15話 まずは拷…尋問しよう
ちょっとだけグロ注意です。
苦手な方は飛ばしてください。
まず、今回のターゲットは、ノアの妹が消えた服屋の店主ジンバイ。
ノアの調査によれば、彼は『虹の広場』ではなく元男爵領内に、不自然なほど立派な屋敷を構えていた。
店主なのに、護衛も雇っているようだ。
ノアは何度か潜入したが、彼をただ殺すだけではその背後にある「闇のネットワーク」まで辿り着けない。
「一人で忍び込めるなら、話は早いわ。
それなら、こういう作戦にしない?」
作戦を二人に伝え、私は一人、宿屋の私室で悪役令嬢らしく口角を上げた。
私は公爵令嬢なので、護衛の目もあり、深夜に直接現場へ向かうことはできない。
そもそも、私の護衛すら完全に味方とは限らないのだ。
だから、現場の全権はノアとリルに託した。
◆
その夜。
屋敷の寝室で眠るジンバイの天井裏には、ノアとリルの姿があった。
リルが用意した『よく眠れる香』を部屋に充満させる。
その効果は絶大で、ジンバイはさらに深い眠りにつき、外で警備していた男たちも睡魔に抗えず意識を朦朧とさせていた。
二人は音もなく降り立ち、ジンバイの口に追い睡眠薬を流し込む。
仮に目を覚ましても悲鳴を上げられぬよう猿ぐつわを噛ませ、目隠しをし、手足を厳重に縛り上げた。
無防備な警備員たちを尻目に、ジンバイを運び出すのは容易なことだった。
連行先は、かつてリルが暮らした元男爵家の地下尋問室。
今は誰も住まぬ空き家。
そこは、誰にも邪魔されずに拷…尋問を行うには最高の場所だった。
冷たい水を浴びせられ、ジンバイは意識を取り戻した。
「つ、冷たい……! む!? 誰だ貴様は!」
ジンバイが喚く。
「私の顔、見覚えありますか?」
ノアが質問した。
「貴様など知らん! 早くここから解放しろ!
警備隊長は私の友人なんだぞ! すぐに貴様をひっ捕らえてやる!」
「へぇ。
隊長とお友達とは……それは知らなかったなぁ。
まあ、そんなこと今はいいんです。
…お前、子供たちをエルフに売っているな?」
ノアの声が一段低くなった。
「何のことだ! 私は知らん!」
往生際の悪い答えに、ノアは迷わず動いた。
ガシッ、とジンバイの頭を掴み、すぐ側にあった樽の水の中へ叩き込んだ。
「ブハッ……な、何を……!」
「お前に今人権があると思うなよ。
いいか、お前が関係ない言葉を口にするたびに水の中だ。
お前は俺の質問にだけ答えてればいい。」
ノアの口調は、感情が昂るにつれ、私から「俺」へと変わる。
「お前はエルフに子供を売ったな?」
「ブハッ……は、は……い……。
もうやめっ……。」
バシャッ! また頭から樽へダイブさせられ、引き上げられる。
「エルフを含めた、お前の『お得意様』の名を、一人残らず吐け。」
ノアの低く冷え切った声が響く。
ジンバイは鼻から水を噴き出し、震えながら首を振った。
「い、言えん! 言ったら俺が消される!
あいつらは人間を『モノ』としか思っていないんだ、俺だって……!」
「へぇ。自分の命は惜しいんだな。
じゃあ、拷問されてもお前は『言えない』って言うのか試してみようか?」
ノアの手が、ジンバイの右手の爪を掴み、一気に剥がした。
地下室に、豚が屠殺される時のような無惨な絶叫が響き渡る。
「ギャァァァァァァァァァァァァァ!!!!!
い、言う……! だからやめてくれ!!」
「お前、誰に向かって命令してんだよ。」
ノアはキレているのだろう。
迷わずもう一本の爪を剥がした。
「ウギャァァァァァァァァァァァァァ!!!!!
ま…待って…ください…い、言わせて…ください…。」
一度決壊すれば、あとは早かった。
ジンバイは痛みに極端に弱かった。
息を切らし、涙と鼻水にまみれながら、呪文のように白状し始めた。
「ハァ……ハァッ……
べ、ベルナルド・ロリーコンという…、王都から来ている…エルフです…。」
ベルナルドを筆頭にしたエルフの名。
そしてそれを見逃している役人の名。
その中には、自慢していた「友人」の警備隊長と、複数の隊員の名前もしっかりと含まれていた。
「それで全部か?
まだ隠していることがあるんじゃないのか?」
ノアが二本目の爪に手をかけると、ジンバイは狂ったように叫んだ。
「な、ない……! 本当だ……!
ハァ、ハァ……帳簿だ……。
私の屋敷の地下にワインセラーがある。
右から二番目の棚、上から三段目のワインにランダムに入れてある……!
そこに取引記録と役人のサインがある!
もう……解放してください……お願いします……!」
「そうか。分かった。
もう解放してやるよ。」
復讐の焔を瞳に宿したノアが、無慈悲に、ジンバイへ最後の一撃を加えようと手を振り上げた。
「――もうやめて……!」
鋭い制止の声。
そこに立っていたのは、リルだった。




