90.むかしむかしのその昔
いつもありがとうございます。
この章はいくつか話のルートが分かれられるのでちょっと難航中です。
少し更新間隔開くと思いますが気長にお待ちください。
それは私達が幾つもの世界を渡り歩いた時の事。
ふと何かを思い付いたように母が私達に問いかけてきた。
「あなた達は、知的生命体が永く存続するために最も必要なものは何だと思いますか?」
私達からみれば全知全能の存在である母の言葉に、一瞬考えはしたもののすぐにそれぞれ答えを出した。
「知的生命体同士で助け合う慈愛の心です」
「圧倒的な力を持つ統率者です」
「協力して立ち向かう敵の存在です」
三者三様まったく違う答えになった。だけど母も、そして僕たち自身もどの回答を否定することは無かった。それらは確かにこれまで見てきた世界で見て来たものだからだ。ただ同時に、どの世界も結局は遅かれ早かれ滅びの時を迎えていたが。
私達の回答を聞いた母はにこりと笑った。
あ、これは何か企んでる時の笑顔だ。
「では実際に今度の世界で試してみましょう」
「試す?どうやってですか?」
「あなた達の眷属を送り込みます。
それぞれの眷属がそれぞれの答えに沿った行動を取るようにしておいて、誰の眷属が一番存続に貢献するか勝負させてみるのです」
勝負、か。母にしては珍しい。いつもの母ならありのままを受け入れるだけでそこに優劣をつける事は滅多にしない。まして私達を競わせるなんて初めてではないだろうか。それだけ今回の問いかけは重要な意味を持つという事なのか。
この話を聞いて一番乗り気なのはベータだった。
「よっしゃ。なら最高の眷属を送り出して俺の答えがアルファより優れてるところを見せ付けてやるぜ」
「いやベータ、僕の存在を忘れては困るな。
まぁ言っても、敵とはつまり倒される者のことで、それが知的生命体を滅ぼしてしまう危険性も無きにしも非ず。
そうなりそうな場合はベータの眷属の力で盛り返してもらう事も必要になるけど」
ベータだけじゃなくガンマも楽しそうなのは、母に自分たちの良いところを見せれる格好のタイミングだからかもしれない。
盛り上がる2人に対して私だけいつも通りなことに目を付けた母が聞いてきた。
「アルファはどうです? それともあまり自信がありませんか?」
「自分の出した答えが間違っていたとは全く思っては居ません。
だけどまぁ張り切りすぎるのも良くないかなと思ってます。
頑張るのはあくまで僕らの眷属であり、その世界に住む者たちなのですから」
「ふふっ、なるほど」
実際、以前私達があれこれと介入した世界は、その力に耐えきれずに早々に崩壊してしまった。だからこそ今回は眷属を送るに留めるのだろうけど。
そうして程なくして見つかった新しい世界に私達はそれぞれの眷属を送り込んだ。
「そうそう。言い忘れていましたが、私も私なりの答えを持たせた眷属を送り込みました。
ふふふっ、さて一体誰の眷属が最後まで残るでしょうね」
「「げげっ」」
母の眷属とか絶対まともな筈がない。
「ちなみに母が思う最も必要なものって何ですか?」
「ん~秘密」
いたずらに成功して楽しそうな母とげんなりする私達。そうこうしている間にも目の前の世界では幾つもの知的生命体が生まれ、時にぶつかり合ったりもしながら成長を続けていた。
「私達はこれ以上手出しは無しですか?」
「ええそうね」
「って、俺の眷属がちょっと違う方向に進化してるし」
「ああっ、僕の増殖した眷属の一部がベータの部下みたいな動きをしだした。
知的生命体が良い感じに数を減らしてるけど滅んでないからいっか」
「いや2人の眷属が協力したら他の生命体じゃ太刀打ちできないんじゃない?」
「そこはほら、アルファの眷属が頑張れば良いんだよ」
「慈愛の心に戦闘力的な強さを求められても困るんだけど。
それによく見ればガンマの一部が私の眷属とも合流してるな」
「相変わらず知的生命体の行動パターンは俺達の予想を無視してくれる」
「だけどそうじゃないと面白くないよ」
ああでもないこうでもないと話し合う私達を少し後ろから母が嬉しそうに眺めていたのに気付いたのは、その世界が始まって何百年後の事だったか。




