マニアのいる光景3
とある日、とある街、とある場所。時刻は夜。
アイドルマニアな男が、そうでもない友人に、
何やら話をしようとしていたそうな………。
「よぉぉぉーっし!!それではただ今より!!我等が崇拝する最強コマンダーアイドルグループ、ハイパータクティカルキトゥン、の、参戦前事前講習を行うっ!!!」
「…はぁ。」
「むっ。」
「ん?」
「貴様っ!!!なんだその腑抜けた返事はっ!!!もっと腹の底から声を出せっ!!!」
「はぁ!?」
「…いや、キレろとは言っていない。いや、言っていません。ごめんなさい。」
「………わーってるよ。キャラだろ?キャラ。ライブだとそんな感じなんだろ?」
「うむっ!!!物分かりが良いな。褒めてやろう。」
「ま、あんまり酷いようなら、キャラとか関係なくボコるけどな。」
「ごめんなさい。」
「あんまり土下座し過ぎると、いざって時に効果無くすぞ。」
「その通り!!!よく知っていたな。褒めてやろう。」
「……はぁ。で?その…なんだ?ハイパー託児所に勤務?」
「それでは保母さんアイドルではないかっ!!!…まぁ、それはそれで何やら需要がありそうな気もするが…、いやいやいやいや!!!違う違う違う違う!ハイパー託児所に勤務ではないっ!!!」
「ハイパー匠の技披露?」
「職人アイドルでもないっ!!!」
「ハイカラさんが通る?」
「わざとか!?わざとか!!わざとだろう!!絶対にわざとだろう!!」
「当たり前だろ?」
「き、きさまぁぁっ!!!栄光の我等が最強コマンダーアイドルグループ、ハイパータクティカルキトゥンを下らぬ冗談に巻き込むとはいい度胸だっ!!!。そこへなおれっ!!!この場で懲罰を与えてくれるわっ!!!」
「よし、ボコる。」
「ごめんなさい。」
「土下座すんの早ぇーっての。」
「ボコるのは勘弁してください。いやマジで。」
「はぁ………。わーったわーった。で、そのハイパータクティカルキトゥン?のライブに、俺も参加しろ、って話だろ?…しかし、未だに腑に落ちねぇんだが。」
「何がだ?」
「なんで俺なんだ?誘うなら他にアイドル好きそうなやついくらでもいるだろ。俺正直、アイドル苦手なんだけど。」
「ふっ!お前でなければ、お前でなければならないのだよ!」
「なんで。」
「今度のハイパータクティカルキトゥンのライブ、公演名『ハタキの戦場乱舞』では、」
「ちょいまち。」
「なんだ!」
「いや…。そのアイドルグループさ。略称、ハタキ、なのか?」
「そうだ。何か問題があるか?」
「いや……………、別に。」
「なんだ!!言いたいことがあるならはっきりと言え!!。ハイパータクティカルキトゥンの略称はハタキだ!物販では、『ハタキのハタキ』というハタキが公式グッズとして売られているのだぞ!!」
「売ってんのかよ。…売れるのか、それ。」
「売れているとも!!曲のサビでファンが全員でハタキを振り回すのだ!!これが実に楽しい!!」
「タオル振り回すのは聞いたことあるけど、ハタキ振り回すってなんだよ。大掃除か。逆にホコリが舞いまくりそうだけど。」
「つべこべ言うなっ!!話を先に進めるぞっ!!」
「はいはい。」
「その、『ハタキの戦場乱舞』、では、入場時に1人1枚、この日限定の、ハイパータクティカルキトゥントレカ、略してハタキトレカが貰えるのだっ!!!」
「ふ~ん。」
「そして俺は!崇敬する推しコマンダーである、スカイコマンダー『いーぐりゅん』のキラレアトレカがどーーーっしても!!!欲しいっ!!!のだっ!!!」
「…あ~、なんか話見えたわ。要するに1人1枚しかもらえないけど、俺もライブ行きゃあ2枚になる、ってとこだろ?」
「ふっ!!それならば、わざわざお前である必要はない!!」
「はぁ?じゃあなんなんだよ。」
「お前に与えられた任務。それは!他の入場者達に対し、このセリフを言うことだ!!」
『ボコられたくなかったらトレカよこせ。』
「どうだ!簡単だろう!!」
「…………………………要は、俺に、カツアゲしてこい、ってことか?」
「うむっ!!!俺の差し金だとはバレないようにな!」
「顔面ストレートとアッパーカット。どっち喰らいたい?両方でもいいぜ?っていうかむしろ両方させろ。その腐った根性この場でぶちのめしてやる。さぁ立て。いますぐ立て。1秒で立て。」
「……………。」
「無言で土下座してんじゃねぇよ!」
……………熱狂的、と、狂信的、は、異なるもの。
皆様は、己が欲に狂い囚われ、周りが見えなくなることの、ありませぬよう。
つづく
注:この作品はフィクションです。
欲望に忠実なのもほどほどに(^-^)




