26話 異種族への優遇 2
食堂へ行くと、多くの異種族がいた。
先ほどのクラスとは別のグループらしい。
だが、メニューを見て絶句した。
並んでいるのは、これでもかというほど野菜ばかりだ。
そこにハレムがやってきて、得意げに胸を張った。
「どうして野菜ばかりなのかって?
なんだ、知らないのかい。
エルフは肉を食べないんだよ。
希少種のエルフのために、この食堂に肉は置かない。それがルールさ!」
「えっ…? でもエルフはこの学園に数えるほどしかいませんよね?
獣人や魔族の方々はお肉を召し上がりますでしょう?」
「人数は関係ないだろう!
数は少なくとも、エルフはこの学園にいるんだ。
配慮するのは当然のことさ。
他の異種族は肉を持参する手間がある代わりに、食堂の野菜は無料で食べ放題。
多様性を尊重できている、素晴らしい学園だろう?」
「……人間はどうしているのですか?」
「ん?もちろん有料だよ。
彼らはここに住んでいるけれど、異種族は遠くから足を運んで来てくれているからね。
もてなすことが第一。
ここに通う者は皆そう思っているよ!」
「…………。
そう、なんですね。スバラシイデスネ。」
一瞬、空いた口が塞がらなかった。
この学園は、地元の人間が納めた税金で、異種族を贅沢にもてなすための『配慮』。
…という名の『優遇』。
…いや、『逆差別』をしているとは思っていなかった。
食堂を後にしても、心は一向に休まらない。
廊下を歩いていると、目の前で獣人の生徒が鼻歌まじりにゴミを放り捨てた。
「ちょっとそこの方。落としましたよ?」
リルが張り付いたような笑顔で指差したが、その生徒は「はぁ?」と鼻で笑って去っていった。
「「はぁっ・・・?!」」
私とリルの声が重なる。
リルの指先が怒りでピクリと動いたその時、二人の人間の生徒がそそくさと現れ、そのゴミを拾い始めた。
「あなたたち。
なぜ彼が捨てたゴミを拾うのですか?
本人に片付けさせればよろしいでしょう?」
私が声をかけると、二人は飛び上がらんばかりに驚いた。
よく見ると、顔立ちが似ている。
双子の男女だ。
誰かに似ているような気がするけれど…。
「ここでは…異種族には『掃除』という文化がないらしく、授業を受けるだけで精一杯だろうということもあり、人間が全てサポートするように言われているんです。
ハム侯爵が直々に…。」
「はぁ!? !?」
可憐な令嬢の仮面を忘れ、食い入るように聞いたその時、不愉快な声が遮った。
「おい! お前ら! ゴミがなぜイザベル様の前に立っているんだ!」
ハレムだ。
「こいつらは私の愚弟と愚妹です。
父上の慈悲で通わせてやっている、卑しい庶子ですよ。」
二人の顔が、屈辱に陰る。
「…そうですの。ご事情があるようですわね。
お邪魔してすみませんでしたわ。」
二人を冷たく突き放し、私は二人をハレムから引き離した。
私は生徒に紛れていたノアを捉え、アイコンタクトで伝えた。
「――あとで、あの二人を確保して。」と。
(双子の弟と妹がいることは知っていたけれど…この扱い。
これは是非、詳しく聞かせてもらおうかしら。)
放課後。私はハレムの目を盗み、個室のあるカフェテリアにその二人を呼び出した。




