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魔導省魔導災害局  作者: すもも
第二章 結婚から始まる恋愛

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38 調査の終わり

2026.10.26 修正

38 調査の終わり


翌朝、魔導災害局の朝礼で、一連の調査結果を共有することになった。職員たちは立ったまま、説明を待っていた。


局長が全員を見渡した。


「メイソン教授への聴取で、一連の件について本人から説明があった」


フロアが静かになる。


「今日は、その内容を共有する」


ユリウスが資料を開いた。最初に説明されたのは、北部供給施設のことだった。


メイソン教授は設計の段階で回路を取り付けられる箇所を見つけ、建設中にひそかに設置していた。設置は記録されず、回路はそのまま三つの供給施設に残っていた。その後も教授は遠隔操作の研究を進めていたという。


東部と南部では接続を確認するための信号を送っただけで、実際に設備を操作したのは北部施設だけだった。


北部施設での最初の操作は、外部から操作できることを確かめるための短い試験だった。試験が成功したため、二度目の操作に移った。施設を止め、原因を調べる魔導省が行き詰まったところで、自分が呼ばれる状況を作るつもりだった。


昨夜、ユリウスから聞いた内容とほとんど同じだった。アストリッドは黙って説明を聞いていた。


やがて局長が資料を一枚めくった。


「北部施設については以上だ。次に、民間電力施設の件へ移る」


アストリッドは顔を上げた。


「こちらについても、メイソン教授は外部から操作したことを認めている」


ユリウスが続ける。


「ただし、北部施設とは目的が違った」


ブルーノが腕を組んだ。


「北部施設のあとに、なぜまた同じようなことをしたんです?」

「北部施設の事故報告を読んだからだそうです」


ユリウスは答えた。


「事故の際、非常扉を開けるために、僕が扉の駆動炉のコアを破壊したことも報告に残っていた」


アストリッドはユリウスの左手を思い出した。コアを破壊したことで起きた逆流。自分も無事ではすまないと分かっていながら、ユリウスはそれを実行した。


「教授は、あの対応を見て考えたそうだ。独立した炉であれば、外部から停止させることができる。コアを破壊するような方法を取る必要はない、と」


オリヴァーが眉を寄せる。


「それを確かめるために、電力施設を使ったんですか」

「本人はそう話している」


局長が答えた。


「独立した炉なら、外部から停止させられると考えた。その方法を実際の設備で確かめようとしたそうだ」

「それで炉を止めた」


ロイが言う。ユリウスが頷いた。


「停止そのものは、教授の想定どおりだった」


外部から停止命令を送る。炉は停止する。一定時間、その状態を維持する。そして再び起動する。


メイソン教授が記録していたのは、停止させた時刻と、その状態を維持した時間、再稼働させた時刻だった。


「でも、止めている間に魔導エネルギーが蓄積した」

「そうだ」


ユリウスが答える。


電力施設では、炉が停止しても上流からの供給まで止まるわけではなかった。本来なら、炉へ流れない魔導エネルギーは別の経路へ逃がされる。メイソン教授も、それを前提にしていた。


「教授は、あの施設の設備を知っていたんですよね?」


オリヴァーが尋ねる。


「一部は」


ユリウスが答えた。


「過去の設備や設計については知っていた。ただ、現在の施設全体を把握していたわけじゃない」


長く稼働してきた電力施設では、その間に設備の増設や改修が行われていた。回路も接続も、当初の状態から変わっていた。それでもメイソン教授は、炉を停止した場合の基本的な流れまでは変わっていないと考えた。


「現在の設備を確認しなかったのか?」


ロイの問いに、ユリウスは頷いた。


「少なくとも、停止中の魔導エネルギーが実際にどこへ流れるかまでは確認していない」


その結果、想定していた経路は機能せず、魔導エネルギーが炉の手前に蓄積していった。だが、メイソン教授はその量を監視していなかった。


予定していた時間が経過した。だから、予定どおり再稼働の命令を送った。蓄積していた魔導エネルギーが、一気に炉へ流れ込んだ。そして、爆発した。


しばらく誰も口を開かなかった。やがてブルーノが息を吐いた。ロイが口を開く。


「爆発させるつもりだったわけではない」

「本人は否定している」


ブルーノが続けた。


「記録の内容とも矛盾しない。教授が残していたのは停止と再稼働の記録だ。爆発を起こすための操作を行ったことを示すものは、現時点では確認されていない」


オリヴァーが資料へ目を落とした。


「北部施設でも、設備を操作すること自体には成功していたんですよね」


アストリッドはその言葉に顔を上げた。


「電力施設でも同じです」


オリヴァーが続ける。


「炉を止めるところまでは、教授の考えたとおりだった」

「だから、その先も大きくは違わないと思ったのかもしれません」


アストリッドが言う。


教授は、現場にいる人や、接続された設備への影響まで、想定したとおりになると考えていたのかもしれない。


局長が資料を閉じた。


「本人の供述については、今後も確認が続けられる。処分についても我々が決めることではない」


全員が局長を見る。


「だが、北部供給施設、東部・南部供給施設、そして民間電力施設で確認された一連の件について、魔導災害局としての調査は、これで一区切りとする」


長く続いていた調査だった。最初は、二人の作業員が同時に体調を崩したという小さな報告書だった。そこから北部施設の事故が起きた。三つの施設から不自然な回路が見つかり、さらに民間電力施設が爆発した。一つずつ調べてきたことが、ようやく同じところへつながった。


「以上だ」


局長が言った。


「この件に関する全体での共有は、ひとまずここまでとする」


朝礼が終わり、職員たちがそれぞれの業務へ戻り始めた。


オリヴァーが声をかけてきた。


「終わりましたね」


アストリッドは少しだけ考えてから頷いた。


「はい」


アストリッドは資料を閉じ、仕事へ戻った。

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