何かの作業の光景3
「あ~…」
「今日もだりーなー。」
「年中無休だからな。」
「ずーっとだからな。」
「たまにゃあ温泉でも行きてーよなぁ。」
「あー、いいね。ぐーーーっ、って、身体伸ばせそう。」
「まぁ、毎日伸びてはいるけどな。」
「伸ばせる、と、伸ばされる、じゃあ、意味が違うだろ。」
「まぁな。」
「あ、来たよ。」
「あ~、来た来た。」
「うっわ~。おっさんばっかりじゃん。」
「朝は仕方ないだろ、通勤ラッシュなんだから。こんなのいつものことだろ?」
「いや、そうだけどさぁ…。もう少し女っ気が欲しいっつーか?こんなにおっさんばっかだと加齢臭がきちーっつーか?ぶっちゃけ女性専用車両に異動したいっつーか?」
「そんなこと言ってるうちは絶対無理だな。」
「ちぇー。」
「お、来るぞ?」
「お、来やがったなリーマンめ。どれどれどんな面してやがんだぁ?」
「俺の方は、…………、まだ若いな。慣れない仕事で疲れが取れてません、って感じか。握られた瞬間、体重がっつりかけてきやがった。下手したら、このまま立ち寝しやがるな。」
「うわっ!?おいおいおいおいっ!!」
「どした?」
「手汗くらい拭いてから握れよな~。びっちょびちょじゃねぇか~。うわ~キモイキモイキモイ。」
「そんなにキモイキモイ連呼するなよ。人間誰だって歳はとるもんだろ。」
「同じ年齢だって、清潔なジェントルマンと脂汗なおっさんとだったらどっちに握られたいよ?絶対にジェントルだろ!」
「まぁ、そうだけど。」
「はぁ~………。なんか今日一日やりきる自信なくしたわ~。なんで?なんでいきなり脂汗な手汗だよ?俺なんか悪いことしたか?」
「不純な事考えてたからじゃないか?」
「はぁ?女性専用車両に異動したいってのが、そんなに不純かよ。」
「不純だろ?」
「こんなの普通だろ?サラッサラな肌質の女子と、脂汗なおっさん、どっちに握られたいよ?絶対に女子だろ!」
「まぁな。」
「あ~~~…、女子と手ぇ握りて~~~。」
「中学生か。」
「悪いかよ。握りてぇんだよ、俺は。こんなとこに何年も何年もいてみろよ。握りたくなるだろ!」
「…まぁ、気持ちはわかるけどな。でも、これも運命ってやつだ。俺たちに、選択権は無い。どうしようもない運命は、受け容れた方が気が楽だぞ?」
「お前………、それでいいのかよ?一生それでいいのかよ!?」
「いいも何も、仕方ないだろ?俺たちは自分では動けないんだから。」
「それでもなんかアピールすれば動かしてもらえるかもしれねぇじゃねぇか!人生を諦めるんじゃねぇよ!」
「じゃあ、例えば?どんなアピールをするんだ?」
「……………それは考え中だ!」
「そうだと思ったたたたたたたたっ!!!」
「ん?どした?」
「いてててててててっ!!そんなに引っ張るなっ!!」
「あ~あ~。若手リーマンの奴、完全に立ち寝入ったか。全体重お前に預けてきてんな。」
「ふざっけんなって!おい!起きろ!ちゃんと自分の足で立てっ!!お前には2本の立派な足がついてんだろ!!」
「ま、これも運命だな。受け容れた方が気が楽だぞ?」
「気は楽でも身体が楽じゃねぇよっ!」
以上、電車の吊革の会話。
つづく
注:この作品はフィクションです。
こんなん思われてたら…、嫌だな(^_^;




