1-10 五層
(そういえば、イラはどこに行ったんだ?)
(さぁな。分からん。儂の探知範囲にはおらん。一緒に落ちたのなら、同じ階層にいそうなものじゃが)
落下時に受けたダメージの回復を図りながら、状況を一つずつ整理する。
この場にいないイラのことを考えても無駄だと判断し、左肩のダメージが抜けきったタイミングで、ダンジョンを戻るために進むことを決める。
(アヴァ、マッピングと索敵を頼んでもいいか?)
(ああ、任せておけ)
そう言って、索敵のリソースをアヴァに任せながら歩き出す。
ダンジョン内であることに変わりはなく、明るさもいつもと同じはずなのに、どこか薄暗く感じる。
その違和感を抱えたまま、いつでも走り出せるように意識を張りながら進む。
(止まれ)
その一言で、足が止まる。
(少し強そうな奴がおる。一旦、回り道じゃ)
言われるまま、来た道を引き返す。
(なぁ、どんなのがいたんだ?)
(スケルトンじゃが、全身にまともな防具をつけておった。剣と盾も持っておる)
(スケルトンナイトか……)
ここが五層であることを考えれば、ソルジャーより上位個体――ナイトと見て間違いない。
戦えば、おそらく勝てる。
だが、消耗は避けたい。
(今は後回しだな)
(うむ)
(次は左じゃ)
指示に従いながら、洞窟のような道を数時間歩き続ける。
何度も行き止まりにぶつかっては引き返す。
それでもアヴァの誘導のおかげで、敵と遭遇することなく進めている。
だが――
階段が見つからない。
(ここもだめか……。となると、さっきのナイトのところに行くしかないのか)
(うむ。その可能性は高いのう。ただ、奴も動いておるかもしれん)
わずかな期待を胸に、来た道を戻ろうとする。
――どごん。
半分ほど戻ったところで、巨大な爆発音が響いた。
(イラか)
(恐らくな)
敵と遭遇し、戦っているのだろう。
音の方向へ向かえば合流できる。
だが――
(出会ったら、また攻撃されるな)
非常事態を理解しているとは思えない。
リスクは避けたい。
その判断のもと、音から距離を取る。
(あれだけの音じゃ。周囲の魔物も引き寄せられるじゃろうな)
(……悪いが、イラには囮になってもらう)
そう決め、音から遠ざかるように、ナイトがいたであろう位置へ向かう。




