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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第3章:錆びついた平和の騎士団
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62.父上との会談(仕事話)

 翌日。僕は父上の執務室へと来ていた。なんでも呼びに来た人によれば、


『報告は聞いているぞアル。

 なかなか優秀だそうだな。ちょっと仕事手伝え』


 だそうだ。いや王太子にもなっていない僕が国王陛下ちちうえの仕事を手伝って良いものだろうか。ま、流石にその辺りは父上が弁えてて僕に回してもよい書類だけを回しているものと思われる。

 そして挨拶もそこそこに座らされた僕の目の前にはうずたかく積み上げられた書類の山。えっとなになに、地方からの税収報告書?……本当にこんなの僕に回って来てて良いのだろうか。

 僕はちらりと横目で見ながら話し掛ける。


「父上。仕事の片手間で申し訳ないのですが、アルファス無事に帰還致しました」

「うむ。元気そうでなによりだ。どうだったバックラー伯爵領は」

「とても落ち着いた土地柄で伸び伸びと過ごさせて頂きました」

「それはよかった」


 これは各地の教会からの陳情書。アルフィリア教の教会から先日の通達のせいで寄付金が集まらなくて困っている、か。先日の通達っていうのはあれだ。僕が父上に出した手紙の結果。父上は簡単に「アルフィリア教は神に祈りを捧げる宗教ではない。よって神の為に寄付を集めたり献金する行為を禁じる」と国内に通達を出した。それによって一般市民からの寄付が大幅に減ったのだろう。

 ちなみにアルフィリア教に教会があること自体がおかしな話なんだけど、そこまで潰すとなると影響が大きくなり過ぎるので今回は見送ったようだ。


「ところでここ数年アルファ商会という商会がだいぶ勢力を伸ばしているそうだな」

「父上の耳に入るとは中々ですね」


 何でもない事のように話してるけど、ここで話題に出すって事は要するにお前が関わってるのは知ってるぞって話だな。


「王都の騎士団でも常備薬を確保すべきという話が出ているのだ」

「それはそれは。安く卸させる代わりに行商中の警護をするとか良さそうですね。

 赤字にならない程度なら行商人の方も頷きやすいでしょう」

「ふむ、それはいいな。騎士団を遊ばせておくのも勿体ないしな」


 さらさらと紙に何かを書き込んで判を押す父上。どうやら僕の意見が通ってしまったようだ。


「それで僕を王都に呼び戻した理由は何ですか?

 僕に呪いを掛けていた犯人が分かったとかでしょうか」

「それはずっと前から判っている。

 ではなく、お前ももう10歳だ。ぼちぼちお披露目しなければならん」

「あぁ」


 そう言えばそんな話もあったか。すっかり忘れていた。

 この国では10歳はまだ子供だけど、正式に社交界に出れるようになるのが10歳からだ。逆に言えば10歳からはその言葉に責任がある。だから貴族の親は頑張って10歳までに子供に常識を憶えさせるんだ。……今誰かがくしゃみをしたような?まあいいや。


「はぁ。貴族らしくお茶会やらパーティーやらに出席しろって事ですか?」

「実に嫌そうだな」

「ええまぁ」

「その点ツバイクは卒なく熟しているようだぞ」


 卒なく、あれでか。それはちょっと心配になる評価だな。


「昨日廊下ですれ違いましたが、無能な取り巻きに振り回されているようにも見えましたが?」

「ふむ、そうか。お前なら上手く手綱を握れそうか?」

「僕なら極力近づきません。それか適当な仕事を押し付けて左遷ですね。

 その仕事すら満足にやってくれるとは期待しないので、仕事をやってるフリだけさせて実働は別で作ります」

「そこまで酷いか」

「まぁ実際の仕事風景までは見てないですけどね」


 でも初対面であの態度で仕事だけ出来るとは考えにくい。亜人差別っぽい発言もしてたし、基礎から再教育する必要があるだろう。そういう意識ってどうしても物事の選択に影響を与えるし。


「さてツバイクの話はまた今度として、今はお前の事だ。

 最近、魔物の活動が活発になっているのは知っているな」

「ええ、バックラー領でもウェアウルフが強くなっていましたし」

「うむ。他の地域でもここ数年魔物の被害が急増している。

 そこでだ。お前には騎士団を率いて魔物の巣の殲滅を行ってきて欲しい」


 なるほど。戦争のない今の時代で初陣で箔をつけようと思ったらそうなるか。これで各地の魔物の被害が減れば出費に見合った成果と呼べるだろう。僕としても国の民が安心して暮らせるようになるなら喜んで従事するつもりだ。


「分かりました。といっても全騎士団員を連れて行く訳にもいかないので何十人か選抜して、となりますか」

「そうだな。それも出来れば第一騎士団から選出するように」

「……それも面倒な貴族のしがらみですか?」

「まあそうだ。ちなみに同時期にツバイクも第二騎士団を連れて魔物討伐に出ることになるだろう」

「そうですか」


 要するに第一騎士団と第二騎士団の見栄の張り合いか。

 王都には第一から第三まで騎士団があって第三は平民出身者が大半を占めているけど、第一と第二は多くが貴族の次男三男が在籍している。実力を伴って入隊していればいいけど、父上の様子からしてそうでもなさそうだ。これも平和な時代の弊害と言うべきかな。

 


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