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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第3章:錆びついた平和の騎士団
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83.一足先に領都に戻ります

 無事に町で皆が休めるように手配した後、僕はケンテン副団長に会いに行った。


「夜遅く疲れている所すまない。少し話がしたかったんだけど大丈夫?」

「もちろんです。私こそこちらから王子の元に向かって良いものか悩んでいた所です」


 僕の突然の来訪にも快く迎え入れてくれたので僕らは机を挟んで話し合うことにした。


「話というのは明日からどうするか、ということです」

「それは怪我人をこのまま領都に運ぶのか、それともある程度回復するまでこの町の治療院に留まるか、ですね。

 さて、正直重傷者に関しては余り動かしたくないというのが本音です」

「そうですね」


 幸いもう命の危機にある人は居ない。それに今すぐ領都に戻らないといけない理由もない。であるならば無理に移動させる必要はないのではないか、という話になる。

 ただここはそれ程大きな町ではないので、連れて来た重傷者を収容するのは厳しい。ベッドは間違いなく足りてないから近くの宿屋を借りて往診に来てもらうしかない。それなら多少無理をしてでも領都に戻った方が篤い看護を受けられるのではないかという話にもなる。


「ただ、いずれにしても僕たちは明日の朝までにはここを発つ予定です」

「理由をお聞きしても?」

「先にティーラ達が搬送したという重傷者が気掛かりですので」


 ティーラ達が多少無理をしてでも領都まで連れて行って治療を受けさせた方が良いと判断したほどの重傷者だ。放っておけば死に至る程の傷だったのだろう。そうなると仮に傷が何とかなっても病気の方の心配も出てくる。自然の熊が魔物化した分はともかく、直接瘴気が魔物に変化したモノたちはかなり毒性が強かったように思える。

 僕の隊は事前に薬草で毒抜きしつつ魔物の肉を食べることで毒への耐性も高まっていたけど子爵家の騎士団は通常の魔物ハンターが使うような耐毒装備も持ってはいなかった。そう考えて行くとがっつり毒に冒されていた場合、1週間以内に治療しないと酷い後遺症が残る恐れがある。

 副団長には毒の危険性だけ伝えて僕らが早く帰ることに納得してもらった。


「確かに野営地で見せて頂いた王子の毒に対する知識は確かなものでした。

 であれば、王子には一刻も早く領都に戻って頂くべきでしょう。

 私達の事はお気になさらず。

 ここは私達の地元ですから、この町出身の者もおりますしどうとでもなります」

「なるほど、分かりました」

「まあ私としては今から領都に戻った後の始末書を書くのが億劫ですが。

 なにせ王子の捜索の為にティーラ殿の制止を無視して森に入ったあげく重傷者多数。

 しかも当の王子は怪我ひとつなく戻ってこられたのですから完全に私達の無駄足。

 結局助けるはずが逆に助けられて逃げ帰ってくる始末ですからね。

 これを素直に報告したらどうなることか」

「心中お察しします」


 降格か酷ければ騎士団からの除籍という可能性もあるかもしれない。子爵はそれなりに人格者だったので死者が出なければそこまで厳しい罰は下さないと信じたいがそこは僕が口を出す事でもない。


「では僕らは一足先に領都に戻りますので、こちらの後の事はお願いします」

「ええ。王子も気を付けて」


 最後に握手を交わして僕は副団長の部屋を出た。すると当然のように部屋の前で控えていたサラが僕ににっこりと笑いかけた。


「お疲れ様でしたアル様。こちらは皆、準備が出来ております」

「うん。やっぱり僕の考えはお見通しかな」

「アル様ですから」


 ここで何の準備?ととぼけるのは無意味か。

 僕は別にここに来る前にサラに何か言付けをした訳ではない。だけど経験則というか普段の僕ならどう行動するかを考えればいつも一緒に居るサラには手に取るように分かってしまった事だろう。

 外に出れば僕の連れて来た騎士団の皆も静かに整列していた。


「みんな、疲れている所済まないが、これより領都に向かう。

 町の皆の安眠を妨害しないように静かにね」

「「はいっ」」


 副団長には明日の朝までには出るって伝えたから別に今すぐ出ても嘘を言った事にはならないだろう。

 重傷者たちの事を考えれば半日でも早く治療が行えた方が良いし、今から出れば明日の早朝には到着するだろう。

 ただ実際に治療を行うのは僕だけなので実は騎士団のみんなは後からゆっくりと追いかけて来てくれても良かったんだけど。


「王子一人に無理をさせては騎士の名折れですから」


 ということらしい。

 僕好みの騎士道精神が培われ始めているようでちょっと嬉しい。

 でも騎士の訓練課程に夜間行軍というものはないので、みんな暗闇の中を走ることに慣れていなかった。これは今後の課題だな。僕と一緒に行動するなら今回みたいなことは今後もあるだろうし、光の届かない深い森や洞窟に赴くことだってあるだろう。


「みんな折角だから訓練も兼ねて走ろう。

 暗闇の中では明かりを灯して視界を確保するっていうのは一般的な話だけど、これは同時に敵に自分たちの位置を知らせることにもなる。

 上級者になれば空気の振動とかから周囲の状況を把握できるんだけど、もうちょっと楽な方法として目に魔力を集中させることで魔力を視れるようにすることが出来るんだ。

 試しにやってみて欲しい」

「「はい。……おぉ」」


 元々魔法の訓練や魔力強化を使っていた彼らだ。その応用で目に魔力を集中させるのはそんなに難しくはないだろう。最初の内は自分の魔力と周囲の魔力の見分けがつかなかったりもするけど、少しすれば慣れる。


「あの王子。明るすぎる場合はどうすれば良いんでしょうか」

「自分の魔力を絞るか、逆に強めて防護膜みたいにして受光量を調整するか、だね。

 あ、それと。これも結局魔力が視れる相手からはこちらの姿が丸見えだから注意してね」


 明かりを灯すよりかは目立たないけど、分かる相手には遠くからでも分かってしまう。


「あれ、王子の姿が視えないんですけど」

「そりゃあ僕は放出する魔力をギリギリまで抑えてるからね」


 基本的にただ立っているだけでも身体から魔力は流れ出てしまうものだけど、常日頃から制御していれば漏れる魔力を抑える事だって出来る。これにより魔力の温存にもなるし今みたいに魔力視から隠れることも出来るって訳だ。


「あくまで魔力視は補助だと思って。

 将来的には気配と直感で周囲の状態を把握できるようになって欲しい」

「「……」」


 そこまで行くと達人級ではあるんだけど、敵だって正面から来るだけとは限らないからね。彼らにはいつ何時敵に襲われても大丈夫なようになって欲しいと思っている。





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