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「愛や多様性の犠牲者が誰になるか分かってんのか!」悪役顔の公爵令嬢イザベル、綺麗事で国を壊すバカどもを現実でボコす内政改革  作者: 猫目こね
イザベル十三歳。初等部二年生/イザベル十五歳。中等部二年生〜

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裏話〜アニエスの激昂〜『どこから狂ってしまったの』 1




ガッシャン!

バリンッ!

バキィッ!




「…なぜ?

なぜ旧体制派どもが、未だに潰れないのよ……っ!!!!」




(アニエス)のために国王や宰相たちが用意した、王宮の豪奢な一室に、激しい破壊音が響き渡る。





化粧台に映る私の顔は怒りによって醜く歪み、台の上の高級な化粧道具は床に散らばり、手鏡は粉々に割れ、宰相から送られた最高級の扇子が真っ二つに折れていた。




 ◆




この人間の国(アステリア王国)に来てからのことを思い返すと、順調としか言えない日々を送っていたはずだった。



エルフの国との交換留学という名目でこちらに潜り込み、少し時間はかかったものの、宰相をはじめとした国の権力者を順番に籠絡し、そして最高権力者である国王までもが私の手に落ちた。

国王の息子であるリュシアンもそうだ。



全ては、私のこの圧倒的な美貌と知性、そしてこの溢れ出てしまう品性があってこそだ。



(まぁ、国王を籠絡することはできても、国王直属部隊への命令権の譲渡とか、ベルドレッド公爵家の取り潰しとかは頑なに拒否されてしまったから、国王を傀儡にするのは無理だったけれど…。)



それでも、この国を思うままに操っていたのは私だと言っても過言ではないほど、ほとんどのことが上手くいっていた。




権力者たちを動かし、まずは貴族たちを「革新派」と「旧体制派」に分断した。

これで貴族同士は、常に互いを「相容れない敵」だと用心しなければならなくなった。



(本当の敵は、自国の中にはいないというのに。

ふふっ、実に滑稽よね。)




革新派貴族には、言葉巧みに『異種族との共生』を勧めた。



「私はエルフだから…。

人目が気になって、私はこの国でとても生きにくいのです…。」



なーんて、涙ぐみながら適当なことを言って見せたら、私が命令するまでもなく、彼らは異種族の無制限な受け入れを開始した。




「アニエス様が人目を気にせず過ごせる、優しい環境を作るんだ!」

と、私に心酔するマヌケな貴族たちは、何の規制も管理もせずにどんどん異種族を国内へ引き入れていった。





金や権力で靡きそうな貴族にも声をかけた。



異種族を大量に受け入れることを見越して、『異種族との共生』の象徴となる『虹の広場』を建設する。

そうすれば建築資材の利権で一儲けできると踏んだ貴族や、国からの支援金を中抜きして私腹を肥やす貴族の背中を、少しつついてあげたのだ。



他にも「人間とは違う特性を持つ者たちだからこそ、特別な食べ物や飲み物、彼らの嗜好品、服が必要になる」と助言すれば、欲に目が眩んだ彼らはすぐに国内の販路を牛耳る動きに出た。





それに、人間は子供から大人まで、男も女も、異種族からとても人気なのだ。



―――『性奴隷』として。





金に目がない貴族は、こうした情報を渡すと自領の民を騙して虹の広場に集め出した。

虹の広場は、たとえ事件であっても事故として処理できるような体制にするよう宰相に助言済み。

そのため、基本的には無法地帯も同然なのだ。



私は彼らに勧めはしたが、結局のところ悪事に手を染めているのは人間たち自身だ。



私は全てを知っていて「見て見ぬ振りをしてあげますわ」と言うことで、彼らは私に逆らえなくなった。



彼らは、宰相たちもグルだということを知らない。

そのため、悪事に手を染めてしまったら牢獄行きだと思い込んでいるのだ。



―――だってそうしたほうが、私にとって扱いやすい道具になってくれるから。



こうして共犯のような関係性を築いていけば、面白いくらいに革新派の貴族たちは私に従うようになっていった。




(たまに私の美貌が効かない忌々しい奴もいたけれど、こうやって欲に忠実な駒を増やしていくのは案外簡単な作業だったわ。

全ては、国内に異種族を大量に受け入れさせるための布石…。)




私が彼らに『先進的な多様性の尊重』を掲げさせたのは、さも自分たちが道徳的に優れた高潔な人間であるかのように錯覚させるため。



あるいは『排他的な古い思想を捨て、異種族の多様な文化や高度な技術を取り入れることこそが、次世代の国家発展に寄与するのだ』という甘い欺瞞。



そして『過去の凄惨な戦争は、異種族同士が互いを遠ざけていたから起こった悲劇。同じ国で手を取り合って暮らしていけば、やがて隣人を愛するようになるでしょう』というような、()()()()()()()()()()を吹き込んでやれば、愚かな国民どもには大ウケで、思想は瞬く間に広がっていった。





だから、それ以降は国民たち自身が勝手に「多様性」とやらを進めてくれた。



正直、心の底から『バカ』だと思った。




(本当に面白いくらい!

毎日笑いが止まらなかったわ!!)




だって、こんな薄っぺらい綺麗事を盲信して、かつての敵である異種族を無防備に国に入れるなんて、本当に阿呆の極みだと思わない?



異種族たちとの凄惨な戦争の歴史をちゃーんと勉強していたら、なぜ明確な国境があり、なぜ最前線に魔導師戦隊が配備されているか分かることでしょう?



そもそも、なぜ『人間同士でさえ国が分かれているのか』という根本的な理由にすら、簡単に考えが行き着くと思うのだけれど。




他の人間の国に比べて、識字率が無駄に高いこの国の人間どもは、さぞ勉強ができるはずでしょう?

それなのに、どうしてこんなに浅はかで、おめでたい頭に育ってしまったのかしら?




(ふふ、あぁ、それもそのはず。

教育にも私が少しずつ手を入れていたからだったわ。)




平民の通う学校なんてどうでもよかったから、貴族の通う学校(アステリア王立学院)に徹底して革新派の偏った考えを浸透させていた。



子供はこの上なく素直で、思想を汚染しやすい。


この雛たちがそのまま貴族の跡取りとなれば、我が忠実な革新派貴族はさらに増え続ける。




(子供って良いわねぇ……。)




他にも、私は司法の裁判官たちを賄賂漬けにし、警備隊幹部も汚職漬けにしてやった。


ここまでするのに、そう時間はかからなかった。

すべては順風満帆。



これだけ治安悪化させれば、さすがに国民たちの中にも『異種族との共生』に対する不満や反感が高まり始めていた。




実は、こうなることも見据えていた。


国に対する不信感を煽ることで、国内を内側からぐちゃぐちゃにする。

とにかくこの国を混沌とさせていけば、あとから私の家族である『グロビンの一族』によって、この国をそっくりそのまま手中に収めやすくなる。



もっともっと混乱させて、分断させて、国民同士でも疑心暗鬼にさせて、国の信用を地に落とす。

誰も誰も、誰も信じられない極限状態にし、異種族をさらに増やす。




もっと、もっと、もっと……―――!!




そうすれば、この国をエルフたちの遊び場(植民地)にできる。

私はエルフの国でもっと高い地位につけるし、私の一族もさらに栄華を極める…!





 ◆




…完璧な計画のはずだった。




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