7.ゲーム開始・カウントダウン!!
――不穏な空気に包みこまれる終末都市エリアに、更に重圧で押しつぶされそうな使命まで背負わされて、20名のゲーム戦士はイベントゲームの舞台へと強制転送された。
イベントゲーム『クライシス・ミッション』の1st STAGEは、カードバトルゲーム『AMAZING』のシステムを用いたサバイバルバトル。
しかし、対戦相手は参加者同士ではない。これから対峙するであろう詳細不明の敵だと、私、語り部ナビゲーターのMr.Gは推理するわけであります。
1st STAGEの舞台は、都市の中央タワーより遙か先に設置された地下軍事施設『Ω-716』。
この終末都市『トリニティ・ゼロ』の最終防衛手段として、ある兵器が隠されているのがこの施設。
その兵器とは何か……と言わずとも察しがつきそうですが、今は一旦閉口しましょう。はてさて、転送されたゲーム戦士はいずこと私がキョロキョロ見渡すと……あ、いました!
ゲーミングチーム『エレメント◇トリガーズ』のリーダーにして、人気ゲーム実況者の火野暁斗。通称『キッド』であります。
「あ? お前、語り部ナビゲーターか?」
あ、はい。私、Mr.Gと申します! この作品の三人称視点を担当させて頂いております。以後お見知りおきを。
「うちの物語じゃ、『Mr.E』って戦場リポーターみたいな姿のナビがやってるんだけど、そいつの知り合いか?」
Eさんは、キッドさんが活躍する『A.I.M.S』で語り部を担当している方ですな。実は私の従兄弟なんですよ。
「AIナビに血族関係なんてあんのかよ!?」
あるんですよ、これが。滑稽な話ですがね。Eさんは次の2nd STAGEから担当する予定です。
「じゃあ後で伝えてくれ。俺の実況中に近寄られると集中できねぇから、少し黙ってろってな」
Eさん、主人公にめちゃくちゃ煙たがられてるじゃないですか!!
という具合に、語り部と登場人物が話し込んでしまうメタ要素はこの辺にして、そろそろ本筋に戻りましょう。
▶▶▶ NEXT▽
キッドが転送された場所は、『Ω-716』内の研究所エリア。
そこは白を基調とした無機質な空間だった。危険物質を扱うための巨大なグローブボックスや、重厚な鉛ガラス越しの実験室。どうやらここは施設内のクリーンルーム、あるいは極秘の実験室のようだ。
「ゾンビの出るサバゲーじゃ嫌というほど見てる光景だけど、いざその場に立つと場違いにも程があるぜ」
確かに。キャップを被り、eスポーツのユニフォームを着た男が居て良い場所ではない。真っ白な防護服こそがお誂え向きだ。
独り言ちながらも、キッドは淡々とエリアの探索を開始する。
施設内のエントランスロビーへと辿り着いた彼は、受付の背後に掲げられた、施設の由来を記した縦長の額縁を見つけた。
そこには、こう記されていた。
□――――――――――――――――――□
時の始まりは1945年7月16日。
アメリカがニューメキシコ州の砂漠で行った
人類最初の核実験【トリニティ実験】。
以来100年以上にわたり、
我々人類は核兵器を所有し続けてきた。
この『Ω-716』及び『トリニティ・ゼロ』の
存在意義が消える時は二つ。
人類が核兵器を廃絶した時か、
あるいは一度でも使用され、全人類が滅ぶ時かだ。
□――――――――――――――――――□
「……………………」
キッドは目を見開き、絶句した。思考の許容量を超える事実を突きつけられたのだ。
今回のゲームエリア全体が、核兵器に纏わる因果で構成されている?
WGCの社長は、ゲーム戦士たちに『警鐘』を鳴らすつもりなのか。それとも、現実に秘匿された核兵器に関する何かを隠蔽しているのか……?
『エンターテインメント』という皮を被せて、何かを隠そうとしているのか?
我々に何をさせようとしているんだ?
冷静な表情の裏で、様々な推測と不安が入り混じり、キッドの思考は混濁していく。と、そこへ……
―――カツン。
「誰だッッ!!?」
「わぁっ!?」
張り詰めた神経が物音を敏感に察知し、キッドは接近する者へ威圧的な声を浴びせた。しかし……。
「……お、驚かさんといてくださいよ、キッドさん!!」
足音の主は、ゲーミングチーム『シャッフル』の高校生リーダー、桐山剣であった。
「…………はぁ、なんだ。剣か」
キッドは憑き物が落ちたように安堵する。敵どころか、最も信頼の置ける味方だったことが幸いした。
「そないにビビらんでも、まだゲーム開始前やから敵も来ませんよ。何かあったんですか?」
「…………いや、なんでもない。バイオハザードみたいな雰囲気だったから、つい身構えちまっただけだ」
「FPSのプロでも、こういうのは怖いんですか?」
「ホラーゲームは専門外なんでね……」
そう言ってはぐらかしたが、もちろん本心ではない。
高校生に核兵器という重苦しい現実を突きつけるのは、大人の配慮として憚られたのだ。
―――ピリリリリ! ピリリリリ!
「ん、プレイギアが鳴ってる」
「こっちもだ。運営からのメールだな」
二人は各々の携帯端末『プレイギア』を確認する。
そこには、1st STAGEの開始を告げる運営側の一斉送信メールが表示されていた。
□――――――――――――――――――□
【参加者通達メール】
これより、ビッグイベント【クライシス・ミッション】
のゲームを開始する。
1st STAGEは、カードバトルゲーム『AMAZING』のルールに則り、
参加者同士で協力して『Ω-716』に潜む敵を撃破せよ。
エリア内に仕掛けられた【極秘任務】
をクリアしなければ、
2nd STAGEに進むことは叶わない。
なお、リタイアした者は
以後、ゲームへの復帰は不可能となる。
心して挑み給え。
□――――――――――――――――――□
「始まるぜ、剣。心の準備はいいか?」
「……この場に立った時から、できてますよ!」
ゲーム開始、10秒前!!
―――10、9、8、7………
いよいよ、ゲームの枠を超えた究極の緊急任務『クライシス・ミッション』――未だかつてない戦慄のゲームが幕を開ける。
剣、キッド、そしてまだ見ぬゲーム戦士たちの活躍を刮目せよ!!
―――3、2、1………!
〘【クライシス・ミッション】1st STAGE START!!〙




