99.神兵の行方
僕らは結局1度も魔物などの襲撃に遭う事も無く癒しの国の首都に到着してしまった。また、追っていた白い馬車だけど、途中で別の街から来たのだろう同じ白い馬車が合流して最終的には15台が連なっていた。1台に5人乗っていると計算しても75人。結構な人数だ。更にこれが国の四方からも集まってると考えれば全体で200~300人か。僕の国なら騎士団が1つ出来てしまうな。
それと同時に1つ分かった事がある。
「神兵を集めている白甲冑の騎士も特に強い人は居ないみたいだね」
「はい。距離を空けているとは言え、私達の尾行に全く気が付いてないようですし」
「伝わってくる気配も元第一騎士団の奴らと同じくらい、かな」
「身体の動きも洗練されていない様に視えます」
流石に一般人程ではないにしろ、神兵とか神に仕える騎士としては若干お粗末じゃないかなって気がしてる。まぁこの国の事情にそこまで首を突っ込む気は無いから良いんだけどね。
彼らの馬車が正門から逸れて別の所に向かうのを見送り、僕らはそのまま街の中へと入ることにした。
「さて、今回は全員で動こうか。元々はここの王に招待されて来た訳だし無碍には扱われないだろう」
「はい」
と言っても街中でキャロ達は目立つので、フード付きのローブで姿を隠してもらっている。幸いちょっと探せばそういう服を売ってる店は見つかったし、通りを歩いていればそれなりの割合で同じような格好をしている人を見かけられた。
恥ずかしがり屋なのか別の理由があるかは分からないけど、この国の人としては新アルフィリア教の信者の印のタリスマンさえ身に着けている事が分かれば後はどうでも良いようだ。
ひとまず宿を決めた後、王城へと向かった。
「こんにちは」
「はい、何かご用ですか?」
城の門兵に話し掛ければ普通の応対だった。もしかしたら即門前払いみたいになるかもと思ってたので一安心だ。
「僕達はアルファ商会の者です。
この度、国王陛下からの招待を頂きやってきました。
お取次ぎ頂けませんか?」
「はい。少々お待ちください」
門兵さんは城の中に入って行って上司と思われる人を連れて来てくれた。その人に同じ話をしたところ、何か話の裏付けが出来るものは持っているかと聞かれたので送られて来た手紙を見せる。手紙には癒しの国の王家の封蝋も付いてるし十分な証明になるだろう。
「陛下もお忙しい身ですので、数日お待ちいただく事になるかと思います。
謁見の日取りが決まり次第お伝えしますので宿でお待ちいただけますか?」
「分かりました。私達が泊っているのは白山羊亭という宿になります」
「承知いたしました」
王様に今日の今日で会えるとは思っていなかったから、これは想定の範囲内だ。向こうからしたら僕らはただの行商人でしかないのだし、もしかしたら1週間くらいは待たされるかも。
「じゃあ今のうちに街の観光でもしようか」
「アル様。それでしたら私は少し別行動を取ろうかと思います」
「ん?うん、良いけど無茶はしないでね」
「はい」
サラは静かに礼をするとその場から消えた。グント達から隠密の訓練を受けていたのでそれを活かそうという事なんだろう。この国はどうにも怪しい所があるみたいだから気を付けて欲しい。
「さて、癒しの国といえば教会と病院が有名なはずだけど、どっちから行こうか」
「別に急ぐ訳でもないし近い方から。ってアル。あれ」
キャロが示した先に居たのは白甲冑の騎士と白い服に白い仮面を着けた人達が居た。背格好じゃ分からないけど多分間違いなく神兵として各街から集められた人達だろう。僕らの視線の先でまるで鏡写しのように同じ動きで行進している。
「それにしてもあれは一体」
「どことなく不気味だな」
仮面のお陰で顔は見えないけど、余計に感情が感じられなくてまるで人形のようだ。さっき街の外で別れてから1時間くらいしか経ってないのに、あれが神兵として祝福を受けた状態って事なんだろうか。見た感じ確かに魔力量は上がってるから多少は強くなってるんだとは思う。
「あれはどこに向かっているのでしょうか」
「あっちは街の外だね」
どうやら折角王都に来たのに祝福を授けたらまた外に行くらしい。前のお爺さんの話からして魔物の討伐に向かったと見て間違いないだろう。僕は頭の中でこの国の地図を思い浮かべた。彼らが向かうのは北東の門。その先にあるものと言えば、主要な街もあるけど何より剣の国がある。
……まさか剣の国に戦争を仕掛けるつもりか? いや、癒しの国と言えばむしろ隣国との外交で安定と繁栄を築いている国だ。自分から積極的に攻めるとは思えない。
「まだ時間があるだろうし、ちょっと偵察に行ってみようか」
「うん」
「分かりました」
まずは彼らの後に続いて街を出る。そこから、彼らが向かう方向を確認して一気に追い越していった。なにせ彼らはまた白い馬車に乗って移動するみたいだから後をついて行ったら何日掛かるか分かったものじゃない。
そうして全力で駆け抜けること半日。位置的には剣の国との国境付近だ。そこで僕らの視線の先では派手な戦いが繰り広げられていた。
「魔物の群れと、それに突撃していく集団?
アル。あれは一体何なんだ?」
キャロが不思議に思うのも無理はない。なにせそれは真面な戦いと呼べる代物では無かったのだから。
悠然と待ち構える魔物は先日僕が倒した熊の魔物と同程度の、つまりかなり強力な魔物だ。神兵と呼ばれている白い服と仮面を着けた人達では全力で魔力強化を行っても傷をつけられるかどうかと言ったところ。なのに、神兵たちは果敢にも突撃していく。
「うおおおおっ」
「グアアッ」
雄叫びを上げながらぶつかり合う1人と1体。普通に考えれば人間の方が弾き返されて叩き潰されて終わりだろう。しかし実際にはそうはならなかった。
どかあぁぁん!!
まさかの爆発だ。ぶつかる瞬間に神兵の方の魔力が1点に集中したと思ったら爆発し魔物もろとも吹き飛んでいた。強力な肉体を持つ魔物もたまらず地面に崩れ落ちていた。
まさに一死一殺というのかな。そんなことが1人だけじゃなく神兵として集められたほぼ全員がやっていた。いや、やらされていたと言うべきか。これじゃあまるで処刑場だ。
「あ、そっか。
それでこの国には盗賊とか犯罪者が極端に少ないんだ」
「どういうことだ?」
「多分だけど最初に神兵に選ばれたのが犯罪者とか国にとって不要だと判断された人達なんだよ。
その人達を魔法か薬で洗脳して意思を奪い、こうして自爆特攻させてるんだ」
問題は倫理的にどうなんだという話だけど、そこさえクリアできるなら確かに手っ取り早く国の膿を取り除くことが出来る。僕がやるかと問われたらやらないけど。
「じゃあ前の街で集められた人たちも犯罪者だったって事?」
「どうだろうね。見た感じ普通の人達だったけど。
もしかしたら犯罪者が足りなくなったから一般からも徴収してるのかもしれない」
まさに命を道具としか見ていないような所業だ。癒しの国でこんな事が行われているなんて自分の目で見ていないかったら信じられなかっただろう。街の人達は、恐らく知らないのだろうな。
だけどこうなると僕を呼んだ理由は一体なんだ?




