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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第3章:錆びついた平和の騎士団
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64.さて何人残るかな

「では最初のお題は体力試験。皆で訓練所をランニングしましょう。

 騎士団長、僕は皆の普段のペースが分からないので最初は先頭をお願いします」

「は、畏まりました。

 では皆、私に続け!」

「「はっ」」


 ザッザッザッ。シャンシャンシャラシャラ。

 みんな装飾品の多い華美な格好だから走りにくそうだ。でもそれを抜きにしても、遅い。


「じゃあ僕らも行こうか」

「はい」

「ふふっ、心を折りにね」


 彼らが訓練所の反対側に来たところで僕らも彼らの後を追うように走り始めた。そうして1周を終える前に先頭に躍り出た僕はそのまま1番に開始地点に戻って来た。

 騎士団員のみんなはちょっと驚きつつもやりきった感を出してるのが謎だ。


「さて、様子見の慣らしは十分ですね?

 今から同じようにあと4周走りますが」

「「ええっ」」


 ええはこっちのセリフだ。なぜ4周と言った時点でざわつくの? もしかしてたった1周で終わりのつもりだったとか? まさかね。


「次は僕より周回遅れになった人は脱落と見なします。

 あ、それと先ほどは皆さん魔力による強化をしていなかったようですが、自由にして構いませんので。

 では行きましょうか。よっと」


 僕は入口横に立てかけてあった門盾と呼ばれる盾を持って走り始めた。この盾は個人が手で持つ盾としては最大の面積と重量を誇る盾だ。子供の僕では大きすぎて持ちにくいけど盾であるなら持てなくはない。

 ってあれ?サラ達以外、騎士団員は誰も付いて来ない。


「もう4周始めてますけど、皆さん棄権ですか?」

「…………はっ、いえいえ、決してそんな」

「ですよね。良かった」


 それだけ答えて僕はさっきと同じペースで走り出した。

 後ろをちらりと見れば、半数くらいは魔力強化も使って必死について来てるけど残りはみるみる離されていく。そうして1周半も走ったところで周回遅れの最後尾に追いついた。


「あー盾が大きくて前が見えないな~」

「え?うごっ」

「ぷげっ」

「あれ~誰か当たっちゃったかな~。

 そんな訳無いよね~。僕が先頭を走ってたはずだし。

 まさか誉れ高き第一騎士団の人達が2周もしてないのに周回遅れとかないよね~」


 わざとらしく言いながら、しかし容赦なく轢き飛ばしていく。ま、死にはしないだろう。

 そして3周を終えたところで前方に残っているのは20人といない。といっても全員体力切れ&魔力切れでフラフラだ。ちなみに騎士団長は早々にリタイアしている。

 さて、全員潰してしまっても良いのだけど、それじゃあ父上の依頼を遂行できないか。

 僕は大声を挙げて前を走る騎士たちを鼓舞した。


「ラスト1周だ!

 僕が走りきるまで意地でも倒れるなよ!!」

「「う、うおおっ」」


 ぎりぎり絞り出した叫び声を聞いて僕は加速する。そして追いついた人に対して、さっきは叩きのめしてたけど今度はそっと背中を押すように盾を押し当てた。だけど当然僕の速度は変わらない。するとどうなるかといえば。


「ぬおおおおっ」

「ほらほらほら。足を動かせ。止まったらひき潰すよ!」

「ふぎぎぎっ」


 強制的に加速させられる騎士団員たち。20人ともなるとちょっと重いけど、まあ何とかなるか。僕からは見えないけどヒキガエルみたいな鳴き声も聞こえるしみんな頑張ってるようだ。

 そうして僕は彼らが倒れるより速く走ることで全員を周回遅れにすることなく走りきったのだった。


「よし4周終了、っと」

「「どわあぁぁぁ」」

「あっ」


 僕が走り終えて急停止したら、それまでの勢いが止まらずに押されていた人達が向こうの壁まで飛んでいってしまった。ま、まぁ死んではいないでしょ。

 先に脱落していた人達はその様子に口を大きく開けていた。その人達に向けて僕は宣言する。


「では今あっちで伸びている者たちを1次選抜の突破者とします。

 皆さん異論はありませんね?」


 じろりと見渡せば当然文句は出ない、と思ってたけど一人だけ手を挙げた。


「待ってください。私は騎士団長です。

 私を抜いて選抜などありえないでしょう」

「それを言ったらこんな簡単な選抜試験に受からない者に騎士団長が務まるのか疑問を覚えるのですが」

「いえいえ、騎士団長に必要なのは体力ではありません。皆を率いる統率力と由緒正しき血統です」


 いや統率力は分かるけど血統は関係ない気がする。


「つまりタージ騎士団長は僕には20人を従える程の統率力も無いと言ってるのですね。

 それとも僕に流れる血は卑しきものであるということでしょうか。

 王族としてこれ程の侮辱を受けたのは生まれて初めてです」

「いいいえそんな私は決して!

 私は別に王子の事を言っているのではございません。

 長年皆の上に立ち、彼らの性格をよく知る私であればより上手に彼らを使えるだろうと言うだけの事」


 使える、ねぇ。部下を使うと表現する時点で彼に統率力とかカリスマとかは無い気がする。少なくとも僕は彼の指揮の下、死地に飛び込めと言われても御免だ。でも口で言っても伝わらないんだろうな。


「ふーん、そう。

 じゃあ試してみようか。僕が彼らを統率出来るかどうか」

「試す、ですか。どのようにしてでしょうか」

「分かりやすく模擬戦と行きましょう。

 行うのは1月後。場所はここか、狭かったら外の平原を使いましょう。

 僕は側近の彼女らと一次選抜を突破した彼らの中から希望者を集めます。

 騎士団長も残りの第一騎士団の中から参加者を集めてください。

 ただし他の騎士団や傭兵など外部の者を呼ぶのは禁止にします。騎士団長のカリスマなら1万人とか余裕で集められるでしょうけどそれでは騎士団の訓練になりませんからね。

 20対180人とおよそ9倍差ですが王家の血統を証明するなら丁度良いハンデでしょう。

 あ、参加するしないは個人の判断に任せます。いくら模擬戦とはいえ王家(ぼく)に武器を向けたくないという人も居るでしょうからね。僕は全く気にしませんが」


 僕の話を聞いて騎士団長は少しだけ考え、何か思いついたのかニヤリと笑った。


「承知いたしました。

 ところで王子。その模擬戦は勝者に何か褒美などはあるのでしょうか。

 そういうものがあった方が盛り上がると思いますよ」

「ん?それもそうですね。分かりました。父上に話は通しておきましょう」


 いや訓練の一環として模擬戦があるのだから普通に考えれば褒美も何もある訳が無いんだけどね。どうもこの騎士団長は墓穴を掘るのが好きなようだ。



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