表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第3章:錆びついた平和の騎士団
76/131

76.心許ないので増援を

 翌朝未明。遠征中とは言え、基礎訓練を欠かす訳にはいかない。ということで街の外周をぐるりとランニングすることにした。


「2日ぶりの大きな街だからって、昨夜は誰も飲み過ぎなかったみたいで安心した」

「まぁ流石に、なぁ」

「朝一でこうなるだろう事は目に見えていたし」


 うん、感心感心。任務中にそんなへまをする人は居なかったか。まあ仮に二日酔いでもロープを腰に巻き付けて走らせたとは思うけど。


「今日中に魔物がでる山の麓まで行きたい。

 なので皆は朝食を食べ終えたら先に出発してて」

「アル様はどうなさるのですか?」

「朝食ついでに軽く子爵と打ち合わせしてから行くよ」

「分かりました」


 ランニングを終える頃にはだいぶ明るくなってきた。この時間帯ならパン屋を始め朝食を出すお店は開いているだろう。僕は朝食に向かう皆と別れて領館へと向かった。

 中に入ったところでばったり子爵と合流した。僕が外から帰ってきた事に少し驚いてるようだ。


「おはようございます王子。随分と朝が早いのですね」

「おはようございます。早朝ランニングは気持ちが良いですよ。

 子爵も執務ばかりでは疲れるでしょうから偶には走るのも良いと思いますよ」

「はっはっは。そうですな。

 最近お腹が出てきたと娘から突かれてますからな」


 言って子爵はそこまで太っては居ないと思う。もしかしたら服の上からと中は大きく違う、なんて事もあるかもだけど。


「それよりもまずは朝食にしましょう」

「そうですね」


 僕たちは揃って食堂に向かえば夫人とイラインさんが既に座って待っていた。あ、イラインさんはちょっと眠そうだ。朝が弱いというよりも多分いつもより早い時間に起こされた感じかな?


「おはようございます」

「おはようございます、王子」

「……はっ、おはよう、ございますっ」

「……」


 若干寝ぼけ気味だったイラインさんの挨拶に夫人から鋭い視線が飛んでいた。あれは恐らく後でお説教コースじゃないかな。頑張ってもらおう。

 ともかく朝食を摂りながらこれからの話を子爵と話していく。


「王子。街の兵士からの報告では、王子は今回、騎士を30名程度しか連れてきていないそうですが間違いありませんか?」

「ええ、その通りです」

「失礼ですが、我が領に出没しているのは熊の魔物です。

 いくら王都の騎士とは言え、30名程度ではちょっと心許ないかと思われます。

 ですので我が領の騎士200名も同行させましょう」


 遠征先の領地が抱えている騎士団が参戦するというのは、当初から予定されていたことだ。なにせ本来ならこの領の問題はここの騎士団で対処すべき問題なのだから。

 あと同行理由についてだけど、仮に僕が連れて来た騎士が1000人だった場合は「我が領の騎士も経験を積むために同行してもよろしいでしょうか」みたいな言い回しになってたと思われる。

 この申し入れを断るのは子爵の面子を傷付けることにもなりかねないので受けるしかない。


「その200人の中に纏め役が1人は欲しいのですがお願いできますか」

「もちろんです。副団長を同行させることにしましょう」

「ありがとうございます。

 後は、そうだ。魔物ハンターの動向を知ってたりしませんか?」


 もし仮にハンターが先に山に入っていたとしたら彼らの獲物を横取りする心配が出てくる。基本的にはお金で解決出来るんだけど、時々プライドが云々って言い出す人も居て面倒くさい事にもなりかねない。

 どちらにしても面倒が少ない方が良いのは間違いないからね。


「それなのですが」

「はい」

「多くの魔物ハンターが北のテッカンド伯爵領に向かったという報告を受けています」


テッカンド伯爵領。つまり今回ゴブリンが大量発生してツビーが討伐に向かった場所だ。事前にギルドを通じて依頼を出しておいたけどちゃんと動いてくれてるみたいで良かった。


「であれば僕の活動とぶつかることは無さそうですね」

「ええ、ですが裏を返せば魔物討伐の専門家が居ないと言うことになります。

 くれぐれも怪我のないようにお気をつけください」

「はい。お預かりする騎士は極力無傷でお返しします」

「え、いえ、王子の心配なのですが」

「え?」

「んん?」


 話が噛み合わなくてお互いに首を傾げる。確かに世の中、絶対に安全なんてことはない。なんの前触れもなく空から石が降ってきて運悪く頭に直撃して死んでしまうこともある。だから常時最低限の警戒はすべきなんだけど、子爵の心配は別な気がする。


「えっと、熊の魔物ですよね。

 進化個体が確認されてたり、別の龍種とかが混ざってたりしますか?」

「い、いえ。そういった報告は聞いていません」


 それにしては心配しすぎな、ってそうか。子爵は魔物の実力を報告でしか聞いてないんだから分からないんだ。


「大丈夫ですよ。

 熊の魔物くらいなら僕の連れてきた騎士が3人も居れば楽に倒せます」

「そ、それ程までに王都の騎士は精強なのですか」

「それに多くても100体位でしょう。

 群れる種ではないので一度に相手するのは5体くらいかな。

 それならかなり余裕があります」


 これがゴブリンだったら桁が1つ増えて大変なことになるけど熊だし。彼等は群れではなく家族単位で行動する。故に子宝に恵まれても10体は居ない。だってそれ以上になると食料の確保が困難になるから。


「ではサクッと行ってちゃっちゃと終わらせてきます」

「いやそんな遊びに行くような気軽さで」

「実際そうじゃないと困りますから」


 軍隊で苦戦するということは死傷者が続出するということだ。だけどこんな事で大事な仲間の命を懸けるつもりは毛頭ない。

 朝食を終えれば既に騎士団へは連絡が行っているということだったので彼らの詰所へと顔を出してみた。


「お待ちしておりました王子」


 あ、流石に何処かの騎士団と違って全員寝坊なんてことは無かったか。


「あなたが話に聞いていた副団長ですね。

 こちらの騎士団の皆さんに対する指揮権はあなたに一任しますのでよろしくお願いします」

「は?よ、よろしいので?」

「ええ。

 王子とはいえ突然やってきた子供に顎で扱き使われるのは余り良い気はしないでしょう」

「は、はぁ。そういう事であれば」


 若干困惑している副団長だけど、お互いによく知らない同士で組むのは事故の元でしかないからこれでいい。


「では僕が率いてきた騎士団は既に現場に向かっていますので、僕ももう行きます」

「は?あの打ち合わせなどは」

「現地で」

「出撃の準備は」

「僕の分は終わっています。

 皆さんはしっかり準備した上で追いかけて来て下さい」

「は、はぁ」


 質問は以上みたいなので僕は礼を1つして出発した。

 僕達が見えなくなった後、残された副団長は呆れたように呟いた。


「……なんと無茶苦茶な。

 所詮は実戦経験のない子供ということか。

 後ろに付き従っていたメイドも主に苦言の一言でも言えれば良いものを」


 ともかく僕はサラを連れて街道を走り抜けた。早ければ皆が向こうで野営の準備を始める頃には追い付けるだろう。というか思った以上に時間が掛かってしまったので急がないと危ないかもしれない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