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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第2章:騙られた救いの聖者
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34.地下ヘ

 さて、これで今日の最初の予定は完了なんだけど、さっき追加が入っちゃったからなぁ。それに多分あのお茶の効果ももう30分くらいはあるはずなので、すぐにじゃあさよならと言うと変かな。


「あぁ、そういえばぁ。司教様は珍しい生き物をいくつも飼っているんですよねぇ。見たいなぁ~」

「え、ああ。そうですね。しかしどうしたものか」

「見たいなぁ~。

 ほら。僕のティーラは綺麗で可愛いけど、普通でしょ?」


 渋る司祭に子供らしく繰り返しねだる。

 ちらりと横を見れば、綺麗で可愛いと言われてティーラが若干顔を赤くしている。まあお世辞ではなくティーラは顔立ちは整ってるし、騎士団で動いてるお陰かスタイルも引き締まっていて格好可愛いのは間違いないからね。

 それと司祭が言葉を濁したのは多分、子供とは言え初対面の僕にどこまで見せても良いものか悩んでいるんだろう。なにせ奴隷も誘拐も密輸も密猟も犯罪行為だからね。普段ならお得意様にだけ見せる限定商品なんだと思う。その分、お値段も張るし彼らの一番の資金源だろう。


「お父様の所にも居るんだけどね。僕個人のもほしいなぁと思うし。

 お父様も常々良いものには金に糸目をつけるなって言ってるからお願いしたら幾らでもお金出してくれると思うんだぁ」


 ここでダメ押しに父親も理解者ですよアピール。実際にお金を出すのは家長である父親の筈だし、その父親も腹に一物抱えているとなれば自分が問題になった時には父親も罪に問われるのだからむしろ良い隠れ蓑が出来るのではないか。

 多分そんな感じの打算を急ぎ頭の中でした司祭は首を縦に振った。


「分かりました。では特別にお見せしましょう。

 普段他の人には見せない事にしているので、私達だけの秘密にしておいてくださいね」

「わかりましたぁ。

 まだ時間は30分以上あるのでぇ、じっくり見たいですねぇ」


 チラリと窓の外へ視線を向ければ何かが動いたけど、間違いなく司祭は気付かなかっただろう。

 そうして僕たちは応接室を出て地下へ。

 階段を降りれば若干すえた臭いが僕らを迎えてくれた。


「風の通りが悪いですからね。多少臭うのは我慢してください」

「ばいぃ」


 わざとらしく鼻を抑えながら扉を開くのを待ち、司祭に続いて進めば小部屋が幾つも並んだ廊下に出た。その小部屋の幾つかからは生き物の気配がするから部屋ごとに何かを監禁しているんだろう。それぞれの扉には中を覗けるように小窓が付いている。


「さて、まずこちらの部屋には珍しい白い狼を捕えてあります。

 ふむ、どうやら今は寝ているようですな」


 左手一番手前の部屋か。なるほど、人ではないなと思っていたけど狼か。


「さあどうぞ。ただしお静かに。起きて暴れると危険かもしれませんからな」

「ティーラ、肩車して」

「はい」


 僕の身長では小窓まで届かないのでティーラに持ち上げてもらって中を覗いた。するとなるほど、通常の狼よりも一回り以上大きくて白い狼が鎖で繋がれていた。今は眠っているかのように伏せの状態でピクリとも動かない。

 あ、でもこれ絶対に起きてる。というか僕の視線にも気付いてるな。ならちょっと挨拶しておこう。


『こんにちは』

『!? ほう、小僧言葉が分かるのか』


 ぴくりと耳が動いて返事が返って来た。

 ちなみに僕らは声は出してはいない。魔力に意思を乗せて飛ばし合っているんだ。この方法、実は人間のように声帯が発達している種族は余り使えない。なにせ普通に会話で済んでしまうから。むしろこの狼のように知性は高いけど器用に言葉が話せない種族の方が使える。まぁ練習すれば人でも使えるんだけどあまり知られていない。


『小僧、我をここから出せるか』

『ごめんなさい、今すぐは無理なんだ』

『……そうか』


 それだけ言うと白い狼はペタンと耳を閉じて居眠りモードになった。どうやらこれ以上話すことは無いってことだろう。僕も他の部屋も見ないといけないのでそっと小窓から離れた。


「次は先日手に入ったゴブリンの娘です。

 もっとも、この辺りではゴブリンは珍しくないでしょうが」

「あぁそうですねぇ」


 いや、珍しくはないけど。その表現からして野良ゴブリンじゃなくゴブリン王国の住民だよね?一歩間違えれば国際問題に発展しかねないんだけど、まぁ分かって無いか。

 小窓からちらりと覗けば、やはり頭にバンダナを巻いた少女が簡素なベッドの上で丸くなって寝ていた。歳の頃はサラとそれほど違わないと思う。ぱっと見は怪我した様子はないので薬か何かで眠らされて攫われたのかな。


「そして最後がこちらです」


 部屋の中に居たのは僕より小さな女の子だった。腰まで延びた黒色の髪に白い肌と特徴的な耳。


「まさか、エルフ?」

「そのとおりです」


 エルフはいくつかある結界の張られた住処の森からあまり出てくることはない。なので王都とか大きい街ならともかくバックラー伯爵領みたいな外れの領地で見かけることは稀だ。完全にゼロって訳じゃないけど。

 まあそれは今はいいや。それよりもとっても気になることがある。


「えっと、なんでこの部屋だけこんなに豪華なの?」

「それは勿論、姫のお部屋ですから」

「「姫?」」


 思わず僕とティーラの声が被ってしまった。

 えっと、この地下って奴隷とか誘拐してきた人達を監禁しているんだと思ったんだけど。それともエルフの国のお姫様って事なのかな?それだとしてもなら上の部屋に住まわせれば良いじゃないかと思う。チラッと見ただけだけど、上質なベッドにソファ。テーブルにはティーセットまであった。


「あら私に客かしら。

 そんなところに居ないで入ってきなさい」


 部屋の中から聞こえてきた声に顔を見合わせる。まるでここの主人は自分だと言っているようだ。それを聞いても司祭はニコニコしてるし。



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