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「愛や多様性の犠牲者が誰になるか分かってんのか!」悪役顔の公爵令嬢イザベル、綺麗事で国を壊すバカどもを現実でボコす内政改革  作者: 猫目こね
イザベル十三歳。初等部二年生/イザベル十五歳。中等部二年生〜

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83話 国外の情報 2




「はい、イザベル様。

あそこ(エルフの国)は…、一言で言えば、『超差別国家』でした。」




ルーラが冷徹な声で吐き捨てた。

エドモンも、隣で小さく頷く。




「エルフといえば、美しく、高潔で、大自然の精霊と共に生きる長寿の種族…!

…という印象かと思います。

ですが実態は、自分たち以外の種族を、ある意味平等に『多少理性がある下等生物』として蔑んでいる選民思想集団です。」




「相容れない種族であることは感じていたけれど…。

そこまで極端な思想を持っているとは…。」




(アニエスはそんな国で生まれ、育ったってことか。

じゃあやっぱり、わざわざこの国(アステリア王国)に来たのは、ここを属国…いや、植民地にでもする狙いがあってのこと?)




私は思考を巡らせつつ、続けて質問した。




「そんな国にどうやって入ったの?

魔族の国みたいに大金を払ったり、誓約書を書いたりすれば、入れる…ってわけでは無さそうね。」




「その通りです、イザベル様。

人としての認識すらされていない『下等生物』を、易々と国に入れる方法は存在していません。

ですが過去に交換留学をしていた実績がありましたので、今回は『留学』として私たちは入国することができました。

元学園生徒のエルフのご両親が、話せば(脅せば)分かってくれる方で助かりました。」




「それでも、結構危ない場面は多々ありました…。」



ボソッとエドモンが言った。




「確かに、周囲からの蔑みの目は相当なものでした。

エルフの国へ入るには、基本的に『奴隷として入る』以外のルートがないに等しいのです。

非常に不愉快な国でしたが、それでも本当に『奴隷』として買われて入るよりは何倍もマシだったでしょう…。」




「まともな…、人道的な国とは言えないわね…。」




「イザベル様。

すべての種族を見下している傲慢なエルフたちですが、彼らが特に忌み嫌っている人種をご存知ですか?」




「うーん…、人間?」




「いいえ。

彼らが何よりも嫌っているのは『魔族』なんです。」




ルーラの言葉に、私は首を傾げた。

魔族の国といえば、先ほどルーラが絶賛していた国だ。

なぜそこまで嫌うのだろう?




「理由はシンプルです。

何よりも『見た目』が気持ち悪いから、だそうです。

エルフからすれば、魔族のあの尖った角や、青緑といった人種とは言い難い『肌の色』が生理的に耐え難い不快感をもたらすのだとか。

同じ『人種』とは思えない『化け物』だ、と本気で吐き捨てていました。」




(人を見た目で判断する民族性…か…。

それが悪いことだとは思わないけれど、見た目が無理っていうのはきっと嫌いである要因の一つなだけで…)




「ルーラからの話を聞く限り、魔族は賢い種族ですものね。

知性で勝てないから、見た目を叩くことでエルフ側が現実逃避してるってことなんでしょう。」




「そうなんです!

そんな傲慢なエルフの国ですが、内情は決して上手くいっているとは言い難い様子でした。

国を統べるエルフの三人の老害……ゴホンッ、失礼、三人の賢者。

通称『元老参(げんろうさん)』というものがあるらしく、彼らは数百年前から立場が変わっていないそうです。

他国の情勢を『下等な文化』と切り捨てて取り入れないため、さすがのエルフの国でも国力が年々衰退しているようです。」




「長寿ゆえの停滞、ね。

トップが変わらないなら、当然よね…。

国の危機を感じている者はいないの?」




「存在しているようですが、元老参は『我らこそがほぼ神!』と皆に自分たちを信仰させ、従わない者は即刻牢屋行きに処す独裁体制です。

なのでエルフの若衆も、なかなか表立って行動ができない状況のようでした。

ですが、そんな閉鎖的な元老参にここ数年の間に急接近し、深く懇意にしていると噂されているエルフの一族がいるのです」




「へぇ、どんな一族?」




「彼らは力ある者に擦り寄っていき、珍しい食べ物や品物、大金、そして…『人』をも献上してのし上がっているそうです。

その一族の当主の名は『グロビン』。

当主が代替わりしても、代々その名が受け継がれているとか。」




(グロビン……。

グロい便ってこと……?ひぇぇ〜…。

一体エルフの老害は何を献上させているのやら…。

いや、深く考えるのはやめよう。脳みそが腐る。)




「そう…。

その一族については、他に何か知っていることはある?」




「そうですね…、私たちも完全に自由の身というわけではなかったので…。

と、言いたいところですが!

