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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第4章:混沌に蠢く求道者
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98.癒しの国の選ばれし者

 2桁を超える盗賊団の討伐と、2桁を余裕で超える魔物の討伐と、2桁近い廃村を経て僕たちはようやく癒しの国へと辿り着いた。


「魔物の襲撃がぴたりと無くなったね」

「そうですねぇ」


 それまであった魔物の襲撃が無くなり、よく言えば平和、悪く言えば不気味な静けさを僕らは感じていた。といっても最近が特に魔物が多くなっただけで、思い起こせば以前はこれが普通だったんだよな。

 あれ、ということは癒しの国では魔物の狂暴化とかが起きてない?いやそれだと手紙の話が嘘になるか。


「一度街に入って情報を集めた方が良いかもしれない。

 悪いけどキャロとエンジュは街の外で待機してもらっていい?」

「うん、わかったぞ」

「何かあればすぐに駆け付けます」


 2人に見送られながら僕はサラを連れて見つけた少し大きめの街へと向かった。

 街の外門には商人や旅人の列が出来ている。護衛をほとんど連れていない様子からしても街道は安全だったと考えられる。

 そして、彼らに共通していたことが1つ。それは首からぶら下げているタリスマンだ。


「あれは、新アルフィリア教のタリスマンだよね」

「ええ、そのようです。どうやら門を通る際に通行証代わりに見せているようです」


 まさか街ぐるみで新アルフィリア教に染まっているのか?いや、この感じだと国教が新アルフィリア教なのかもしれない。という事は新アルフィリア教に入信していないと街に入れないかもしれないな。

 幸いにして僕の手元には以前司祭から頂いたタリスマンがあるし、それを複製したものも幾つかある。


「次の方ー」


 列に並んで順番が来たので僕たちは前の人達がやっていたのと同じようにタリスマンを見せた。すると特に何も言われずに通されたんだけど、これ門番の意味あるのかな。

 街の中に入れば平和そのもの。市場の商品も豊富だし人々の雰囲気も明るい。

 ただ気になるのは、誰もが身に着けているタリスマンの存在だ。僕が持っているタリスマン同様にどれもが吸魔の魔道具になっていて微弱ながら装着者から魔力を吸い取り続けている。そして吸い取られた魔力はタリスマンに留まらずにどこかに流れて行ってるな。


「行ってみよう」

「はい」


 どうやら僕ら以外にこの魔力の流れに気が付いている人は居ないようで誰も気にしていない。僕らは周りから変に見られない様に何食わぬ顔で魔力の流れる先に向かって行った。

 そこにあったものは広場と噴水。そして女神像。恐らく新アルフィリア教の女神フィリスなんだろうな。見た目からして最近のものではなくもう何十年も前に造られたものっぽい。その女神像の元へ街中から魔力が運ばれているのが見て取れた。

 なるほど、ただの飾りではないということか。でも魔力を集めてどうするんだ?例えばこれが街全体を護るための結界を張っているんだというならよく分かるんだけど、その様子も無かったし。


「やあお前さん。随分と熱心にフィリス様の像を見ておるのぉ」


 そう声を掛けてきたのは腰も曲がったお爺さんだった。どうやら僕らがじっと噴水の女神像を見てるから気になったのだろう。


「こんにちは、お爺さん。

 立派な女神像ですね」

「そうだろうとも。なにせこの街が出来た時からある街の象徴だからね」

「そうだったんですか。

 僕ら田舎の村から出てきたばかりで」


 とお爺さんと挨拶を交わしていたら通りの向こうから謎の一団が歩いてくるのが見えた。先頭を歩くのは真っ白な全身鎧を着た騎士が3人。その後ろには普通の街人に見える男女が10人位続いている。

 彼らが近づいてきたのに気が付いたお爺さんは道の端に移動して頭を下げた。周りを見れば他の人達も同じようにしてるし僕らも右に倣えで同じポーズをしておこう。


「……」

ザッザッザ……


 厳かに通り抜けて行ったのを見届けてからお爺さんに聞いてみた。


「あの、先ほどの一団は何だったのですか?」

「あれは新たな神兵様達だよ」

「神兵?」

「おぉ、どうやら相当な田舎から出てきたんだね。

 神兵様とは神託によって選ばれた方々で、聖都で祝福を授かったのち世界を救済するために戦って下さっているんだ。この国が平和なのもみんな神兵様たちが魔物を退けてくださっているからなんだよ」

「そうだったんですね」


 神兵に神託と聞きなれない単語が出てきたけど、要するに一般市民から何かの方法で選んで戦場に送り込んでいるみたいだ。そんな碌に訓練も行っていない人達がまともな戦力になるとも思えないけど、そこは祝福?とかいうので補っているのだろうか。

 彼らの足取りを追えばなぜこの国が魔物の恐怖に曝されていないのかが分かる気がする。


「サラ、彼らを追うよ」

「はい」

「じゃあお爺さん、僕らは行きますね。色々教えてくれてありがとう」

「ああ、気を付けて行きなされ。女神様のご加護がありますように」


 僕らは一度街を出てキャロ達と合流し、神兵と呼ばれた人達の後を付けることにした。

 彼らの乗った馬車は一目でそれと分かるように真っ白だ。清廉潔白さの象徴だというのは分かるんだけど何もかも白尽くしで目が痛くならないんだろうか。ともかく向かう先は癒しの国の首都、通称聖都のある方角だからそこで祝福を受けるという話は間違ってはい無さそうだ。


「……にしても平和だね」

「はい。魔物も盗賊も見当たりません」


 癒しの国だから治安が良い? まあ否定はしないけど、それでもどんなに清く正しい国でも貧困層や悪人は居ても不思議じゃない。悪人は例え根絶やしにしたとしてもまるで世界のバランスを取るように善人だと思っていた人が悪人になるのが世の中だ。つまり今のこの国はどこか普通じゃないって僕の心が訴えている。その答えが多分、僕らの前を走る白い馬車にあるのだろう。

 


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