8節 夢魔の誘惑 ①
勅命を受けた日の夜、エイジは自室のベッドの上にいた。命を受けた会合が解散した後、翌日の任務に向けて装備を整え、ベリアルと少し相談をして、あとは寝るだけとなっている。
そんな彼は、今迄のことを感慨深く思い出していた。異世界転移して魔王の御前に投げ出され、それから勉強し鍛錬し努力して、遂にここまで来た。宰相という地位は目前である。
このベッドは、他の一般魔族達に比べて格別に上品な物だ。ベッド一つとっても別格の好待遇をしてくれているということは、それ程に期待されているのだろう。
実を言えば、彼は魔王ベリアルに惚れ込んでいた。正に理想の主君なのだ。我の強い魔族達を束ねるカリスマ性、他を圧倒し支配するに足る武、物事を臨機応変かつ柔軟に判断する聡明さ、先見の明や鑑識眼。そして何より、自分を認めてくれた事だ。前の世界では、彼は別段特別な人間ではなく、誰かに認められる事が殆ど無かった。だから、認めてくれるだけで彼にとっては主君として仰ぐには十分だったのだ。
そんな彼の期待に報いる為、そして魔族を束ねる魔王国の宰相として滅亡を回避する為には、明日からの出張でなんとしても戦果を出しつつ生還しなければならない。どんな立地なのか、味方と敵の戦力差、敵の戦法と此方が取るべき戦略は何か。自分は何をするべきだ、どれほど戦うことになるのか。人を殺める覚悟もしなくてはならない。そんなことを考え続けていて、寝ようにも寝れないでいた。
しかし、そこで彼は違和感に気づく。なんだか甘い匂いがするのだ。
__何の匂いだ、これ? 嗅いだことがあるような……__
「……っ!」
突如、足元がモゾモゾし始めた。気味が悪く、背や脚に何かゾワゾワ走るような感じがする。それは少しずつ上ってきて、そこから出てきたのは__
「こ〜んば〜んわァ〜」
モルガンだった。その正体を知った途端、先程の不快感が全て官能に変換されたように思える。寝巻き越しでも感じられる彼女の素肌、特に胸と太ももの体温と柔らかさは心地よく、それでいて興奮を煽られる。
「うっふふ、慌てちゃって……かわいいわァ」
ホラー展開かと思えば、自分のベッドに女性が入ってきたという初めての体験。状況に頭が追い付かずアワアワしているエイジを、覆い被さったモルガンが妖しい顔つきで見下ろす。
「な、何の用だ⁉︎」
緊張で声が上擦る。そんな彼の様子を見たモルガンは、獲物を見つけた捕食者の如く舌舐めずりをする。
「もちろん、サキュバスとしてのお仕事をしにきましたァ」
「サキュバスとしての仕事⁉︎ となるとやることは……一つしか………てことはつまり」
「ええ、エッチなことをしに来ましたァ。フフッ」
「や、やっぱりか……」
「じゃあ、早速始めるわねェ。んっ」
固まっていると、突然唇が塞がれた。彼女がサキュバスだからなのか、それとも自分が初めてだからなのかわからないが、唇の柔らかさと甘い感覚で脳が溶ける感じがする。ついさっきまでベリアルへの忠義だとか、将来への不安だとか、明日の戦闘の考察だとか、真面目なことを考えていた筈だったのだが。そんなものは今の一瞬で全てどこかへ消え失せてしまった。
「ウフフ……ごめんねぇ? もう、ワタシもォ、ガマンできないの」
「……もしかして、今まで朝起きたらスッキリしてたのは」
「ええ、ワタシの仕業よ。アナタの精力、とっても美味しかったわァ。さてと、ホンモノは、どうなのかしらねェ」
モルガンは妖しく微笑みながら、彼の下腹部に手を伸ばす。
「ヘェ……狼狽えてるけど、下は万全じゃない」
胸に豊かな双丘が押し付けられて、甘い声で囁き、蠱惑的な仕草をしているのだ。そんなことをされれば__
「そりゃ、男なら誰でもそうなるだろう!」
「あらあら、素直なのねェ。ホント、かわいい子。そういう反応されると、コッチまで嬉しくなっちゃうわァ」
少し驚き、そして愛おしそうに見つめる。
「じゃあ、早速始めようかしらァ。おっと、抵抗しないでね?」
続きはR18となります
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