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魔導省魔導災害局  作者: すもも
第二章 結婚から始まる恋愛

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28 媒質の移送

2026.10.26 修正

28 媒質の移送


アストリッドは測定器の表示を確かめ、ロイとエミールへ顔を向けた。三人の手元にある測定器は、どれも媒質を検出している。


「爆発で、区画内にあった媒質を含む気体が外へ出たんですね」

「ああ。それに、今も漏れ続けてる」


ロイが壁に開いた大きな穴を見た。周囲のコンクリートには亀裂があり、隣の壁も一部が欠けていた。


「すぐに塞ぐのは無理だな」

「このままでは、槽に媒質が残っている限り漏出が続きます」


アストリッドは職員から渡された設備図を開いた。図面上の貯蔵槽の数と、穴から見える槽の数を照らし合わせる。エミールも横から図面を覗いた。


「槽から全部抜き取る必要がありますね」

「はい。液体の媒質をここから取り除いて、漏出を止める必要があります」


ロイが槽の容量を確かめた。


「この規模の槽なら、タンクローリーでの移送を考えた方がいいな。残量の記録も確認しよう」


エミールが槽の容量を端末へ記録する。


「受け入れ先も必要ですね。今ある量を保管できる場所を確認してもらわないと」


ロイが図面の移送配管へ指を移した。アストリッドも、槽から外へ続く経路を確かめる。


「移送に使う配管も確認したいです。損傷していれば、そのままは使えません」

「そこは先端工学課にも見てもらおう。俺からタクトさんに話す」


ロイが通信端末を取り出した。


「タクトさん、ロイです。貯蔵区画を確認しました。壁が大きく損傷していて、気化した媒質が外へ漏れ続けています」

『壁を塞ぐのは難しい?』

「今の状態では難しいです。槽内の媒質を全量抜き取り、別の場所へ移すことを提案します。量が多いので、タンクローリーを使いたいです」

『移送用の設備は?』

「図面では確認できますが、現物の状態はまだです。安全に使えるか、先端工学課にも確認してもらいたいです」

『分かった。ブルーノさんも到着した。一度戻って、詳しく聞かせて』

「はい」


通信を終えると、ロイは発電所の職員に移送設備の資料も用意するよう頼んだ。アストリッドは採取容器をケースに収め、エミールが測定記録を保存する。


三人は来た通路を戻った。爆発した建屋のそばでは、オリヴァーが職員と設備図を確かめている。アストリッドはその横を通り、割れた窓ガラスを避けて敷地の外へ出た。


本部のテントへ戻る前に除染を済ませ、防護装備を外した。中ではタクトがブルーノに地図を示していた。机の端には、周辺の簡易測定結果が重ねられている。


ロイが貯蔵区画の図面を広げ、アストリッドも測定記録を置いた。


「この壁と、こちら側も破損しています。壁の穴の前では、周囲より高い濃度でした」

「槽に残っている量は?」

「発電所側に確認を頼みました。移送設備の資料も持ってきてもらいます」


タクトは図面上の槽と測定記録を確かめ、ブルーノへ向き直った。


「ブルーノさん、媒質を扱えるタンクローリーを手配して、全量を別の保管場所へ移したいです。抜き取りの間は濃度を監視し、周辺の測定も続けてもらいます」


ブルーノは図面と測定記録を見比べた。


「そうしよう。電力会社に車両と保管先の手配を頼む。移送設備の確認はユリウスたちに。タクト、消防とも車両の経路と作業場所を調整してくれ」

「分かりました」


アストリッドは測定記録をタクトの方へ寄せた。


「抜き取りが終わっても、区画内と周辺の濃度は確認します。槽が空になっただけでは、すでに外へ出た分までなくなったとは判断できません」

「うん。その結果も本部に集めよう」


タクトは発電所の責任者を呼び、必要な車両と保管先について話し始めた。ブルーノは消防の担当者と地図を確認する。


「移送が終わるまでは、漏出が続く可能性がある。周辺の測定結果は、その都度知らせてください」

「分かりました」


アストリッドは机の端を借り、採取した試料を簡易分析器にかけた。エミールが時刻と地点を付けて結果をまとめる。


「採取した気体からも媒質が確認できました」


ロイは分析結果をタクトへ渡し、戻ってきた職員から貯蔵量の記録を受け取った。アストリッドも記録と設備図を照らし合わせる。槽ごとに量が記され、移送に使う配管の図が添えられていた。


タクトの通信端末から、ユリウスの声が聞こえた。


『資料は届きました。移送設備も確認します。炉につながる回路と配線は、まだ調べているところです』

「現在、供給は止まっているけど、残留分は確認中ということだね」

『はい。接続先まで確認しています。運転記録も受け取ったので、爆発前に何が起きたかは順に調べます』

「分かった。移送を始められる状態になったら知らせて」


タクトは通信を終え、三人へ顔を向けた。


「車両と受け入れ先を手配している。移送設備の確認が済むまでは、抜き取りを始めない。ロイたちは、作業中の測定と採取の準備をお願い」

「分かりました」


ロイが記録の画面をアストリッドたちへ向けた。


「抜き取りの間も、区画の外へどれだけ出ているか見ておこう。アストリッドは採取と分析、エミールは測定地点と時刻の記録を頼む。俺は作業場所の測定と連絡を受け持つ」

「はい」


アストリッドは未使用の採取容器を数え、結果をロイへ伝えた。エミールは記録用の端末を充電につなぎ、次の測定に備えて入力欄を整える。


テントの外で車の扉が閉まる音がした。発電所の職員が新しい資料を運び込み、タクトの机に置く。車両の進入経路と、媒質を受け入れる施設の連絡先が示されていた。


「保管先は確保できました。車両もこちらへ向かいます」


アストリッドは地図で進入経路を確かめた。車両を停める場所と、貯蔵区画までの通路が示されている。損傷した壁から離れて作業できるか、現場でも確かめる必要があった。


採取する位置を書き込み、エミールに地図を渡す。移送前と作業中の値を比べられるよう、同じ地点で測定する。エミールは地点ごとに番号を付け、端末の記録にも反映した。


「アストリッド、エミール。準備ができたら行こう」

「はい」


防護服を着直し、アストリッドは測定器を手に取った。車両が到着するまでに、作業場所の濃度を確かめておかなければならない。ロイとエミールとともに、貯蔵区画へ向かった。

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