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魔導省魔導災害局  作者: すもも
第一章 事故から始まる結婚

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21 解析結果 三施設

2026.10.26 修正

21 解析結果 三施設


東部施設と南部施設から回収した回路を魔導先端工学局へ送ってから、数日が経った。昼休みになると、アストリッドは端末を閉じた。隣ではロイも作業を止めている。少し離れた席から、エミールが立ち上がった。


「昼、行きますか?」

「行く」


ロイが答える。アストリッドも鞄から財布を取り出した。


魔導先端工学課の方を見る。ユリウスはまだ端末を見ていたが、ちょうど作業を終えたらしく、画面を閉じた。視線が合う。


「ユリウスさんも行きますか?」

「うん」


四人でフロアを出た。


食堂は昼休みに入った職員で混み始めていた。それぞれ食事を受け取り、空いている四人掛けの席へ座る。


ユリウスの前にはカレーが置かれていた。ロイがそれを見る。


「またカレーか、毎日それで飽きないのか?」


ユリウスはスプーンを持った。


「飽きた」


ロイが顔を上げた。


「だろうな」

「でも、これが一番食べやすい」


ユリウスは右手だけでカレーを食べる。左手はまだ細かな動きが戻っていない。


「今日は親子丼もありましたよ」


アストリッドが言う。


「スプーンで食べるのが恥ずかしいんだ」

「まあ、そうだろうな」

「誰も気にしませんよ」

「男はそういうの、気にするんだよ」


ユリウスは特に否定しなかった。アストリッドは自分の皿を見た。唐揚げが五つある。


「ユリウスさん、食べますか?」

「食べる」


唐揚げの中から大きいものを二つ、ユリウスの皿へ置く。ユリウスがそれを見る。


「大きくないか?」

「いいんです」

「僕の方が明らかに大きい」

「私は三つありますから」

「そう?」

「はい」


向かいでは、ロイが二人を見てにやついていた。


「ロイさん、何ですか?」

「いや」

「何ですか」


ロイは笑った。エミールが二人を見てから、ロイを見る。


「何か思ってるでしょう」

「こいつらは、合うと思ってたんだ。まさか、結婚するとはな」

「ロイさんは、結婚すると聞いたときに驚きましたか?」

「そりゃあな」

「合うと思っていたのに?」

「合うと思うのと、結婚すると思うのは別だろ」

「じゃあ、どうして今まで何も言わなかったんですか?」


ロイは少し間を置いた。


「言ったらこいつら、変に意識しそうだったから」


ユリウスが頷いた。


「多分、したと思う」


ロイはアストリッドを見る。


「アストリッドなんか特にそうだろう」


否定しようとして、アストリッドはやめた。言われていたら、気にしただろう。少なくとも、それまでと同じようには見られなくなったと思う。


エミールが言う。


「ロイさん、意外とそういうのは茶化しませんよね」

「意外は余計だ。周りがとやかく言うより、自分で気づいた方がうまくいくだろ」


エミールが笑った。


ロイはユリウスを見る。


「こいつは学生の頃、研究に集中したいとか言って誰とも付き合わなかったしな」

「それはみんな知ってますよ」


エミールが言った。ロイは今度はアストリッドを見る。


「アストリッドも、いろんな奴から声をかけられてたのに、研究ばっかりだったし」

「研究が楽しかったので」

「だから合うと思ってたんだよ」


エミールが笑った。ユリウスも笑った。アストリッドは少し恥ずかしくなり、自分の皿へ視線を戻した。


ロイが卓上のポットを取り、ユリウスのコップに自然に茶を注ぐ。


「ありがとう」

「左手が戻るまでな」


ロイは自分のコップにも茶を注ぎ、ポットを戻した。四人で食事を続ける。


昼休みの残り時間が少なくなった頃、ロイが時計を見た。


「そろそろ戻るぞ」


食器を片づけ、四人で食堂を出た。フロアへ戻ると、ユリウスは魔導先端工学課の席へ向かった。アストリッドたちは魔導薬学係の席へ戻った。


午後三時を過ぎた頃だった。アストリッドが端末で事故記録を確認していると、魔導先端工学課の方でオリヴァーが席を立った。端末を手に、ユリウスの席へ向かう。二人が画面を見ながら短く話している。


しばらくして、ユリウスは自分の端末を操作した。端末を手に立ち上がり、魔導生物工学課の方へ歩いてくる。


「タクトさん、少しいいですか?」


タクトが顔を上げた。


「どうした?」

「東部と南部の回路の解析結果が出ました」


タクトは端末を置いた。


「分かった。見せてくれ」


ユリウスがタクトの席の横へ立ち、自分の端末を見せる。アストリッドの席から会話のすべては聞こえなかった。


二人がしばらく画面を見たあと、タクトがロイの方を見る。


「ロイ」

「はい」

「アストリッドも。少しいいか」


呼ばれて、アストリッドは席を立った。ロイと一緒にタクトの席へ向かう。ユリウスはまだそこにいた。


「魔導先端工学局から解析結果が戻った」


タクトが言った。


「北部、東部、南部の回路は、個体差はあるが、同じ設計を基に作られたものと考えていいそうだ」


アストリッドはユリウスの端末を見る。解析結果が表示されている。


「内部構造もですか?」

「同じだ」


ユリウスが答えた。


「東部と南部の回路にも、正規の通信系統を通さず外部信号を受信する機能が確認された。受信した信号を、接続先の設備制御へ渡す機能もある」


ロイが画面を見る。


「北部と同じか」

「うん」

「製作時期は?」


タクトが聞いた。


「使用されている部品の世代は近いそうです。ある程度の幅はありますが、三つとも近い時期に作られた可能性が高いと」

「設置時期までは?」

「分かりません」


ユリウスが答える。


「部品から製作時期の範囲は推定できますが、施設へ取り付けられた時期までは判断できないそうです」


タクトが報告を読み進める。


「送信記録は?」

「確認できていません」


北部施設で二度の異常が起きた際に、外部信号が送られたかどうかも、まだ分かっていない。


アストリッドは画面に並ぶ三施設の記録を見る。タクトが頷いた。


「設置した人物は、まだ分からない」

「そうなります」


タクトは少し間を置いてから、ロイとアストリッドを見る。


「分かった。今のところはここまでだ。二人は通常業務に戻ってくれ」

「はい」

「分かりました」


アストリッドはロイと一緒に席へ戻り、椅子に座った。机の上には、昼前まで確認していた曝露事故の記録が残っている。


端末を開き、記録の確認を再開した。

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