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20話 孤児院に来てみた。仲間を増やした。



ーーー元男爵領から公爵領の本邸に戻って。



リルが「汚いお金は自分の懐に入れたくない」と言って私に差し出してきた、エルフを売ったお金。

私はそれを使い、領内の孤児院へ寄付という名の「投資」を始めることにした。



私とリルとノア、そして数名の護衛を伴い孤児院へ向かった。

孤児院は質素だが、掃除が行き届いていて綺麗だった。


この孤児院には、約三十人の子供たちがいた。


彼らは近隣の領地から流れてきた子も多く、その事情は凄惨だった。

虹の広場で親を亡くした子。

怪しい薬で壊れた親に捨てられた子。

異種族とのハーフとして生まれた子。


(子供たちは将来、国を担う人材。

それは貴族だろうが孤児だろうが関係ない。

ただ、貴族は能力がない奴に権力が付随する場合があるから面倒なのよね……)


その点、孤児はしがらみが少なく、教育による「思想の最適化」がしやすい。



「ねぇねぇ!お姉ちゃんたち何しにきたの?!」

「僕と遊んでくれる?!」


無邪気に笑う子供たちを見て、微笑ましさと同時に、モヤモヤした気持ちが湧いて出てくる。

大人の失政の尻拭いをさせられるのは、いつだって社会的弱者(こども)だ。



私はリルとノアに子供たちと遊ぶよう指示し、自分は孤児たちの中から、賢い子は誰かとシスターに聞いた。


何人か集まってもらったので、色々質問していって、残ったのは二人。

際立って聡明なのは、九歳の男の子・アンリと十一歳の女の子・マユというらしい。


私はその二人を公爵家に招待した。


「わぁ…。」


豪奢な公爵邸を見上げ、マユが思わず声を漏らす。

一方のアンリは寡黙だが、その瞳には驚きと警戒が同居していた。


「二人とも。うちで働きながら、私と一緒に勉強しませんか?」


「えっ……!」


私の提案に、二人は顔を見合わせた。



「シスターに聞いたわ。

あなた二人はとても聡明なのだと。

二人の力を私に貸して欲しいの。

私はね、ここだけの話、虹の広場をよく思っていないの。


あなたたちの親も、虹の広場や異種族によって()()()()()()しまったのよね…。

私は、あなたたちみたいな孤児(犠牲者)を増やしたくないの…。」


私は情に訴えかけ、彼らの反応を観察した。


「シスターから、親のことも聞いたんですね。」


アンリが口を開いた。


「確かに、俺の親は虹の広場で異種族との喧嘩して、運悪く床に頭を打ち付けて亡くなりましたが…。

でも、それは事故だと聞きました。」


「そう…。

そうやって大人たちはあなたたちを欺いているのね…。

その話が嘘だとは断定できないけれど…、マユさんは疑っていたんじゃないかしら?」


私のその言葉にマユが驚く。


「……そう、ですね…。

私の親は、母だけで…。

体が弱かったけれど私のために必死に働いてくれていました。

それなのに、虹の広場で手に入る『薬』を飲んでから、幻覚と話し出すようになって……。

最後は私のことも認識できなくなりました。

イザベル様が思うように、私も、大人が言うような『綺麗な場所』だとは思えませんでした…。」



「二人とも、やっぱり聡明ね。

マユさんのように疑うことは大切だし、アンリさんのように安易に私の言葉に流されないことも大事よ。

だからこそ、ここで私と一緒に学び、この領地を守る力を貸してくれないかしら?」


私はアンリとマユに改めてお願いした。


「私は……、こんな機会、きっと今後ないだろうし、何より今何が起きているのか知りたい。

そのための知識や、貴族社会の常識も知っておきたい。

なので、私は公爵家(ここ)に残って色々教えてください!」


マユは決めたようだ。


アンリも少し悩み……、静かに続けた。


「正直、僕に何ができるか分かりません。

でも、マユの言う通り、色んなことを学んで、自分で何が起こったのかを知りたいと思います。

だから僕もお世話になります。

よろしくお願いします。」


「そう!よかったわ!

改めまして、私はイザベルよ。

これからよろしくお願いしますね!」


私は笑顔で二人を迎えた。




それから、二人は公爵家で下働きをしながら、公爵家の図書室も使いながら猛烈に勉強した。

下働きを通じて、貴族とは何なのか、どのような所作が必要なのか……聡明な彼らなら、教えずともその意図を汲み取ってくれるだろう。


空いた時間、私は彼らに歴史や経済、そしてなぜこの国が今、崩壊に向かっているのかを教えた。

その生きた事例として、リルとノアの本人たちの口から、実際に何があったのかを伝えてもらった。



かつて絶望の淵にいた二人の告白を聞いて、アンリとマユが何を思い、感じたか。

それはあえて聞かなくても、二人が以前よりもいっそう熱心に仕事と勉強に打ち込むようになった姿から、十分に察することができた。



ちなみに、家族には「年の近い子と交流する練習よ」と言いくるめてある。


(少しずつ、味方を増やしていこう。

扱いにくい大人ではなく、まだその思想に染まりきっていない子供たちからね。

さあ、教育の成果が出るまで、じっくりと腰を据えましょうか。)



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