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ある日の出来事〜実は裁判所があるんです〜

今日は風邪っぽくて、本編書く気力がなく…。

リル視点のお話を書いてみました。読んでいただけたら嬉しいです。



私はイザベル様に仕えているリルと申します。


イザベル様は、私の復讐をしてくださっただけでなく、母の面倒や叔父の商会も気にかけてくださってます。

返しきれない恩をイザベル様にいただきました。


今日は、そんな私とイザベル様の、ある日の出来事をご紹介しますね。





そう、あれは私と、ノア、アンリ、マユが揃っていた日のことでした。

アンリがふと、「なぜイザベル様は、悪人を司法で裁こうとしないのでしょうか?」と疑問を口にしたのが始まりでした。



「あら?司法で裁くことも、もちろん推奨しているわよ?」



「「「「えっ?!」」」」



私とノア、アンリ、マユの声が揃いました。


私たちが見る限り、イザベル様の解決策は「ノアによる尋問と脅迫」か「ジンバイによる処理」がほとんどだったからです。

最近ではアンリとマユによる社会的制裁も加わりましたが……。



「なによ。私は暗殺家業でも人身売買を生業としているわけではないのよ?

人を何だと思っているのかしら?

どこからどう見ても、私はまだまだ可愛らしい子供でしょうに。

…。

良い機会だから、皆でお出かけしましょうか。

ついてらっしゃい。」



イザベル様はそう仰ると、私たちを伴ってある場所へ向かいました。




そこはベルドレッド公爵領に唯一存在する【裁判所】でした。

裁判所は各領地に一つ、あとは王都に『最高裁判所』があるのみ。

傍聴できるのは貴族か、大金を積んだ物見客だけだそうです。



「裁判所は機能していないわけではないの。

ただ、実態がどうなっているか……。

それは見た方が早いわね。」



イザベル様は公爵家の紋章が入った懐中時計を入り口の衛兵に見せて、中に入っていきました。



ちょうど行われていたのは、ある商人が「異種族に商品を盗まれた」と訴えている裁判でした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うちの商品が盗まれるところを見たんだ!

証人もたくさんいる!

盗んですぐに、別のところに売ったんだ!

そもそも、虹の広場の外に何で異種族がいるんだ!」



原告の男性が悲痛な声を上げます。

対する被告は、ヤギのような顔をした獣人でした。



「私は獣人なので、人間の文化が分からなかった。

今の発言、とても傷ついた。

貴方は異種族を差別しているのか?」



そこからは平行線の押し問答。

やがて、裁判官が冷淡に判決を言い渡しました。



「  判決  被告は無罪!

本来、公爵領では虹の広場以外での活動は禁じられているが、今回は誤って外に出てしまったものと認められる。

また、異種族の文化は人間とは異なる。

原告の差別的発言により、被害は相殺とする。

   以上  閉廷!」



「くそ! なんでだ!! こんなことがあっていいのか!?

くそっ、くっそおおおお!!」



泣き崩れる原告。

それを見つめるヤギの獣人の口元が、一瞬、ニヤリと歪んだのを私は見逃しませんでした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「どうだった?」


建物の外へ出たところで、イザベル様が問いかけ、アンリが答えます。


「異種族を裁判で訴えることはできる…。

ですが、この判決はあまりに異種族を優遇しすぎていませんか?

公爵閣下は何も仰らないのでしょうか…?」



「そうね……。

お父様も思うところはあるでしょうけど、貴族は司法に口を出せない建前なのよ。

旧体制派は律儀にそれを守っているわ。

逆に革新派は、お金を積んで身内を無罪にしたり、量刑を軽くしたりと手を回している。

だから、公爵領では警備隊を配備して未然に防ごうとしているのだけど…。

どんなに頑張っても、どこかから湧いてくるのよねぇ…。」



「ま、まるで家に出てくる黒い影(G)のような…!!」


私は怯えて言いました。

何を隠そう、私は虫が苦手なのです。



「フフ、そうね。」


可愛らしく微笑むイザベル様でしたが、その瞳は曇ったままでした。



「じゃあ、私が異種族や特権階級を残らず掃除すれば(消せば)いいんじゃないですか?」


ノアが物騒な提案をしましたが、イザベル様は首を振りました。



「キリがないのよ。

それに、公爵領だけ異様に異種族が消えれば『なぜだ?』と目をつけられてしまうわ。

特権階級っていうのは、妙に鼻が効くのよ…。

今はまだ私たちには、そんな大それたことをする力はないの。

だから私は、悪逆非道を超えた者たち、かつ消えても問題にならなさそうな無法者に絞って、ノアに仕事を頼んでいるのよ。」



「では、こうした不当な判決を新聞で世に知らしめるのはどうですか?」


マユが提案しました。



「良い考えね。

でも、裁判所は特権階級の聖域。

証拠もなしに報じても、信じる人は少ないでしょう。

司法も貴族も、ほとんどは腐った連中よ。

だからと言って、自分たちの汚職や汚点が噂されようものなら、どこかから嗅ぎつけて私たちを消しにかかってくるでしょうね。

平民に知られたところで痛くも痒くもないけど、敵対する貴族に知られるのは避けたいでしょうから。

…。

私にあなたたちを守れる強さがあれば…押し通せる権力があれば良いのだけどね…。

今は証拠を残しておくのが精一杯。

でも、いつか白日の元に晒して、国民がちゃんと知る必要があると思うわ。

けど、それは今ではないの。」



イザベル様のお考えを聞き、私たちは皆、深く納得しました。



帰り道、私は考えていました。

この国は、いつからこれほど腐ってしまったのか。


特権階級の人間が私利私欲に走り、国を大切にすることをやめてしまった。

それは分かりました。



ーーーけれど。

特権階級の人間だけで、ここまで異種族の横暴が蔓延するものだろうか?



なぜわざわざ異種族を国に招く必要があるのか?

なぜ異種族を優遇する必要があるのか?

なぜ『人間の国』で『人間だけ』が冷遇されなければならないのか?

なぜ人間であるはずの貴族や王が、異種族に加担しているのか?




…もしかして、特権階級の中に、『人間ではない者』が紛れているのでは――?





…いや、そんなはずはありません。

きっと考えすぎでしょう。


私はその机上の空論を、心の中に仕舞い込みました。





何にせよ、今日はイザベル様の戦う理由をより深く知ることができました。


「イザベル様のことがもっと知れた。

今日はとても素敵な日だったわ。」


私は明日からも、イザベル様に忠実なメイドとして、全身全霊でお仕えすることを誓うのでした。



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