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魔王国の宰相  作者: 佐伯アルト
Ⅱ 魔王国の改革

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5節 エイジの肉体改造計画 ②

「うわぁ、やっぱコワイ!」


 あの提案から準備があるからという理由で、数時間後。エイジは手術台の上にいた。上半身裸で台にしっかり固定されているから暴れられないが、その所為で非常に怖い。彼は手術の経験とかないから尚更に。


「なあ、寝てて良いか⁉︎」

「激痛で寝れないと思いますよぉ」


 移植手術には、外科的手法と魔術的手法がある。今回彼が選択したのは、当然ながら後者。魔術的移植は、移植される側が最初から幻魔器を有している必要があるが、幸いそれは満たしている。逆に、こんな文明水準で敢えて外科手術を受けたいと思う奴はいない筈だ。


「鎮痛系魔術は?」

「解けたとき慣れてないから辛いですヨォー!」


 興奮している術者が、更に恐怖を煽る。前者であれば、施術者はノクトになっていただろうが、それでも切開される不安が勝った。


「いいや、麻酔系魔術かけよう。手術中暴れて、手がつけられなくなるからな」

「ではそれで! 掛けますよぉ〜、そおれ!」


 そこで魔術がかけられ、意識が途絶えた。




「……………。ううん? なっ、う、うぐああああ!!」


 起きた瞬間、痛い、とは少し違った、体の中で様々なものがひしめき合う違和感、圧迫感、そして苦痛。そういったものが、エイジの体を走り抜ける。その辛さは、特殊能力を得たことによる身体変化と同等。しかも、それが長時間持続するときた。変化度合いでいけば転移直前の方が大きいだろうが、この苦痛の差は技術の違いによるものだろうか。という考えなんかも抱く余裕がない程にキツい。


 その苦しみのあまり飛び起きようとした、が、固定されていて動けない。今の彼にできるのは絶叫し身悶えしながら、新たな性質が体に定着し、安定するまで苦痛に耐えることだけである。


「あがあああああ! しゅ、手術は、終わったんだよなあああああああ!!?」

「ええ、終わりましたが、まあ、こうなるでしょうから、しっかり固定させていただきました。ああ、手術はなかなか面白い体験でしたよぉ!」

「うぐ、うぐおお、うがああ、あああああああ!!!」




 それから約十分強。


「あがあああ……はぁはぁ………ぁぁぁ。よ、よおし、漸く引いてきた……」


 あまりに見苦しかったのか、途中からフォラスが鎮痛のような作用のある魔術を使用し、ノクトやベリアルを呼び込んでは、体に手をつけて魔力のコントロールの手伝いをしてくれた。その甲斐あって、随分楽にはなったが、声が枯れる程暴れ狂ったように叫んでいた。


 こんな辛苦を、あと何回も味わなくてはならないのか。魅力を感じていた筈の魔族化が、どんどんやりたくなくなっていった。


「ふむ、大丈夫そうですね。では、拘束具を外します」


「……鏡はあるか? 変わったところを確認したい」


「うん? ええどうぞ。鏡は隣の部屋にあります」


 言われた通り移動し、隣の部屋の大きな鏡で自分の姿を確認する。


「ん、何コレ?」


 背中と尻に何かついている。それは、翼と尻尾であった。蝙蝠のような、皮膜のある翼に、堕天使の羽の二対がついている。尻尾は先が三角に尖っているのと、猫の尻尾みたいなのが。頭には猫だか犬だかのような三角耳、そして側頭部からはやや上に曲がった角が。さらに頭の上には所々が崩れかけ朽ちたような、くすんだ輪っかがあった。そして左目に違和感があり見てみると__


「あれ、色が変わってる?」


 右目は紅く、左目は紫色に変わっている。更によく覗くと、奥に紋様らしきものが確認できる。そして、口にも違和感があり、見てみると__


「これは……牙?」


 人間のものとは思えない、大きな犬歯が生えていた。


「そうか、魔族になったんだ……って、オイ‼︎」


 あることに気づき、手術室に飛び込む。


「ん、そんなに慌ててどうかしましたか?」


「どうかしたかも何も、まさか要求したもの全部同時にやりやがったのか⁉︎」


「ええ、何か問題でも?」


「オレは! 順番に! 徐々に加えていくって言ったよな⁉︎ 死ぬかと思ったわ‼︎」


「えぇ? そうでしたっけ? まあ、無事に終わったのでいいではありませんか」


「う、うぐぐ……」


 徐々に加えていく苦しみに比べれば、とは思うが。それでもコレはちょっと酷い、と不満げである。何せ、痛みで死にかけたのだから。


「そういえば……」


 気になったことがある。魔眼になった方の目は千里眼が使えるのか。左目だけを瞑り、能力を発動させる。すると、きちんと城内を見渡すことができた。


「ようし、大丈夫だ!」


「そうですか、それは良かっ………………」


「ん、どうし__あっ」


 千里眼を使う時、目に意識を集中させた。そして同時に、つい魔力も込めたのだった。そりゃ魔眼が発動して、目があったフォラスは石化するだろう。動きが完全に止まっている。


「ええっと、どうすればいい……そうだ!」


 もう一度目に魔力を込めてフォラスを見つめる。すると彼の硬直が解け、蹌踉(よろ)めき、転んだ。


「はあ、解除できたな」


「な、何をするんですか!」


「え、えっと、ざまあみろ?」


「状態異常に耐性がある私でも硬直するなんて……なかなか強力でよかったじゃないですか」


「うん、そうだな。ところでこれ、石化じゃなくて硬直の魔眼なのか?」


「いいえ、ちゃんと石になるはずですよ。私には耐性があるからこの程度で済んだのです。魔力を込める度合いで停止や石化など、効果の度合いも変わるでしょう」


「……兎も角、酷い目には遭ったが、手術は成功という訳か。じゃあ、新たに手に入れた力を使い熟せるよう、鍛錬しなければな!」


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