5節 エイジの肉体改造計画 ①
「オレを魔族にしてくれ!」
魔導院の者達と魔王を呼び出し、エイジは開口一番そう言い放った。最近は仕事も軌道に乗ってきたので、一度大きめの休みを取り、新たな事を始めようと思い立ったのだ。
「お、おう……なんでまた、いきなりそんな事を?」
「いや〜それがですね、私はまだ魔族にはなってないでしょう? だから魔族になろうとも思いまして。今のこの体は人間のもの。魔族になれば体はより強靭に、更に魔力量が増えたり、あとはその種族としての特殊能力を得られたりもするのでしょう? それに、魔王国のナンバー2が人間というのも締まりが悪いですし。まあ何はともあれ、魔族になればもっと強くなれるに違いないと考えたからですよ」
エイジは熱く弁舌を振るう。魔族への憧れ、強さへの渇望、そういったものがあるようにも思える。
「ほう。だが、人間が後天的に魔族になれるとでも思っているのか?」
「ええ。幻魔器の移植、その付随効果として、幻魔器の主である魔族の特性を得ることができる。そういった記述を、以前魔導院の研究論文の中に見つけましてね。事前に書簡にてそのことをフォラスさんに伝え相談した結果、仮想実験により実現可能性は高いため、実際に私が試すということになりました」
このことを聞いたベリアルは驚いた。といっても魔族化の方ではなく、彼がこんなことを知っていたことにだが。
「魔族……なるとしたらどれだ?」
「そうですねぇ……例えばインキュバスかな」
「何故、よりによってインキュバスなんだ? インキュバスは下級の魔族だぞ」
「インキュバスは夢を見せたり、入り込んだり、操作したりと自由でしょう? あと幻を見せる力。加えて自他の性欲の察知とコントロール。これはきっと役に立つ事間違いなし! 例えば、戦闘中に幻影を織り交ぜて相手を撹乱したり、催眠や洗脳で諜報したり、悪夢による精神攻撃なんかもできてしまいますから」
「ふむ……確かに、お前との相性はいいな。戦闘知能の高さに、特殊能力の応用力があるのだ。相当厄介になるに違いない」
「まあ、出来ればインキュバスだけでなく、他の魔族の性質も入れたいんですけど」
魔族化の施術を受けるにあたって、エイジは事前に様々な種族の特性などを調べていたようで。中々詳しい知識を持っていた。
「一種類じゃ満足できないのか」
「ええ。亜空間を用いた凡ゆる武器種の切り替え、全属性全種類の魔術といったように、状況に応じて多数の選択肢から使い分けるというのが私の戦闘スタイルですから。それに、多数の魔族の特徴を有しているとなれば、種族間の隔たりを超越する架け橋的象徴としての効果もあるでしょう」
「そうか、お前の考えは分かった。しかし、身体が変化するんだ。それに他の魔族も併せて入れるとなると、慣れるまで身体への負担と苦痛は大きいぞ」
「うっ、やっぱりか……。でもまあ、やりますよ!」
矢張り、こうまっすぐ言われると臆してしまう。しかし、尻込みしてばかりではいられない。
「では問うが、何になりたいんだ?」
「まずは、通常の悪魔種です。それに慣れてきたらインキュバスに。他には出来れば堕天使や龍種、猫科や狼系の獣人にヴァンパイア等も」
「随分と盛り沢山だな……ん? 何故に堕天使なのか?」
注文の多さに若干引いたのち、引っかかる部分があったのか質問をするベリアル。
「それは、ほら、オレが天使になったとして、堕天せずにいられると思いますか? それに、魔族感がないじゃないですか」
「い、いや、そうだな、うん……ああそうだ、龍種になるのはかなり厳しいぞ。その種族になりたければ、その種族の幻魔器が必要になる。幻魔器の方が望ましいがな。そしてその者が実力者、上位であればあるほどお前の力も強くなる。まあ、弱くていいなら魔王国騎士団のワイバーンがいるが」
「ん〜……じゃあ、それもお願いする。しかしそうとなると、ヴァンパイアや堕天使の討伐も必要になるか……?」
「いや、それらなら我が軍で戦死した者の幻魔器が保管されている。何かの役に立つのでは、と回収しておいたが……まあ、他の魔族になりたいなんて酔狂なことを考える奴はいないから、余ってるだけなんだがな、フハハハハ。だよな、フォラス?」
「ええ、確かありましたね。ところであなた、悪魔やヴァンパイアになると日光に弱くなりますが、良いんですか? 他にも、そんなに特性を詰め込んでは、弱点も多くなるように思うのですが」
日光や気温などの環境、属性攻撃、加護や特攻など逸話のある武器など、その身に宿す特性が多ければ多いほど弱点も増える。当然かなり多く詰め込むなら、それぞれの有利不利が相殺されることもあるかもしれないが、どうしても弱点の方が多くなってしまうだろう。
「ああ、多分大丈夫です。オレの封印能力を使えば、使いたくない時は制御して弱点をなくすことができるかもしれない。それに賭けようかと。まあ、日光に強いヴァンパイアとかいればそれがいいけど」
「太陽に強いヴァンパイアは混血か突然変異、デイウォーカーと呼ばれる者や、彼等の眷属ダンピールとなったものくらいだな。当然ながら極めて稀少だ」
「そうか、やっぱりきついか……」
「まあ、変異種のがあるけどな」
「あるんかい! ところで、そいつはどのような人物でしたか?」
「ああ、次期幹部と目されていたが、強さと血統故に傲慢で、慢心する癖があってな。罠に嵌められて、あっさり討たれてしまった。なんとか遺体だけは回収できたがな」
「じゃあ、それで」
話は凡そ纏まったようだ。フォラスが待ってましたと言わんばかりに、眼鏡のブリッジをクイッとする。
「辛いぞー?」
ベリアルが再三忠告する。どうにも心配のようだ。
「うぐ……、がんばりまーす…………。そうだ‼︎ 魔眼とかってある? 石化系の!」
「欲張りな……。まあ辛さが増すだけだ、良いだろう」
まだ注文はあったようだ。そして魔眼も普通にあるという。
「ところで弱点は? 鏡で自分見たら石化とか?」
「いや、寧ろ石化に対しての耐性を得るな。同じ能力同士は相殺して、効きにくくなると聞いたぞ」
「ほうほう、じゃあ左眼に頼みまーす」
「フォラス」
「ええ、分かりました。滅多にない経験ですからね、興奮してきましたよぉ! イーヒッヒッヒ‼︎」
__いや、怖いよ__




