3節 慰み ②
無事に帰城したエイジとレイエルピナ。魔王国では、もう日が暮れていた。
着くや否や、彼は、色々あるだろうしそっとしてあげよう、と離れようとする。だが、袖を小さく引っ張られて、足が止まった。
「ねえ、落ち着かないの。そばにいてくれる?」
「……うん。勿論だ。オレでよければ」
一人にするより、寄り添ってあげた方がいいのか。そう考え直し、彼女の部屋へ一緒に向かう。
そして、部屋に入ると、ベッドに並んで座る。そのエイジの肩に、レイエルピナは体を預ける。
「レイエルピナ……この世界は、とても残酷で、理不尽で。その渦に囚われてしまった君は、きっとこれからも苦しみ続けるのだろう。けれど……このオレが保証しよう。レイエルピナ、これからの君の人生にはきっと、幸せが待っていると」
「うん……」
その頭を抱き寄せると、ゆっくりと撫でて、励まし慰める様に言葉をかける。
「そう、いつか君を支え、幸せにしてくれる者が現れるさ。その隣に立つ者が、誰かは分からないけれど__」
「……はぁ⁉︎」
矢張りエイジは無意識に、レイエルピナの神経を逆撫でしたらしい。胸にドンッと衝撃が走ると、エイジは押し倒されていた。
「何言ってんのアンタ! バッカじゃない⁉︎」
「え、なん__」
「そこは! オレが隣で支える、とか幸せにする、とか言うところでしょ!」
さっきまでしおらしかったのに、もういつもの刺々しさを取り戻す。だがしかし、今までとはちょっとベクトルが違うようだ?
「いや、だって、君オレのこと、あんま好きじゃないっしょ」
「心底嫌いな奴だったらキスなんてしないわよ!」
その顔は、もう真っ赤っか。
「いい⁉︎ わたしは! アンタをあぃし……いえ、まだ、違うわ。わたしは……その……あなたが……だい……だ…ぃす……き……ああぁ! もう‼︎」
挙動不審に不可解な言動。ヘンに思って起きあがろうとしたエイジは、再び肩を叩きつけられる。そして、レイエルピナは倒れたエイジに馬乗りになる。
「え、なにさ」
「うっさい! 黙れ!」
そんなことを言いながら、レイエルピナは服をはだけさす。
「ちょっ、ホントにナニ⁉︎」
「黙れ黙れ黙れ! いい加減覚に覚悟して大人しくしなさい! この童貞‼︎」
「童貞じゃないですけど⁉︎」
「童貞臭いのよ! とっととアンタも脱げ!」
帽子も上着も全て脱ぎ捨てられ、きめ細やかな白磁の肌、華奢な肢体、そして慎ましやかな胸が露わとなる。
そしてエイジも気付けばベストが剥ぎ取られ、シャツとズボンが脱がされかけていた。
「た、タンマ__」
「わたしは! 今! 復讐が終わってモヤモヤしてんの! 黙って抱かれてろ!」
胸ぐら掴まれ、ブンブン揺さぶられる。乱暴が過ぎる、そう思ってエイジも抵抗。暫くワチャワチャしていたが……彼女の目尻、そこにある輝を認めると、力を抜いて抵抗をやめる。
「はぁ、ようやく観念した?」
「ああ、わかった……。快楽が、君の慰めになるのなら」
今の彼女にはきっと、生の実感、そして人肌の温もりが必要なのだろう。ならばここは、応えてあげるべきだ。そう信じて、受け入れる。
二人の目が合った。彼の、優しく愛おしそうな目に見つめられて、彼女の顔は自然と惹かれる。
エイジは、片手を背に回し、優しく引き寄せ、唇を重ねる。
その口付けは、今までのどんなものよりも長く、温かく、優しかった。




