1-5 浴場
大浴場に着くと、安い宿に泊まるのと同じ金額を払い、浴室に向かう。
扉を開くと、白い湯気が立ち込め、身体を包み込む。
中に進むと、個人スペースで男たちが草で身体を擦っていた。
俺も空いている場所を見つけて座ると、
(この草はなんじゃ?)
いつもは後ろにいる霊体が、俺より前に出て、目の前の草を指して言う。
(これは匂い取りだ。これで身体を擦ると、付いていた臭いが取れる)
(ほほう、石鹸のようなものか)
(石鹸はちょっと高いからな。脂までは落とせないけど)
そう言って、草で身体を擦る。
ある程度拭き終わり、軽くお湯で身体を流してから、湯船に浸かる。
「はぁ……風呂って、こんなに気持ちがいいものだったんだな」
普段は、高くはないがアユムには手が出せない金額である大浴場。
そこに入れたことへの満足感から、思わず独り言が漏れる。
後から入ってきた男たちよりも長く浸かるほどには、喜んでいる様子だった。
(リラックスしているところ申し訳ないが、今後のプランを伝える)
突然の声に、現実へ引き戻される。
(どんなプランだ?)
(まずはこの後、武器屋に行く。一旦そこでお主に合う武器を見繕い、それに手を馴染ませる。同様に防具屋にも行く。装備を揃えて動けるようになったら、ダンジョンの下層へ行く。まだお主はスケルトンを倒して高揚しており、下層に行こうと思っているだろうが、下層はまだ先じゃ)
思ったよりも地に足のついた計画で、アユムは驚いた。
(俺はいいけど、アヴァはそれでいいのか? 早く図書館に行きたいんじゃないのか?)
(ダンジョンと同じで、図書館も逃げはせん。それに、魔法も武器術も基礎が一番大切じゃ)
言われてみれば当然の内容だった。
だが、元々下層に行きたいという感情がなぜか湧いていなかったことに気づき、言い返そうとして――なんとなくやめた。
アユムが風呂に浸かり始めてから、後から入ってきた男が出ていくほどの時間が経ち、
(さて、そろそろ出て武器屋に向かうか)
そう言われ、名残惜しさを感じながらも湯船から上がることにした。




