2-12 アルカディア2
いわゆる、校長室。
そこにいる四人のうち三人は、互いの出方を探るように、どう話を切り出すべきか考えていた。
だが、億劫そうな態度の一人――ラルフだけは、話が進まないことに苛立ちを覚えたのか、主導権を取るように口を開いた。
「じゃあ、マリアさん。この二人を任せていいか?」
「任せるって、いつもの感じでいいのかしら」
「いいよ。別に細かいところは、あの人は気にしないから」
「じゃあ、入学の手続きはやっておくわ。けど、アルカディアの紹介と寮だけは教えてあげてね」
「だるいよー、マリアさんー」
「ちなみに道順も覚えてほしいから、“足”でお願いね」
「そんなー」
有無を言わせない態度でラルフをこき使う女性が、こちらを見る。
「あなたたち、名前は?」
「俺はアユム。彼女はグルナだ」
「そう。出身はどこかしら?」
「俺はマテリアル出身で、彼女はバサル村です」
「マテリアルっていうと、去年、セリーって子が入ってきたけど、知り合いかしら?」
「はい。セリーとは、別れるまでは仲良くさせてもらってました」
「そう。近々会うことになるだろうから、トラブルは起こさないでね」
「……? 彼女はいったい、ここで何を……?」
いわゆる、校長室。
そこにいる四人のうち三人は、互いの出方を探るように、どう話を切り出すべきか考えていた。
だが、億劫そうな態度の一人――ラルフだけは、話が進まないことに苛立ちを覚えたのか、主導権を取るように口を開いた。
「じゃあ、マリアさん。この二人を任せていいか?」
「任せるって、いつもの感じでいいのかしら」
「いいよ。別に細かいところは、あの人は気にしないから」
「じゃあ、入学の手続きはやっておくわ。けど、アルカディアの紹介と寮の案内だけはしてあげてね」
「だるいよー、マリアさんー」
「ちなみに道順も覚えてほしいから、“足”でお願いね」
「そんなー」
有無を言わせない態度でラルフをこき使う女性が、こちらを見る。
「あなたたち、名前は?」
「俺はアユム。彼女はグルナだ」
「そう。出身はどこかしら?」
「俺はマテリアル出身で、彼女はバサル村です」
「マテリアルっていうと、去年、セリーって子が入ってきたけど、知り合いかしら?」
「はい。セリーとは、別れるまでは仲良くさせてもらってました」
「そう。近々会うことになるだろうから、トラブルは起こさないでね」
「……? 彼女はいったい、ここで何を……?」
「まぁいいわ。書類処理をしておくから、明日の朝、また二人でここに来なさい」
マリアと呼ばれていた女性は、そう言って二人を追い払う。
「じゃあ、行こうか」
マリアの用が済んだのを確認し、ラルフは二人を扉の外へ招く。
開いている扉から外に出て、扉を閉める。
「はぁ、面倒ごとが増えなきゃいいけど」
そう呟きながら、マリアは「イレギュラー」と記された二枚の書類に、必要事項を書き足していく。
「じゃあ、アルカディア内の案内は、明日他の生徒にでも頼んでくれ」
「えっ? あの人が見て回れって……」
「お前もいい年なんだから、それくらいできるだろ。それに、俺がいたら厄介だろ?」
意図が分からず、頭の上に疑問符を浮かべているアユムをよそに、ラルフはさっさと歩いていく。
「ここの庭を抜けて奥に二つの宿舎がある。そこに行けば寮長がいると思うから、あとはそいつに聞け」
そう言って、ラルフは手を上げた。
「扉」
来た時に使った魔術を起動し、できた歪な空間に入る。
「じゃあな。まぁ頑張れよー」
そう言って男が消えたあと、魔術の痕跡も消え、二人はその場に取り残される。
「じ、自由だな」
「ふふ、面白い人たちだね」
「そ、そうだな。まぁ宿舎に向かうか」
そう言って、木々が生い茂る庭を、舗装された道に沿って歩く。
先ほどまでの慌ただしい流れから一転して、穏やかな時間が流れていた。
「ねぇ、アユム」
「ん? どうした」
「ここまで連れてきてくれてありがとね」
「まぁ、連れてきたっていうより、連れてこられたっていう方が――」
「ううん。私ね、あの森の中で、このままお腹空いて死んじゃうんだって思ってたんだ。でもアユムに会えたおかげで、ここまで来られたの。だからアユムのおかげ! ありがとね!」
「なんか照れるな」
顔が火照るのを感じ、グルナと目を合わせるのが気まずくなり、正面を向いてごまかす。
「ほら、着いたぞ」
そう言って、目の前の宿舎に話題を変える。
(青春じゃのう)
そこにずっといたはずの老人は完全に蚊帳の外だったが、微笑ましい風景を見ながら心中で呟くのであった。
「まぁいいわ。書類処理をしておくから、明日の朝、また二人でここに来なさい」
マリアと呼ばれていた女性は、そう言って二人を追い払う。
「じゃあ、行こうか」
マリアの用が済んだのを確認し、ラルフは二人を扉の外へ招く。
開いている扉から外に出て、扉を閉める。
「はぁ、面倒ごとが増えなきゃいいけど」
そう呟きながら、マリアは「イレギュラー」と記された二枚の書類に、必要事項を書き足していく。
「じゃあ、アルカディア内の案内は、明日他の生徒にでも頼んでくれ」
「えっ? あの人が見て回れって……」
「お前もいい年なんだから、それくらいできるだろ。それに、俺がいたら厄介だろ?」
意図が分からず、頭の上に疑問符を浮かべているアユムをよそに、ラルフはさっさと歩いていく。
「ここの庭を抜けて奥に二つの宿舎がある。そこに行けば寮長がいると思うから、後はそいつに聞け」
そう言って、ラルフは手を上げた。
「扉」
来た時に使った魔術を起動し、できた歪な空間に入る。
「じゃあな。まぁ頑張れよー」
そう言って男が消えた後、魔術の痕跡も消え、二人はその場に取り残される。
「じ、自由だな」
「ふふ、面白い人たちだね」
「そ、そうだな。まぁ宿舎に向かうか」
そう言って、木々が生い茂る庭を、舗装された道に沿って歩く。
先ほどまでの忙しい流れから一転して、穏やかな時間が流れていた。
「ねぇ、アユム」
「ん? どうした」
「ここまで連れてきてくれてありがとね」
「まぁ、連れてきたっていうより、連れてこられたっていう方が――」
「ううん。私ね、あの森の中で、このままお腹空いて死んじゃうんだって思ってたんだ。でもアユムに会えたおかげで、ここまで来られたの。だからアユムのおかげ! ありがとね!」
「なんか照れるな」
顔が火照るのを感じ、グルナと目を合わせるのが気まずくなり、正面を向いてごまかす。
「ほら、着いたぞ」
そう言って、目の前の宿舎に話題を変えて誤魔化す。
(青春じゃのう)
そこにずっといたはずの老人は完全に蚊帳の外だったが、微笑ましい風景を見ながら心中で呟くのであった。




