↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導省魔導災害局  作者: すもも
第二章 結婚から始まる恋愛

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/40

22 合同会議

2026.10.26 修正

22 合同会議


総務省との合同会議は月に一度開かれている。魔導災害発生時の省庁間連携や、避難、情報共有を確認するための定例会議だった。ユリウスは事故後の入院と自宅療養で、二回続けて欠席していた。アストリッドが出席するのは、北部施設の事故以来初めてだった。


総務省庁舎の会議室へ入ると、すでに何人かの職員が集まっている。


「シルヴェル主任、お久しぶりです」


総務省の職員に声をかけられ、アストリッドは頭を下げた。


「お久しぶりです」

「前回はいらっしゃいませんでしたよね」

「はい。少し休んでいました」


それ以上は聞かれなかった。少し先では、ユリウスも別の職員と話していた。


「ルーメン課長、お久しぶりですね。しばらくお見かけしませんでしたけど」

「事故の件で少々」


総務省には、北部施設の事故で負傷した職員の氏名は伝えられていない。相手も特に疑問を持った様子はなかった。


アストリッドは魔導省側の席へ資料を置いた。


「アストリッド、これ、そっちにも置いといて」

「はい」


ロイから資料を受け取り、机に並べる。その向こうでは、タクトがユリウスと資料を見ながら話していた。事故前と変わらない、いつもの会議前の光景だった。


「ルーメン課長」


女性の声が聞こえた。総務省の職員が、ユリウスの前に立っている。合同会議には何度も出席しており、アストリッドも以前から顔を知っていた。


「本当にお久しぶりですね。前回も前々回もいらっしゃらなかったでしょう。会議が少し寂しかったんですよ」

「そうですか」


ユリウスの返事は普段と変わらない。女性は笑ったまま話を続けている。ずいぶん親しげだ。ユリウスに好意があるのだろうか。以前なら、そんなことを考えもしなかったと思う。


「シルヴェル主任、お久しぶりです」

「お久しぶりです」

「今日は魔導薬学分野の説明を担当されるんですか?」

「必要があれば、補足します」

「専門家ですものね」


女性はそれだけ言うと、再びユリウスを見た。


「では、また後ほど」

「はい」


アストリッドは自分の資料を開く。以前から、この女性の質問は少し細かいと思っていた。ほかの魔導省職員に比べて、自分への確認だけが一つか二つ多い。ただ、内容そのものに問題があるわけではない。


間もなく会議が始まった。最初の議題は、魔導災害発生時の初動連絡だった。総務省側から運用状況が報告され、その後、魔導省側が技術的な補足を行う。


「次に、魔導媒質による曝露が疑われる場合の初動基準について説明します」


タクトが説明し、必要な箇所でロイとアストリッドが補足する。


「一点、よろしいでしょうか」


先ほどの女性だった。


「シルヴェル主任に伺います。この基準値を超えた場合、症状が確認されていなくても魔導省へ連絡する運用で間違いありませんか?」

「はい。魔導媒質によっては発症まで時間がかかる場合がありますので、基準値を超えた時点で連絡をお願いしています」

「それでは現場からの連絡件数が増えませんか?」

「増える可能性はあります。ただ、現場側に専門的な判断を求めないための基準です。初動段階で除外できる案件は、連絡を受けたあとにこちらで判断します」

「現場では判断できないと?」

「判断できる職員もいます。ただ、すべての施設に同じ専門知識を持つ職員が配置されているわけではありません」

「分かりました」


質問としてはおかしくない。ただ、やはり自分に対しては確認が細かい。


会議はそのまま進んだ。休憩に入ると、魔導省側の職員が集まって資料を確認する。


「ユリウス、そこの数字、前回から変わったのか?」

「変わってない。注記だけ追加した」

「じゃあこのままでいいな」

「うん」


アストリッドが資料を整理していると、少し離れたところに先ほどの女性が立っていた。目が合う。互いに軽く頭を下げる。


ただ、女性の表情は先ほどより硬い。自分がユリウスの近くにいることが気に入らないのだろうか。そう考えると、これまで自分への質問が細かかったことにも納得がいった。


後半も予定どおり進み、会議は定刻に終わった。アストリッドが端末を閉じると、ユリウスが声をかけてきた。


「アストリッド。今日の説明、分かりやすかったよ」

「ありがとうございます」

「質問も多かったけど、問題なかったね」

「はい」

「ならよかった」


ユリウスは自分の資料を鞄へ入れた。アストリッドが顔を上げると、先ほどの女性がこちらを見ていた。目が合うと、女性はすぐにユリウスへ視線を移した。やはり少し機嫌が悪そうだった。


「ルーメン課長」


女性が歩いてくる。


「今日、このあと少しお時間ありますか?」

「戻って仕事があります」

「それほど長くは取りません。少しお茶でも」

「仕事の話ですか?」

「いいえ。たまには仕事以外のお話もしたいと思いまして」


ユリウスは間を置かずに答えた。


「でしたら、結構です」

「そんなにすぐ断らなくても」

「必要がありませんから」


声は穏やかだった。


「以前から変わりませんね。何度誘っても、全然付き合ってくださらない」

「毎回お断りしているので」

「一度くらいいいじゃありませんか」

「行きません。業務の話でしたら、また次回の会議でお願いします」


女性はしばらくユリウスを見ていた。


「……分かりました。また今度」

「はい」


また今度。やはり、ユリウスに好意があるのだろう。ただ、何度も誘い、そのたびに断られているとは思わなかった。それでも、また誘うつもりらしい。


ユリウスが女性に人気があることは、以前から知っていた。ただ、実際にこうして誘われているところを見たことはなかった。


ユリウスは相手にしていない。それも分かっている。それでも、少し落ち着かない。妬いているのだと、アストリッドにも分かった。こんなふうに感じるとは思っていなかった。


ユリウスは普段と変わらない口調で、タクトと帰りの確認をしている。


「アストリッド、帰ろう」

「……はい」


返事が少し遅れた。


「どうしたの?」

「いえ。何でもありません」


分かったところで、気持ちがすぐに収まるわけではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。