27話 双子の現状と決心
カフェテリアの個室。
私は急に呼び出した非礼を二人に詫び、対話を始めた。
「自己紹介が遅れました。ルーラと申します。ルーラ・ハムです。」
「僕はエドモン・ハムです。僕たちは双子で、十二歳になります。」
俯きがちに名乗る二人。
「ルーラさん。エドモンさん。ね。
よろしくお願いいたします。
単刀直入にお伺いしますが、ご兄弟の仲があまりよろしくないのですか?」
最初に話し始めてくれたのは、ルーラだった。
「…。そうですね。
私たちは父、ハム侯爵の…庶子です…。
そのため、兄は私たちのことを認めていません。
それどころかゴミ同然の扱いです。」
「そりゃもう、酷いですよ!
家では下働き、学校でも掃除や面倒な雑用を全て押し付けられて…!」
エドモンが堰を切ったように話し始めた。
「人間であれば皆、ゴミ拾いや授業後の清掃活動は義務になっていますが、僕たちは学校周辺の掃除や、イベント事の準備など…。
あっ、教員の授業の準備や、備品の管理もですね。
なので、勉強する暇はほとんどないほどです…。」
「それは…。もう労働と言っても差し支えないような…。」
「そうですよね…。
でも、もちろん無給です。」
「お父様は助けてくれませんの?お母様は?」
「父は…。兄と同じような感じですね。
母は三年前に亡くなりました。」
ルーラの言葉で会話が止まったので、私は思い切って二人に問う。
「…あなたたちは、今の生活に満足していますの?」
「満足なんて……っ! 逃げられるなら今すぐ逃げたい!
家族どころか使用人にまで邪険にされて、学校では勉強も、友達作りもできないんです!
兄がいる限り、絶対に……!」
エドモンが強く主張し、ルーラは無言だが「その通り」と言っている雰囲気だった。
「そう…。では、あなたたちに選択肢を与えますわ。」
私は口角を最大に吊り上げた。
「『このままゴミとして朽ちる』か、『あなたたちが侯爵家を乗っ取る』か。
どちらがいいかしら?」
沈黙が流れた。
二人はきっと、そんなこと考えたことがなかったであろう。
なぜなら彼らは 庶子 だから。
(でも、私の権力で今ならどうとでもできる。
まぁ、多少無理はするかもしれないけれど…。)
数分後、震える声でエドモンが叫んだ。
「僕はっ! このままは嫌だっ!」
「エドモン…。私だって嫌よ。
でも…、乗っ取るなんて不可能だわ…。」
「ええ、『今すぐ』は無理ね。
けど、あなたたちが『将来』、本当の意味で侯爵になれるように、私が力を貸して差し上げましょう。
ただし…。あなたたちは私に何をくれるのかしら?」
二人の瞳に、一筋の希望が灯る。
回答は、先ほどよりも速かった。
「イザベル様。この生き地獄を変えていただけるなら…!
私たちに、お力をお貸しください!」
「僕たちは、あなたに忠誠を誓います。
現状を変えられるなら、何だってするつもりです!」
「いい返事ね。では明日から準備を始めましょう。
時間はあまりないわ。
そうね……二日後には変えてしまいましょう。
あなたたちの『将来』をね。」
私は悪役令嬢さながらの、最高に「邪悪で美しい」笑顔を振りまいた。
正直に言えば、二人の待遇は同情に値するが、貴族社会では「よくある不幸」に過ぎない。
本来なら、私がわざわざ手を貸す義理もメリットもないはずなのだ。
私が手を差し伸べる真の理由は別にある。
(侯爵家を掌握すれば、虹の広場と、この『パラダイス学園』にも直接メスが入れられる。
二週間後には次の婚約者候補との顔合わせもあるし、さっさと片付けなくちゃね。)
人間に義務(清掃・納税)を押し付け、異種族に権利(無料食堂・優遇)だけを与えていると、そのうち『もっと』『あれもこれも』となるのだ。
この「逆差別」の毒が領地全体を蝕み、やがて国を壊す前に、根源から断つ必要がある。
(たった一つの領地。けれど絶対無視はできない。
私の小さな体と大きな権力を使って、徹底的にぶっ壊したる!!)
あぁ、そうだ。
大事なことを忘れるところだった。
(ハレムがウザい!だからぶっ潰ーーーーーーす!!!!!)
私は心の中で、今日一番の叫びを上げた。
ルーラが「私」
エドモンが「僕」です。
一応、ルーラが姉でエドモンが弟です。




