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13話 ノアの復讐心

少しグロめで書いてますので、苦手な方は飛ばしてお読みください。



「…だいたい、一年前のことです。

私は妹を連れ、『虹の広場』へ遊びに行きました。」


ノアは、絞り出すような声で語り始めた。


当時、妹は十二歳。

男爵領に新しくできたばかりの虹の広場は、異種族の文化が混ざり合い、一見すれば賑やかで楽しい夢のような場所に思え、妹は行ってみたいとノアに頼んできた。

親も「お兄ちゃんと一緒なら」と送り出した。


「ドワーフやエルフ、それに獣人も。

見たこともない種族や店が並んで、最初は妹も喜んでいたんです。

……ある服屋を見つけるまでは。」


可愛らしい服が並ぶ店。

妹が「これ!着てみたいなぁ〜!」と笑顔で言うので、試着できるか店主に聞こうとした。

その店には今思えば不思議なことに、店に人が()()()()誰も見当たらなかった。

店内の角に『試着してみて!』という看板が掛けてある小さな個室があったので、そこで試しに来てみるよう促した。

…それが、ノアが最後に見た、まともな妹の姿だった。


「…出て、こなかったんだ………。

服を着るのに時間はそうかからないのに、しばらくしても出てこない。

変だと思い声をかけたが、返事はない。

何か起きたのかと思い、声をかけてから扉をこじ開けたら、妹はそこにいなかったんだ。

私は焦って店の奥にある扉を開け、そこにいた店の者と思しき奴に詰め寄ったが、冷たい目でこう言いやがった。

『そんな娘、最初から店に入ってきていない』と。」


いつの間にかノアの口調が乱れている。

思い出して、心に余裕が無くなっているのだ。



後から知ったが、店の者は店主だった。


ノアの拳が、みしりと音を立てて震える。

警備隊に泣きつこうが、周囲の大人に訴えようが、店主は一点張り。

それどころか、警備隊は店主の証言を優先した。

異種族の権利が過剰に守られる虹の広場の中では、店内の捜索すら許されなかったのだ。


「…一週間。

親と一緒に、毎日毎日広場を探し回ったよ。

そうしたら見つかったんだ…広場の裏にある廃棄場でな。

ゴミと一緒に、ボロボロにされて捨てられていた。」


妹は、かろうじてだが生きてはいた。


「妹の細い指は、本来曲がる方向とは逆に曲がって、爪はすべて剥がれていた。

手足の皮膚は、ところどころ綺麗に四角く切り取られていた。

妹の顔は、歯が全て無くなって、口は…何かを無理やり入れられたかのような裂け方だった。

目は…もう世界が見えないだろう…。

鼻は削がれ耳は片方失われていた。

あんなにサラサラだった髪も…乱暴に毟り取られたような跡だった。」


そして、親が言うには妹の純潔も失われていたということだった。


「もう、人間がするようなこととは思えなかった!

俺は…妹を連れて行くべきじゃなかった…。

俺は…それから懺悔の日々と、復讐のために生きると心に誓ったんだ…!」


妹との意思疎通はもうできない。

かろうじて残っていた耳の付け根のホクロがなければ、それが妹であると判別することすら困難なほど、妹は『肉塊』に変えられていた。


それからノアは、妹がなぜ消えて、誰が、なぜこんな目に遭わせたのかを調べ抜いた。


まず調べて分かったことは、件の服屋はエルフに人間の子供を融通するための仲介所だったのだ。


「エルフの文化では……人間はゴミのように扱っていいのが『普通』らしい…。

特に好まれるのが人間の子ども。さらに女の子が一番人気なんだと…。

エルフがこんな危ない奴だなんて、調べて初めて知ったよ。

当たり前だよな。

情報が出ないように徹底しているみたいだったからな。」


吐き捨てるノアの瞳には、真っ黒な、底なしの憎悪が宿っていた。

不甲斐なさ、不条理、奪われた尊厳。

すべてを糧に、彼は復讐を決めたのだ。


(……凄まじいわね。

管理の行き届かない『多様性』が招く、最悪の地獄。)


私は冷静を装い、静かに紅茶を啜り、一点気になったことを問いかけた。


「その情報、どうやって調べたのですか?」


徹底して隠蔽されているはずの、異種族の闇。

ただの警備兵見習いに辿り着けるはずのない真実を、彼はどうやって掴んだのか。


それが、この『ノア』という人物の持つ――そして私が求めている、真の能力に関係しているはずだ。


「それは……。」


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