イザベル様がそうおっしゃるかと思いましたので、しっかり調査してまいりました!」




(ルーラ、有能…!!)




「このグロビン一族は、どうやら約五十年前からエルフの地へやってきたそうです。

それまでは、このエルフの国にはおらず、別の場所で細々と暮らしていたようで…。

噂では『他国で迫害されて逃げてきた』とのことです。

エルフはプライドが高いですから、『我ら高潔なエルフが迫害されるなど許せん』と、彼らを手厚く保護したのです。」




「なるほど、同情を引いて入り込んだわけね。」




「それからこの一族、懐妊し辛いエルフの割には、不思議と子沢山だそうで。

それもあって、徐々に迎え入れられていったとのことです。

ただ、一族の伝統で『子供が十歳になるまでは絶対に外に出さない』という奇妙な決まりがあるようで…。

……まぁ、数百年を生きるエルフにとっての十年なんて一瞬の出来事ですから、周囲は誰も気にしていないようですが…。」




「なぜ十年なのかしらね?」




「そこまでは調べても分かりませんでした、申し訳ありません…。

私が知り得たのも、実は元学園生徒だったエルフの家にあった古い手記からでしたので。

ただ、グロビン一族の奇妙な風習はそれだけではないのです。」




ルーラは少し声を潜め、言葉を続けた。




「彼らは一族の結束力が異常に強く、グロビン一族の者と結婚して子供が産まれると、その子供もまた十年間、グロビン家から外に出されません。

それどころか、一族直系ではない方の配偶者は、その間、我が子に十年間いっさい会えなくなるそうです。

例えば、夫がグロビン一族で、妻が別の一族のエルフだった場合、産まれた子供はグロビン家に没収され、妻は十年もの間、子供に会わせてもらえないのです。」




「はぁ!?

人間の国なら裁判沙汰よ!?

配偶者の方も発狂する人続出案件よ!?

というか、そんな異常な相手だと知っていたら、いくら金持ちだったとしても絶対に結婚しないわよ…!?」




「そうなんです。

ですがグロビン一族は、周囲が気づいた頃には着々と元老参たちとの距離を縮めていて、今や他の一族よりも頭一つ抜けたお金と権力を握っています。

さらに、グロビン一族のおかげで少子化だったエルフの国は諦めモードから『もっと子供を増やそう!』と活気づけられていました。

といっても、一族以外のエルフの妊娠のし辛さは変わっていないので、獣人の国のように爆発的に人口が増えるようなことはないかと…。」




(エルフの国、少子化問題だったのね。

子供が減ると、国の活気って失われていくのはどこの国も同じってことか…。)




前世の、かつて自分がいた世界のことが一瞬頭をよぎった。




「ルーラ、ありがとう。

他になにか、エルフの国で気になったことはあるかしら?」




「うーん……。

あっ!そういえば、『気持ち悪くなるエルフ』と、『気持ち悪くならないエルフ』がいました。」




「えっ!」




私は思わず大きな声を上げていた。




「あっ、気持ち悪いというのは、私の好みとかそういったものではなく…!

胃がムカムカして吐き気が込み上げてくるような…胸焼けが酷いというか……。

体の異常という意味での気持ち悪さです!」




(私がアニエスと対峙したときもそうだった。

それに、似ているかも…!?)




「ルーラ…!!その時の状況を、もっと詳しく知りたいわ!

あなたとエドモンの状態も。

気持ち悪くなる者と……ならない者がいたのね?」




「はっ、はい!

私たちが利用した元・学園生徒のエルフに対してはなりませんでした。

そして彼女の家族も、何人かの友人にも会いましたが、気持ち悪さは一切ありませんでした。

ですが、彼女の父親が主催したパーティーで多くの人が家に訪れた際、とある一家に対してだけ、強烈な気持ち悪さを覚えたのです。」




「それは、どんな家族だったの?」




「それが…、外見は他のエルフたちと何ら変わらないエルフだったのです。

何が違うかと言われましても、私が体感した『気持ち悪さ』しか言えず…。」




「そう……。

エドモンはその時どうだったの?」




「私は……、その、体が火照ってしまったくらいです。

なんというか、少しドキドキしてしまうような…。

ルーラが言うような気持ち悪さは特に感じませんでした。

ただ……、大変言いにくいというか、誤解をしないでいただきたいのですが、私たちが会ったその人物は『男性エルフ』だったのです……。」




私の目がチベットスナギツネになる。




「…誰と恋しようが、私は応援するわ。」



「イザベル様!

誤解しないでくださいと言ったではありませんか!

私は恋愛対象は異性です…!」



「あら、そう…。」




(そういえば王妃様が言っていたかも。

『あの女に触れられたら、男は皆、下僕のように虜になるのよねぇ。

女の場合も、虜になるか、あなたみたいに体調を崩してしまう人を見かけるわね』

って…。)




脳内で情報を整理する。




(そういう家系…?

アニエスの家系は、皆、男性を無条件で魅了してしまう?

たまに女性も魅了してしまうのかもしれないけれど、基本的には男性にだけ有効。

そして女性に対しては、拒絶反応として気持ち悪さを感じさせることがある…。

魅了、か…。)




「そういえば、イザベル様。

その気持ち悪くなった方は『グロビン』の親族だと、元学園生徒のエルフから聞きました。」




「……そう。

うーん、何だかパズルが揃いそうなんだけれど…。

うううんんん。」




グロビンという名を持つ当主の一族。

気持ち悪くなるエルフと、ならないエルフ。


元学園生徒のエルフは気持ち悪くならない。

パーティーで会った男性エルフは気持ち悪くなる。

彼はグロビンの親族。


そして、アニエスと対峙した時の私の体調不良。




(アニエスは、グロビンの親族、あるいはその血縁者?

あの女が持つ、男性に対して発動する『魅了』のような効果…。

これはエルフの国でも、グロビンの一族だけが持つ特殊な力なのかも?)




「そういえば、ルーラが『気持ち悪い』と言った時、他の女性エルフはどんな反応だった?

同じように『気持ち悪い』って言ってた?」




「いえ。特に体調不良のような素振りを見せる女性はいなかったと思います。

ね?エドモン。」




「そうですね…。ルーラの顔は真っ青って感じだったので…。

それと同じくらい具合が悪そうな方は…いなかったです。

そういえば、ルーラは馬車があまり得意ではないのですが、まさに乗り物酔いしている時のような顔で、不謹慎ながらちょっと笑っちゃいました。」



「こら!エドモン!

そういう余計な話はいらないわ!」




二人が微笑ましく口喧嘩を始めている中、私は目の前の二人の様子そっちのけで考えてた。



(エルフの女性には何の反応もない。

けれど、人間である『ルーラ』や『私』には効く。

そして、ルーラの乗り物酔いのような顔…。

そういえば、私が気持ち悪くなった時には、王妃様が私にくださった『魔を退ける効果があるとされる植物』、ソージュ・ロリエが効果的だったんだよね…。)







ふと、私の脳内に一つの仮説が打ち立てられた。






仮説がもしも真実だとしたら…。

あのグロビンという存在をさらに深く調べる必要が出てくる。


私がシリアスな顔をして黙り込んでしまったからか、ルーラが心配そうに声をかけてくれた。




「イザベル様。

私たちは三ヶ月ごとに各国を巡ってまいりました。

ですが、このエルフの国の不穏な空気を察知したため、ここだけは約半年ほど滞在していたのです。

何か引っかかっていることや知りたいことなどがあれば、何でもご相談してください!

何かのお役に立てる情報が、まだあるかもしれません…!」




ルーラの言葉に、エドモンも力強く頷いた。




「ルーラ、エドモン…。ありがとう。」



57話に王妃との会話がありますので、ぜひ振り返ってみてくださいね。


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