小さな団体の光景2
「とりあえず、現状を説明しとくよ。」
「はぁ。…まぁ、とりあえず聞いておきます。」
「今の国内、女子プロレス団体は、はっきり言って一強状態だ。新次元女子プロレスリング。ここが、国内女子プロレス団体の神と言ってもいい。」
「あぁ、そこはさすがに知ってます。随分と攻めた名前だと、最初は思いましたけどね。ちゃんと実績が、それも長年に渡ってついてきてるから凄いですね。」
「人気低迷期があっても、必ず復活する。決して団体が消えることはない。この団体が消えたときは、日本から女子プロレスが消えるとき。…ま、そういう団体だな。」
「えぇ。」
「他にもメジャー団体って呼ばれてる団体はいくつかあるけど、はっきり言って、新次元女子プロレスの敵じゃない。どうやって今のファンを維持するか。新次元にファンを取られないようにするにはどうすればいいか。どこも現状維持に必死になってる。」
「へぇ…」
「メジャー団体って呼ばれてるところでそんな調子だ。そのさらに下。俺たちインディーズ団体の状況がどうなのか。それは言わずもがなだ。苦しい。みんな苦しい。みんな必死。みんな足掻いてる。」
「…あの、」
「ん?」
「単純な疑問なのですが…。何でやってるんですか?団体経営。」
「…ズバッと聞いてくるねぇ。」
「話を聞く限りマイナスの要素ばかり。そんなに苦しいのに、何故続けていられるんですか?」
「まぁ、自分一人の問題で済むなら、もしかしたらやめてたかもな。けど、経営者が団体をやめるって、一人の問題じゃ片付かないんだよ。選手がいる。スタッフがいる。ファンがいる。取引先がいる。経営者が団体やめるってことは、その全員を裏切るってことになる。したくないだろ、それは。」
「………。」
「現実問題、破産して潰れてった団体もいくつもある。なんとかして団体を存続させようとして、ギリギリまで必死で足掻いて足掻いて足掻いて、それでもどうしようもなくて、最後には、頭を下げることになっちまった社長さんも、何人もいる。けど、したくて破産した社長さんなんて一人もいない。みんな、現実と向き合いながら夢目指してんだ。俺はそう思うよ。」
「………。」
「お前だってそうだろ?」
「え?」
「お前だってやめないだろ?格闘技も、自分を鍛え抜くことも。身体が動かなくなるまで続けるだろ。どんなに辛くてもさ。」
「…えぇ。」
「内容が違うだけで、芯の部分はお前も同じだと、俺は思うね。だから誘ったんだ。」
「………。」
「ま、答えに焦る必要はないけどな。今すぐどうこう、って話じゃないし。興味が湧いたら、連絡くれ。出来る限りのことはさせてもらう。」
「えぇ、わかりました。」
「よしっ!じゃあこの話はここまで!飲み行こうぜ~飲みに~。」
「テンションの変わり方激しいですね。」
「お前が変わらなさ過ぎるんだよ。格闘家の不動の精神、ってやつか?」
「あなただって学んでたでしょう?師匠は同じなんですから。」
「俺はそういうのをプライベートには持ち込まないの~。ほらいくぞ~!」
「はいはい。」
「………興味はありますけどね。でも、まだ自分自身のことが最優先かな。」
つづく
注:この作品はフィクションです。
どんな苦しい思いをしたとしても、やり遂げたいものがあるっていうのは、幸せなことなのかも。




