と仲睦まじくしていたのか。」



氷点下の殺気が部屋に満ちた気がしたが、私は聞こえなかったフリをして、そのまま優雅に部屋を後にした。







一通り話し終えた私は、自室に戻り、リルとノアと話し合うことにした。



「とりあえず、公爵家が後ろ盾になることで、新規の異種族流入は抑えられるはず。

でも、すでに領内に入り込んでしまった者を取り除くのには苦労しそう…。はぁぁ…。」



思わずため息が出てしまった。



「一日三人ずつ消していくのはどうですか?」



ノアがいう。



「いやー流石にそれは…。十人くらい消えただけで問題になりそう…。」


「私は…。

伯爵家が、私の元男爵領のようになるのは見ていられません。

今、自分にできることを精一杯頑張ります!

なので、イザベル様。何でも仰ってください!」



リルの言葉には、かつての悲劇を繰り返させまいという強い決意が籠もっていた。



「そうよね…ここが踏ん張り時よね。ノア、情報を整理しましょう。」



ノアが集めてきた書類には、伯爵の借金以外にも生々しい人間模様が記されていた。



ーーーーーーーーーーーーーーー


【イワン・ケントール子爵】


同年代のアルケイデス伯爵に対し、激しい「爵位コンプレックス」を抱いている。

伯爵の方が容姿に恵まれていることも、彼の劣等感を加速させている一因のようだ。

学生時代、想い人に告白するも「アルケイデス伯爵が好きだから」と断られた苦い過去を持つ。

また、座学ではイワンが勝っていたものの、武力・体力では一度も勝てたことがない。



【ミリィ・ケントール】


クレスに執心しており、父親が持ってくる革新派派閥との縁談をすべて蹴り飛ばしていた。

尚、本人は派閥に関して無頓着。

子爵は娘の身勝手に頭を抱えていたが、クレスと公爵令嬢()の婚約が耳に入ったことで、逆に「ミリィをクレスと結婚させ、公爵家と婚姻を断固阻止してやる!」という変な方向に火がついたようだ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


(中立派が旧体制派の筆頭であるベルドレッド公爵家と結びつく…。

隣領の子爵にしてみれば、自分がどうなるか分かったものじゃないものね。

必死になるわけだわー。)



「ミリィ様は、父親の後押しを得てルンルンでしょうね。

それなのに、私がクレス様と『期間限定』とはいえ婚約した。

今後、どう動くか見物ね。」



「どうせ碌なことにならないですよ。さっさと()ってしまいましょう。その娘。」


ノアがまた物騒なことを言った。



「冗談はさておき、ミリィ様のあの様子。

きっと自領のことも、伯爵領の窮状も、何も知らないのでしょうね。

子爵も、娘には綺麗な部分しか見せていない…。

あるいは、彼女自身が理解したくないのか、理解できないのか…。」



リルがはっとして言った。


「クレス様は実直なお方ですから、世情を知らずに甘えているミリィ様のことをどう思われるのでしょう。」



「ふふ。どう思うのかしらね。

さて、子爵とミリィ様。どーちーらーにーしーよーうーかーなー…。」



「あ、そういえばミリィ嬢の情報、まだありますよ。」



私がノリノリでどちらにしようか選んでいたら、ノアが私の目の前に追加の報告書を差し出してきた。



そこには、彼女の「純粋さ」が招いた、致命的な綻びが記されていた。



(……あぁ、きーーーめた。)



私は不敵な笑みを浮かべ、手元の書類を机の上に置いた。



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